貴side
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「優香、そのことで話がしたい。マンションに来てくれないか」
「……マンション」
「お願いだ。大切な話なんだ。俺達の真実を優香に聞いて欲しいんだ」
「俺達……?」
「マンションにナイトを呼んでいる」
「……ナイトって?」
「異世界ファンタジーのナイトだ」
「……えっ?異世ファンのナイト!?嘘?ナイトがどうして矢吹君のマンションに!?」
「ナイトに逢えばわかるよ。マンションに来てくれるね?」
「……わかった。行くわ」
◇◇◇
――田中美子から連絡を貰ったのは数ヶ月前のことだった。
『田中です。ご無沙汰しています。突然ですが、私の挙式披露宴に出席して貰えませんか?』
「挙式披露宴?田中さん結婚するの?おめでとう」
『ありがとうございます。挙式にはもちろん優香も出席します。矢吹君は私達とは異なる世界の人だけど、本当にこのまま優香と別れていいの?』
――矢吹君は私達とは異なる世界の人……。
そうだよな。
俺は地球の人間ではない。
優香と本気で結婚したいのなら。
真実を隠したまま、プロポーズは出来ない。
「喜んで出席させていただきます」
『本当ですか?矢吹君、スケジュールは大丈夫?』
「少し遅れるかもしれないけど、必ず行くから」
『ありがとう。優香には当日まで言わないで下さい。矢吹君が出席することがわかると、きっとあの子欠席するから』
「わかった。言わないよ」
俺は決意を固めて出席したんだよ。
優香に……逢うために。
優香に逢うためには、もう一人決着を付けなけれぱいけないヤツがいる。
――ナイトだ。
田中の挙式披露宴に出席する前に、俺はナイトに逢いに行った。ナイトは玄関前で日向ぼっこをしていた。
いつまでお気楽な猫でいるつもりだ。
「ナイト」
『何の用だ』
「今から田中の挙式披露宴に出席する。優香に改めて交際を申し込み、プロポーズするつもりだ」
『プ、プ、プロポーズ!?この野郎!優香と結婚出来ると本気で思っているのか!お前は地球の人間じゃねぇんだぞ!』
「わかってる。だが俺の先祖は日本人だ。両親を説得し、俺は一人でも日本に戻る。お前は、いつまで猫でいるつもりだ。そのままでは、優香に男だと認めてもらうことも出来ないよ。俺は今夜、優香と二人で夜を過ごす。優香を俺から奪い返したいなら、マンションに来い」
悔しそうに、俺を睨み付けるナイト。
そのまま、俺は車を走らせた。
――ナイトは必ずマンションに来る。
優香を奪い返すために。
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