貴side

131

「優香、そのことで話がしたい。マンションに来てくれないか」


「……マンション」


「お願いだ。大切な話なんだ。の真実を優香に聞いて欲しいんだ」


「俺達……?」


「マンションにナイトを呼んでいる」


「……ナイトって?」


「異世界ファンタジーのナイトだ」


「……えっ?異世ファンのナイト!?嘘?ナイトがどうして矢吹君のマンションに!?」


「ナイトに逢えばわかるよ。マンションに来てくれるね?」


「……わかった。行くわ」


 ◇◇◇


 ――田中美子から連絡を貰ったのは数ヶ月前のことだった。


『田中です。ご無沙汰しています。突然ですが、私の挙式披露宴に出席して貰えませんか?』


「挙式披露宴?田中さん結婚するの?おめでとう」


『ありがとうございます。挙式にはもちろん優香も出席します。矢吹君は私達とは異なる世界の人だけど、本当にこのまま優香と別れていいの?』


 ――矢吹君は私達とは異なる世界の人……。


 そうだよな。

 俺は地球の人間ではない。


 優香と本気で結婚したいのなら。

 真実を隠したまま、プロポーズは出来ない。


「喜んで出席させていただきます」


『本当ですか?矢吹君、スケジュールは大丈夫?』


「少し遅れるかもしれないけど、必ず行くから」


『ありがとう。優香には当日まで言わないで下さい。矢吹君が出席することがわかると、きっとあの子欠席するから』


「わかった。言わないよ」


 俺は決意を固めて出席したんだよ。

 優香に……逢うために。


 優香に逢うためには、もう一人決着を付けなけれぱいけないヤツがいる。


 ――ナイトだ。


 田中の挙式披露宴に出席する前に、俺はナイトに逢いに行った。ナイトは玄関前で日向ぼっこをしていた。


 いつまでお気楽な猫でいるつもりだ。


「ナイト」


『何の用だ』


「今から田中の挙式披露宴に出席する。優香に改めて交際を申し込み、プロポーズするつもりだ」


『プ、プ、プロポーズ!?この野郎!優香と結婚出来ると本気で思っているのか!お前は地球の人間じゃねぇんだぞ!』


「わかってる。だが俺の先祖は日本人だ。両親を説得し、俺は一人でも日本に戻る。お前は、いつまで猫でいるつもりだ。そのままでは、優香に男だと認めてもらうことも出来ないよ。俺は今夜、優香と二人で夜を過ごす。優香を俺から奪い返したいなら、マンションに来い」


 悔しそうに、俺を睨み付けるナイト。

 そのまま、俺は車を走らせた。


 ――ナイトは必ずマンションに来る。


 優香を奪い返すために。


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