ブラコンの妹とシスコンを認めたくない兄が異世界の扉を発見した結果
秋野シモン
異世界の扉を発見した結果、意外な出会いがあった
第1話
どんな物語だって、人物紹介は必要だ。というわけで自己紹介。俺の名前はえっと、なんだっけ?しばらく名前を呼ばれなかったからか、自分の名前忘れちまった。えーと、とりあえずヒロってことで。確か俺は今19歳で、一応、大学には受かってるけど、一回も行ったことない。催促の手紙が毎日来る。それから...あ、これ重要、俺には妹がいる。凄い可愛い妹だ。いや、別に俺はシスコンじゃない。妹のことは大好きだが、あくまで妹としてだ。そこは(なんとか)割りきっている。そもそも、妹は15歳、現役の中学三年だ。訂正、元現役だ。妹も最近、不登校生活を始めている。理由は、俺と一緒にいるためだと。可愛い‼でもちょっと困る。妹は明らかにブラコンだ。決して俺の自意識過剰などではない。普通15の女子が兄と一緒に風呂に入ろうとするか?俺は一瞬迎え入れようとしてしまったが、ブラコンでもない限り、こんなことをする妹はいない。いないよな?
「お兄ちゃん、またゲームしながら自分語りしてたの?」
「いや違う、俺開発のシュミレーションシステムを見ながら、自分語りをしていたのさ」
「さすがお兄ちゃん、相変わらずの知識の無駄遣いだね」
「今回はそんなこともないぞ、何せこのシステムは」
「私との結婚生活シュミレーションね!」
「うん、それも面白そうだけど、違うぞヒメ」
俺の妹、ヒメ。漢字で姫。
「これは、俺たちが別の世界に転移しても、生きていけるかをシュミレーションするのさ」
「お兄ちゃんに『イタイ人』の称号をあげるわ。でもその別世界で、私とお兄ちゃんの結婚生活が始まるのね」
「だから結婚はシュミレーションしないぞ」
妹よ、お前に『なりかけヤンデレ』の称号を与えよう。
その時、マイコンピュータがアラームを鳴り響かせた。あわてて画面を見ると。
「おいヒメ、出掛けるぞ」
「え、なんで?」
「後で説明する」
俺は着の身着のまま家を出る。足音で妹がついてきたのを確認する。そのまま直進、角を右に曲がって、次の十字路を左。
「ついた」
「え、ここ?」
到着したのは近所の人ですら存在を忘れているかもしれない、小さな公園。
「妹よ、頼みがある」
「何?夜のおとも?」
「そういう言葉をどこで覚えて来たんだ?俺の可愛い妹に変なことを教え込んだやつは、この兄がお仕置きしてやろう!」
「かっこいいねお兄ちゃん。でも、この情報源はお兄ちゃんだよ。夜にぶつぶつ言ってたから」
「その事は今置いておこう。それより、ヒメ、あのブランコに立ち乗りしてくれ」
「いいけど、危なそう」
一人用の鉄製ブランコは、ところどころ錆びていて、風に揺れるだけで軋んだ音を上げている。
「すまない妹よ」
「後で三分キスしてくれたら許す」
「それは飲めないが、その代わり、今夜は一緒の布団で寝てやる」
「寝るだけ?」
「お前は何を期待しているんだ?」
「ま、お兄ちゃんはヘタレだからね」
「俺は倫理を守りたいだけだ」
「じゃ、ブランコ行ってきまーす」
「一緒に寝るだけだからな⁉」
ヒメは聞いていない。可愛いブランコに乗って揺れ始め、その振れ幅が大きくなっていく。
俺の計算が合っていれば、5秒、4、3、2、1。
「わぁ‼」
ブランコが振り切るか、切らないかで、大きな門が現れた。
「何?これ?」
「これぞ世界の壁に空いた穴、未知なる扉、人類の夢だ‼」
俺のシステムは無駄にならない。
「行くぞヒメ。別世界、否、異世界ヘ‼」
「お兄ちゃんがおかしくなった」
「違うぞ!」
「いいよ、私はどんなお兄ちゃんでも愛してあげるから」
「やめてくれ!悲しくなるから!まぁいい、さっきのシュミレーションシステムで、ここの次元壁が軽薄化していることが分かったんだ。それで、この部分にどう力を加えたら、空間貫通が起こるか計算したところ...」
「難しい話をするお兄ちゃんは大好きだけど、もっと分かり安く」
「えっと、世界に穴を開けるために、ブランコに乗ってもらいました」
「なるほど、で、この門は?」
「さぁ、普通は穴が開くだけなんだけど」
まさか、向こうの世界に、この門を創る技術があるのか?でも、そんなこと魔法使いでも居ない限り。
「お兄ちゃん、門、開けないの?」
「ん、あぁ」
門に手をかけて、開ける。はずだった。
「開かない」
その後、押したり引いたり、叩いたりしてみたが、門はびくともしない。
「よし、帰って考えよう」
「え、帰るの?」
「引きこもってた俺の身体は日光下に耐性がないんだよ。これ以上外にいたら死ぬかもしれない」
「それは困る‼」
「じゃあ帰ろう!」
「うん、帰ろう!」
回復のためにしばしの睡眠
夜、夜行性の俺たちは、ゾンビのごとく起き上がり、家を出る。そして、あの門の前へ。
「ヒメ、どうすればいいと思う?」
「私に襲いかかればいいと思う」
「それをすると俺が捕まる。この門の開けかたの話だ」
「ノックしてみれば?」
「なるほど、やってみるか」
俺は門の前に立ち、ノック。低い音が響いた後、ゆっくりと。
「開いた!凄いぞヒメ」
妹の頭をワシャワシャしてやる。こういうのは兄っぽいだろう。
「ふにゃ~」
柔らかに崩れ落ちた妹を愛でたいが、こちらが先だ。俺は門をくぐるため、妹をおんぶする。あ、ヒメの身体って、温かくてすべすべだな。門をくぐると、そこには雄大な森が広がっていた。この世界も夜なのか、真っ暗で先が見えない。
「これからどうするか」
とりあえず、先ヘ進むしかない。なんとか歩けそうな場所を選び、進んでいく。5分後、迷子になりました。自分が方向音痴なのを忘れていました。
「お兄ちゃん、どうする?門があった場所に戻る?」
「場所、覚えているのか?というか、降りてくれ」
ヒメを降ろした後、門の場所に戻ったが、そこに門はなかった。
「どうしようか」
「ちょっと待て、今考えてる。門が消えたのは、おそらく世界間の歪みが落ち着いたからだろう。振動と同じだとすると、再び大きい波、つまり門が現れるときがあるはずだ。それがいつかは、しまった‼マイコンピュータを置いてきた‼」
「つまり?」
「また門が現れるまで、待つしかない。」
「そっか、まぁお兄ちゃんとならいいや」
「悪いな、ヒメ」
「許す!」
妹と寝ようとしたとき、誰かが近づいて来る気配がした。そして、飛んできた矢が俺の顔をかすめた。
「あっぶねー」
「え、もしかして、人?」
そんな声と共に現れたのは、俺と同い年くらいの少女だった。
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