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マンションの十五階。部屋の鍵を開けると、ナイトは目を見開いた。
『すげぇな。車といい、マンションといい、風月桜といい、随分羽振りがいいんだな。流石、王子だ。王国の金や宝石を日本で売り捌いたのか』
「そんなことしないよ。異世ファンや俳優で稼いだ金だ」
『どーなんだか。ナギに金が湧く魔術でも教わったか?』
「……ちょ、ちょっと待って。矢吹君とかめなしさん会話してるよね!?どーして会話出来るの!?まさか、矢吹君にもかめなしさんが人みたいに見えるとか?そーなのね!」
「……まぁ、そんなとこかな」
「嘘!?私の他にかめなしさんが人に見える人はいなかったわ。両親だってそうよ。もしかして猫耳も見えてる?」
「……一応、見えているけど」
「凄い!凄い!私ね、自分だけが変なんだと思ってた。でも……王子とか、魔術とか、それって新作映画の話?」
ナイトが俺をチラッと見る。
『なんだ。まだ話していなかったのか』
「お前が先走ってペラペラ話すからややこしくなっただろ」
優香は目を丸くし、俺達の話に聞き入っている。
「そういえば、異世界ファンタジーのナイトは……まだ来ないの?」
「ナイトなら目の前にいるよ。優香、一緒に暮らしていて今まで気付かなかったのか?」
ナイトが優香の目の前で、ニカッと笑った。
「う、うそっ!?かめなしさんが異世界ファンタジーのNAITO!?どーして猫なのよ!?」
『タカ、どう説明すんだよ』
「優香、実は俺達……地球人じゃないんだ。勿論、ナイトも本当は猫なんかじゃない。魔術師に猫にされたんだ。俺は人族だが、ナイトは獣族、生まれつき獣耳と尻尾がある。異世界から転移したんだよ」
「……い、異世界から……。ふぁ……」
優香の視線は宙を彷徨い、そのまま気を失った。
それはそうだ。
魔術師とか、獣族とか、俺達が異世界から転移したなんて、そんな非現実的な話、誰だって信じられないよ。
現実逃避し、気絶したくもなるな。
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