228 プレイヤーのいない時間

 運営さんのメールのアップデートの開始日は、こちらの世界で五日後から開始。


 完全に勘違いしてた。てっきりメールの届いた次の日からだと思っていた。この世界と地球の世界で、時間の流れに差があることを頭からすっぽりと抜けていた。


 ファル師匠とデルタに朝練に今日はプレイヤーは来ないよと言っていたら、セイさんたちがやって来た。


 そこで俺がまた勘違いをしていたことに、はたと気付いた。地球時間じゃんってね。


 確認のために、わざとアップデート前はいつまで朝練やりますか? と尋ね、その返答がギリギリの五日後までやるのでお願いしますとファル師匠たちに言っていた。


 そして今日からプレイヤーがいない六日間が始まる。


 朝食を取り、降魔神殿のクリスタルで朝練を済ませ露天風呂でひと汗流して部屋に戻ると、女性陣はテレビの前に陣取っている。


 恋愛ものとお涙頂戴ものが女性陣のお気に入りで、涙を拭くハンカチ持参で朝食と昼食の後片付け後の一時間は、女性陣の鑑賞時間になっている。以外なのは、コリンさんとレイア、ゼータにセアリアスまで夢中になっていることだ。


 ゼータなど最初は散々そんな三文芝居などくだらないと言っていたのに、いざ見始めるとどハマリで仕事に集中できないという理由から、この時間に全員で見ると決めたのはゼータ自身だったりする。


 お子ちゃま陣営はフリーダムだ。見たい時に見ているが、一時間みたら一時間見ちゃ駄目と言ってある。


 なので今は、最近彼女らのブームになっている、戦隊ヒーローごっこに夢中になっている。



「現れたにゃ! 悪の大魔王! 我らケットシー戦隊がお前を倒すにゃ!」


「悪の栄えたためしなし!」


「悪のはびこるこの世界。我らが正す!」


「……(キリッ!)……」


「あい!」



 五人でポーズまで取ってのご口上……。大魔王って俺のことか?



「ウニャ!」


「主は某がお守りする!」


「……(キリッ!)……」



 ミーニャが俺の前で、両手広げてをケットシー戦隊と向き合う。両脇にはエターナとほーちゃんがポーズを決めている。悪の三大幹部って役なのかな?


 そんな俺を守ろうとするミーニャの健気な後ろ姿に感動して、後ろから抱きしめて頭をなでなでしてあげた。



「うみゃ~」


「ルークにゃん、何やってるにゃ! 大魔王はそんなことしないにゃ!」


「フフフ……よく来たなケットシー戦隊! お前たちなどまだまだひよっこにすぎぬわ! 我に挑んだこと後悔させてやるわ! ニーニャはミーニャたちとちょっと休憩して来なさい」


「あい!」


「にゃんこ共。動くな!」


「「「「ヒッ!」」」」


「大魔王の教育的指導の時間だな。ヒーローは必ず一度はうぬぼれや過信にはしるもの、そして敵に敗れて己の未熟さに気付かされるのが定番。それが今この時よ!」



 にゃんこ共は感動のあまり打ち震えているようだ。フフフ……。



「ル、ルークにゃん。こ、怖いにゃ……」


「こ、これが魔王の真の力なのか……」


「我々は大魔王を覚醒させてしまったのですわ……」


「……(ガクブル)……」



 まずは、そこに正座しなさい。それから誰が大魔王だって? ちみたちは、学習能力がないのかな? 正座しているにゃんこ共に頭グリグリの刑を執行。ゴロゴロ転がりながらのたうち回る。今日のところはこの辺で勘弁してやる。


 ニーニャたちが椅子に座ってアポンジジュースを飲んでいる横に座り、お茶を飲んでいるとファル師匠が慌てた様子で部屋に入ってきた。



「側近の独断専行で重臣が処刑されたそうじゃ……」


「これで側近が黒という線が強くなりましたね」


「しかし、側近じゃぞ。信じられん……」


「一度、その側近の素性を洗い直した方がよいのでは?」


「そ、そうじゃな。調べさせてみよう」



 プレイヤーがいない時に動くなんて、運営の嫌がらせか? それとも、今後のイベントのための伏線か?



「手は足りていますか?」


「大丈夫じゃ。ブルームの腹心たちも手を貸してくれている」


「なら、そちらはファル師匠にお任せします」


ハオ。儂の身内のことじゃ。任せるがよい」



 こんな時、あみゅーさんがいれば調べてもらえたのに本当に間が悪いな。まあ、その側近が尻尾を出すのも時間の問題だろうけどな。ブルームさんという人に頑張ってもらうしかない。


 俺は忙しいのだ、少しでも軍備を整えないといけない。この六日の間、プレイヤーがいないのは痛い。生産系のプレイヤーもいないので、準備が遅れるのは目に見えている。


 なので現地の職人に頑張ってもらうしかない。そのために俺とさくらは素材の受け取りや配達を一気に引き受けているのだ。


 デオン山で鉄鉱石やほかの金属鉱石を買い付け、ルグージュの職人ギルドに卸して、製錬された金属を買い、依頼している職人さんに持っていく。そこで作られた部品を持って、マーズの所に集め組み立てるといった具合だ。


 数多くの木工職人と鍛冶職人にバラバラに部品の作成を依頼してるので、職人さんたちは自分たちが何を作っているのかわからないはずだ。いつかはばれるだろうが、少しでも機密情報が漏れないようにするための対策だ。その分時間が掛かり面倒なんだけどね。


 椀には餡を入れよ……もとい、念には念を入れよと言うからな。




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