第2話

我が妹、名を神谷 凪かみや なぎいにしえの盟約により、我が深層に眠りし力を抑圧することが可能なのだ。


「お兄ちゃん、なんで中二病みたいな語りしてるの」

「いや、別のキャラを付ければ、俺が魔法少女大好きオタクというあらぬ誤解を消せるかなと」

「無理だから」

「やっぱり」


「えっと、お兄ちゃんが言おうとしたのは、昔、私とした約束があるから、お兄ちゃんが暴走しても私が止められるってことなんだけど...」

「なんだよ」

「いや、なんでお兄ちゃんはこうも面倒臭いのかなと」

「悪かったな」

「もういいよ、私大分諦めているし、ほら学校行こう」

「あぁ」

現在俺は高校二年、妹は高校一年。

共に私立波連地はれんち学園に通っている。変な名前の学校だなと、誰もが一度は思っただろう。

まぁ、俺はもう慣れた。

「おはよう!凪ちゃん」

「おはよう」

「神谷さんおはよう」

「おはよう」

凪は、学年を問わず人気者だ。毎朝誰かが挨拶していく。噂では、密かにファンクラブが作られているとか。

兄としては全く信じがたい話だ。

今度、あいつがBL小説読んでること言いふらすか?いや、そんなことしたら、後で俺が殺されるな。

まぁ、とにかく、妹は人気者だが、一方の俺はというと...

「よお、仁!相変わらず暗い顔だな」

声をかけてくるのは腐れ縁のこいつぐらいだ。

「美人の妹ちゃんとえらい差だな。お前ら本当に兄妹か?」

「最近俺も怪しく思えてきたよ。まぁ多分、あいつが優性遺伝子で俺が劣性遺伝子ってだけなんだろうがな」

「うわ、すげーネガティブ思考。もっと気楽に行こうぜ。俺なんか昨日もフラれたってのに、この明るさだぜ、偉いだろう」

「本当、お前のメンタルはイカれてるよ」

俺の唯一の友人、喜城 大翔きじょう はると。中学からずっと同じクラスが続いて、今に至る。

こいつ、顔だけはいいから彼女はすぐに出来るが、すぐに内面のダメダメ度に気づかれて振られる。

毎月彼女が変わる人間なんて、こいつぐらいだろう。ちなみに、関係が深くなる前に振られるので、まだ未経験らしい。その点で俺の同類であることが、まだ友人でいてやる理由だ。

「で、今月の振られた理由はなんだ?」

「お、聞いてくれるか。実は、先週デートに行ったんだけどよ」

「......」

「相手のお腹が鳴ったとき、爆笑しちまったんだよ」

「無神経過ぎるだろ」

「だって凄かったぜ、最初、誰かがトロンボーン吹いてるのかと思ったぐらいだ」

「だとしてもだな」

「分かってるって、今回はいつも以上に反省してるんだ。しかし、困ったな」

「何がだ?」

「いや、なかなか俺に合う子いないなって。なぁ、いっそ、お前の妹ちゃん紹介してくれよ」

「は?無理に決まっているだろ?」

「悪い悪い!冗談だって」

「いや、俺はお前のために言ったんだぞ。凪なんか最悪だって」

「お前の妹だしな」

「おい、どういう意味だ」

「ヤバッ、もう授業始まるぞ」

「話を逸らすな!って本当に時間がヤバい!」

俺と大翔は教室に駆け込んだ。

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