マリア様もみてる

カゲトモ

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「ローズマリー?」

 そう言って受け取った透明な袋には、気持ちプレゼント感を出すためかポップなリボンが付けられていた。針金の入ったアレだ。

「そうなんです。実は嫁が最近育てるのにはまっていて」

 門脇君がどこか申し訳なさそうに言う。そうか奥さんが作ったものか。納得。

「へぇ、それは良い趣味だね。このハーブ、とっても綺麗だし」

「嫁に言ったらきっと喜びます」

「今日奥さんは?」

「奈々子を連れて実家へ」

「まさか」

「も、もちろん愛想を尽かされたわけじゃないですからねっ」

 含んで言うと、門脇君は分かりやすく表情を変えた。もちろんそんなこと少しも思っていない。

「分かってるって。連休だもんね。帰ってくるのは明後日?」

「いえ、明日の夜には戻ります」

「そうなんだ」

 門脇君からバッグを受け取ってそれを肩にかける。今日はレモンを多めに仕入れた。

「奥さんによろしく言っておいてね」

「はい」

 ふんわりと笑う表情は奈々子とはあまり似ていないが、優しげな雰囲気はそっくりだ。

「ローズマリーか、何にしよ」

 ぱっと思い浮かぶのはチキンソテー。それとこの前食べたローズマリーを練り込んだクッキー。が、店では出せそうにない。クッキーくらいなら出してもいいけど・・・。

 ここはやっぱりモヒートカクテルとして酒に混ぜるのがいいか。ラムをベースにしてもいいし、シャンパンでもジンでもいいだろう。

 その時のお客様の要望に合わせて作ることにしようか。

「ハーブ作りが趣味か。俺も真似してみようかな」

 少なからず興味のあるものだ。ハーブは料理にも酒にも合うし、好きだ。ハーブ専門店と聞いたら必ず一度は足を運ぶくらい。

 ハーブなら家の中でも育てられると思うし、多分出来る気がする。

 今度奥さんにどのハーブが初心者向けか訊いてみようと決めて、ローズマリーの袋を作業台の上に乗せた。

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