150 アンデッドは二度死なない?

 朝一でログインして、さくらを連れイノセントハーツの砦に向かった。



「準備はいいか?」


「「はい」」


「キュピ」



 ノインスの駅馬車屋にリンネ達を連れて行く。



「この二人と一匹が護衛します」


「オイオイ、大丈夫か?」


「これでも拳聖ファルング様の指導を受けている者達です」


「それが本当なら安心……か?」



 いやだから、本当の事だから、嘘言ってないから。


 じゃあな、後は任せた。楽な仕事だ気楽にやってくれ。


 リンネ達と別れ、アイントンさんのあばら家に来た。


 どう見ても、選別できていない感じ。



「一度は挑戦したんだが……諦めた。一日では無理だったよ」


「どうすんですかぁ!」


「すまんが、全て運んでくれたまえ」


「……さくら、お願い」


「ミャー」



 さくらとガラクタの山を周り、回収していく。



「ふむ。こんなに広かったかな?」



 全て回収が終わると、かなり広いあばら家だったことがわかる。



「このあばら家はどうするんですか?」


「私が居なくなれば、誰かが住むだろう。問題ない。もともと不法占拠だ」



 不法占拠って……問題ないのか? こういう人種は頭のねじが何本か抜けているものだからな、気にしたら負けだ。


 転移でイノセントハーツの砦に飛ぶ。


 砦の門近くにある宿にアイントンさんを連れて行く。



「明日の朝、ここに馬車を用意しましたので乗ってください。もうひとり、プレイヤーが便乗しますが気にしないでください」


「どこに連れて行くつもりだね?」


「死者の都ですよ」


「ほーう。迷宮かね」


「行けばわかります。それでは明日お待ちしてますので」


「了解した」



 これで、用事は済んだ。次は舞姫捜索かな?



 珊瑚に囲まれし島のカジノに来ている。もちろん営業前だ。


 オーナーとドール達に舞姫の特徴を伝えて、何か知らないか尋ねると……有ろう事か、全員知っていた。


 相当、浮き沈みの激しい戦いを繰り広げているようだ。


 何度かおけらになって野宿などもしているが、次の日に大勝してホテルに泊まることもあるらしい。今は運気上昇中のようで、ダゴン様が泊まるホテルに泊まっているみたいだ。


 しかし、兄の居ぬ間に宴会……もとい、鬼の居ぬ間に洗濯とばかりにハメを外してるなぁ。


 オーナーにお願いして、事付けを頼んだ。連絡乞う。こんちゃんと……。



 さて、用事もすべて済んだし、降魔神殿に戻ってオールと打合せしないとな。



「成程のう。明日来るのですな、その者が」


「場所はオメガに言って用意済みだ。オールと話が合うと思うぞ。どちらも知的探求心の虫だからな」


「それは楽しみですのう」


「それからこれなんだけ……」


「キョエェーーーーー!」



 オールが奇声を上げ物陰に隠れてしまった。走ろうと思えば結構早く走れるじゃん。



「あ、あるじ殿は、我を消滅させたいのかのう!」



 なんかマジで怒っている。どうしたオール?



「光のオーブは、我らアンデットの弱点ですぞ!」


「こんなのもあるんだけど……」


「……」



 あれ? どうしたオール? 器用な奴だ、二度死んだか? 聖なるオーブをストレージにしまい、オールに近づくと、口から泡を吹いて気絶していた。しょうがない、ほっとこう。


 試しにさくらに光のオーブと聖なるオーブを見せたが、なんともなくテシテシ叩いていた。


 オールが駄目ならオメガに預けとくか、オメガの所に向かう途中デルタがいたので、貰った報酬の黒夜叉の大剣と狂乱の鎧を見せた。



「……素晴らしい業ものだな」


「使うか?」


「……良いのか?」


「使う人いないしな、鎧は無理か?」


「……確かに呪いの鎧だが、我が狂気の前では無きに等しい」



 そ、そうなんですか? 俺には近寄りたくない程、禍々しく感じるんだが……。



「じゃあ、やる」


「……ありがたく使わせてもらおう」



 オメガの元に来て先程のオールの事を話し、オメガにもオーブを見せた。



「私には何も感じられませんが?」


「さくらもなんとも無かった。でも魔王の弱点なんだろうな」


「何か使い方があるやのもしれませんね」


「そうだな、少し調べてみるか」


「そうでございますね。それが宜しいかと。では、お預かり致します」



 お金もほぼ全て預けた。あの状態で死に戻りしたら目も当てられない。迅雷の小太刀は予備装備として装備。闇霧の太刀はさくらに預けている。安心安全だからな。


 ここに来た理由はもうひとつある。


 鮭とばである。


 拡張バックにせっせと詰めていく。どのくらい持っていけば良いんだろうか? いくら持っていっても、すぐ無くなりそうで怖い。取り敢えず、目一杯持って行こう。今日は日本酒ではなく、焼酎を持って行こう。芋と麦、米の三種類だ。鮭とばとならお湯割りが良いと思うな。


 部屋に戻るとファル師匠以外全員居た。珍しくペン太とカーちゃんも居る。


 みんなで昼食を取り、午後にケットシーの里に行くメンバーを発表。


 さくら、レイア、ニーニャ、にゃんこ共、ゼータ、ペン太とカーちゃんも連れて行こう。ケットシーのお子ちゃまたちも喜ぶだろう。


 メイド隊からブーイングが起こる。残念ながら今日は君たちを連れて行く理由がない。今度暇な時連れて行ってやるから我慢なさい。それより大広間の端でオールが倒れていたぞ。あのままで良いのか? オールのメイド二体が慌てて走って出ていった。


 準備が整ったら出発するからな。


 お土産にケットシーのぬいぐるみも持って行くか。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る