151
「優香、頼むよ」
かめなしさんは私の肩を抱き寄せる。
「本当に私がナギさんの振りをしてもバレないのかな?」
「ナギのメイクなら俺がする。ナギと優香はそっくりなんだ。同じようにメイクすれば誰にもわからないよ」
「……もし協力したら、この家から出て行ってくれるのね?」
「そんなに出て行って欲しいのか?マジでヘコむな。あんなに何度もハグやキスを交わしたのに」
「……っ、あれは猫だったから」
「じゃあ、今も猫だったらキスしてくれるのか?ニャオ~」
かめなしさんの顔が近付く。
唇が触れそうな至近距離。
トクントクンと鼓動が速まる。
「……わ、わ、わ、わかったから。ナギさんの振りをするから。でも、ずっとは出来ないからね。ナギさんは……期間限定で、すぐに脱退することにしよう」
「マジかよ。タカの傍にいたくねーの?あいつはモテるから、傍にいないと浮気するかもな」
「う、浮気!?」
確かに、矢吹君はイケメン俳優だ。
異世界ファンタジーを再結成すれば、人気はますます上がる。
風月桜の噂だって、完全に払拭出来たわけじゃない。
「芸能界には美人は山ほどいるからな。タカに群がる女ならいくらでもいる」
かめなしさんは意地悪だ。
私を不安にさせて、ずっとナギの振りをさせるつもりなんだ。
「ナギも必ず地球に転移する。それまででいいんだ。優香、一緒にバンドやろう」
異世ファンは世界一大好きなミュージシャン。
かめなしさんは大ファンだったナイト。
その異世ファンのメンバーと一緒にステージに立てるなんて、こんなチャンスはもう二度とないかもしれない。
ナギが地球に戻るまで……
それまで、私が代わりをすればいいの?
「わ、私がナギになるなら、私の代わりは誰がするの?」
かめなしさんはニヤリと笑ってサファイアのリングを見つめた。
「そうだな。公園にいたメスの仔猫でも拾ってくるよ」
「……仔猫?えっ?仔猫?」
かめなしさんの言ってる意味は、私には全く理解出来なかったけれど、摩訶不思議なこの世界で、ほんの少しの期間ならば、異世ファンのメンバーになってみてもいいと思ったんだ。
大好きな矢吹君の傍にずっといられるなら、夢の世界で輝いてみたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます