まおある ある日のひとコマ その十
さくら編
秘密基地は最高にゃのですにゃの。
ポカポカでふかふかで、お昼寝にはこれ以上の場所は今の所にゃいの。
でもにゃの、みんな忘れてるにゃのけど、さくら探検隊はお外に冒険に行かなければならにゃいにゃの。
ずっと考えてたにゃの。どうすればお外に行けるか、良い事を思いついたにゃの。
用心棒を雇うにゃの。えっ? うさ子ちゃん? うさ子ちゃんは用心棒に向かないにゃの。我が道を行くって言うか、全く動じないと言うか、感情表現に欠けるにゃの。探検は驚きと感動が必要にゃの。うさ子ちゃんはそれがにゃいにゃの。
にゃら誰を用心棒にするかにゃの。
最近、妹のニーニャを頼って来た、ケットシー族って言うにゃんこ達が来たにゃの。
にゃんこ達はニーニャの親衛隊ににゃったにゃの。丁度良いから、さくら探検隊の用心棒もさせるにゃの。
にゃんこ達を秘密基地に呼んだにゃの。トラを入れるのが大変だったにゃの。オメガに言って入り口を、もう少し大きくしないと駄目かもにゃの。
「さくら殿。にゃんでござるにゃ」
「ここはパラダイスだな」
「とても気持ちの良い場所ですわ」
「……(くわぁー)……」
「さくら殿じゃにゃいにゃの。これからはさくら隊長と呼ぶにゃの。特別にあにゃた達をさくら探検隊の用心棒に任命するにゃの」
にゃんにゃの、その口を開けたままの間抜け面は、さくら探検隊の名誉ある用心棒に不満でもあるにゃの?
「用心棒でござるかにゃ……格好良い」
「用心棒と言う事は報酬がでるのかな?」
「親衛隊と違うのかしら?」
「……?」
ミケは良いとして、タマは現実主義者のようにゃの。侮れなにゃいにゃの。
「勿論、報酬は払うにゃの。親衛隊はニーニャだけだけど、用心棒はさくら探検隊全員を守るのがお仕事にゃの」
「やるでござるにゃ! 硬派の用心棒、憧れてたにゃー」
「報酬は時給かなそれとも日給? 時間外も欲しいな」
「それより、さくら探検隊ってなにかしら?」
「……」
フフフ……。これで後はオメガを説得すれば、お外に行けるにゃの。完璧にゃの。
「よろしいでしょう。お嬢様のその熱意にこのオメガ感動いたしました。しかーし、最後の試験にパスできたらでございます。お受けになられますかな?」
「もっちのろーんにゃの!」
「わかりました。試験の用意を致しますので二、三日程、お時間を頂きとうございます。それまで、気を長ーくしてお待ちください」
「わかったにゃの。さくらは気が長ーいにゃの」
何度も言ってるが、次回あるのか? さくら探検隊。試練に打ち勝て! こうご期待。
うさ子編
うさ子は旅に出る事を決意した。
余りの自分の不甲斐なさに我慢できなかった。そのせいで大切な人を失った……。
ラッシュラビット族の里に居るときから、うさ子は天才ともてはやされていた。
里は退屈で煩い長老達ばかりで嫌気がさしていたので、外の世界に出る事にしたのだ。
外の世界は波乱と冒険に富んだ、暇する時間などない程に楽しい世界なのだと、胸に希望を抱きワクワクしながら旅に出たものだ。
同じ旅でもあの時と今では全く違う思いだ。
前途洋々と出たあの時、主や仲間達に会わせる顔がなく逃げ出す今……。
里を出た時は何もかもが、新しく珍しくそして楽しく感じた。
初めて人族に会って戦った時は、あれ程自分に敵う者などいないと自負していたにもかかわらず、己の死と言うものに恐怖した。その人族がルークだ。
あの時会ったのがルークでなかったら、今頃自分は生きていなかっただろう。だからこそ初めて会った人族のルークに興味を持ったのだ。
初めは友としての付き合いになると思っていた。が、しかし、ルークの不甲斐なさを見てる内に、こいつを守り鍛えなければならないと思い始めた。姉が出来の悪い弟を見守るが如く。
ルークと一緒に居ると驚きの連続だった。街に入り多くの人族を見るたびに、自分はなんて小さな世界で蛮族的な生活をおくってきたのだろうかと思ってしまう。
野菜おばさんに六三亭の女将さん、そしてコリンおばさんとの出会い、みんな大好きな人達だ。特にコリンおばさんは抱きしめられる度に亡くなった母を思い出す。
後で挨拶していこう当分会えなくなるのだから……。
ルークとの冒険も波乱に満ちていた。
うさ子はルークに強くなってもらいたいとの思いから、敢えて手を出さず静観していた。流石に人族四人組に襲われ窮地に陥った時には助けたが、思った以上に頭にきている自分がいる事に驚いてもいた。
そしてルークと共に自分も強くなっていく事に喜びを感じていたのだ。
そして運命の出会いが起きた。第十三魔王さくらだ。初めて見た時はその強大な力に恐れおののいたが、ラッシュラビットの直感なのかこの方に一生ついて行くべきなのだと感じたうさ子は、目の前の邪魔なリッチロードを排除してさくらの一の臣下になるのだった。
魔王の配下になったおかげで、更に強い力を手に入れる事ができた。うさ子は既に魔人の領域にまで達していた。
日常もガラッと代わり、帰る家ができ大事な人が増えていく。
そんな中でもアルファは別格だった。
さくら直属のメイドだが、うさ子に対してもお嬢様と呼んでくれる。ガサツな自分がお嬢様と呼ばれる事にテレを感じのだった。とても優しく、いつも自分を気に掛けてくれる姉のようなアルファが大好きだった。
それがあの時、自分の犯したミスで大切な姉を失うなどと、想像していなかった。
うさ子は天才肌、何をやってもそこそこ上手くやれる。努力を必要としないのだ。
本人も努力するつもりが毛頭無い。しなくても今まで上手くいってきたのだから。
師であるファルングにはいつも、その事を注意されていた。いつかその傲慢さが命取りになるぞと……。
そしてその時が来てしまった。
うさ子は油断していた訳ではなかった。いつも通り平常運転だった。
デスドラゴン、最強種ドラゴンのアンデット。何度攻撃しても意に返さない不死身の体、うさ子も何度も攻撃を加えるがダメージになってるかさえ怪しい。
しかし、動きにはついていける、と思っていた。大きな体の為動きは早くないと。
そんな時、弟分のルークの愛する女性レイアがドラゴンの攻撃を受けて吹き飛ばされるのを見た。一瞬ドキッとしたがルークが受け止めたので安堵したが、そのまま地面に叩きつけられ消えていった。レイアはルークが命を張ったおかげで無事のようだが動けないようだ。
あそこに攻撃されたら不味いと考えたうさ子は、自分がおとりになる事にしたのだ。
さくらがドラゴンの頭にいるのが見える。何か策があると思いその間ドラゴンの気を引けば良いだけと思っていた。
実際にやるとこれがきつい。降魔神殿に攻撃させないように逃げ回るには足場が悪過ぎる。ルークはずっとこれをやっていたのかと考えると、少し尊敬するうさ子だった。
只、うさ子もずっと戦っていた後に、これをやっている。まだまだ大丈夫と思っているが体は正直だった。
いつもなら、難なく躱せたハズだった。当たり前の事で、精神的には余裕さえあったのだ。
ほんの少しの違和感、さして気にする程ではないと思っていた、疲れ。
あれ? っと思った時には目の前に黒いブレス。何故か横から受ける衝撃。うさ子は全く理解できていなかった。聞き覚えのある声以外は……。
「お嬢様!」
うさ子は立ち上がり周りを見た。先程までうさ子がいた場所に塵の山がある。ルークが歩いてきて、さくらも走って来て塵の山から必死に何かを探している。さくらが何かを見つけたのが見えた。
「アルファ逝っちゃやだーーーーー!」
うさ子は理解できないでいた。何故アルファなんだ。アルファはニーニャ達とゲート前に居たんじゃないのか? なら自分を助けたあの声は誰のものだったんだ? 頭の中がグルグル回っていた。
ルークがさくらを抱き上げうさ子を抱きしめた時、やっと気付いた。いや、認めたと言うべきだろう。あれはアルファだったのだと。
アルファが死んだ。それも自分のせいで……。
その日からうさ子はふさぎ込んだ。何も考えたくないと言う思いで……。
さくらは一度もうさ子を責めなかった。非は自分にあるのは明白だ。それでも誰も責めない。この事が逆にうさ子を苦しめた。誰かに言って欲しかったお前のせいだと……。
そしてうさ子は決意する。このまま、みんなに甘えていたら駄目になる。アルファが救ってくれた命は、今度はさくらに返さないといけないと。今の自分ではそれすらできない。
旅に出よう。今の不抜けた自分ではなく、みんなに認められる自分に変わって帰ってくるのだと。
その時はみんな笑って向かい入れてくれるハズだ。だって仲間なのだからだと。
メイド隊編
降魔神殿のメイドドールは暇していた。
メイドドールの主達はリッチである。正直、世話のしがいがないのである。
それに何故か、各々二体のメイドドールが居る。
一体は主のお世話をできるが、必然的に残りの一体が暇になる。
部屋の掃除をしようとしたが、リッチは眠らない。そう、寝室が無いのだ。書斎は研究室に共同の机があり、研究室内は触ると危険と言うものが多すぎる為、床掃除位しかする事が無い。一番奥にも部屋があるが、絶対に開けてはならないと厳命されている。たまにうめき声のような音が聞こえる為、好き好んで行くものもいないが。
メイドドールの喜びは働く事にあるのに、仕事が無いのだ。自分達の部屋を掃除する位のものだ。しかし、メイドドールは十二体もいるのだから、逆に仕事の取り合いになる。
そこでメイドドール達は相談した。
結果、一番偉い人に頼んでみようかとなった。
勿論、一番偉い人はルークだ。メイドドールの感性ではだ……。
だが、ルークはいつもいる訳ではない。となれば次点の偉い人に頼もうとなり、クリスタルの部屋に来た。メイドドールにとって次点の偉い人はオメガだ……。
魔王(笑)はどこイッター。
「成程。しかし、私の一存では決められませんね。こう言う場合はルーク様なのですがいらっしゃいませんので、お嬢様の許可が必要だと思われます。お嬢様の許可があればルーク様も文句は言いませんので」
ここで初めてメイドドール達は魔王(笑)様を思い出す。彼女達にすれば魔王(笑)様は、とても愛くるしいアイドルであり癒しなのだ。暇な自分達の相手をしてくれ、いつも優しく接してくれる、笑顔の天使でしかなかった。
彼女達はさくらの部屋に押しかけた。
「メイドちゃん達どうしたにゃの?」
メイドドール達は緊張して一列にピシッと並んでいる。
さくらに緊張している訳ではない。アルファに対してだ。
アルファはメイドドールにとって憧れの存在だ。この降魔神殿を維持しているのはこの方あっての事だ。
メイドドール認識上、アルファは一番偉いルークに対しても情け容赦なく対応する。一番大事なのは魔王(笑)様、メイドの鏡であると思っているのである。
「魔王(笑)様にお願いがあって来ました」
「お願い? にゃの?」
「はい。お願いです。我々にメイドとしての仕事をくださいませ!」
「みゃ~?」
「今の生活に不満はありません。我々の主も良くしてくれます。ですがベータ(セーフティーエリアのメイドドール)達のようにメイドとしての喜びを得たいのです」
「働きたいにゃの? お昼寝してる方が幸せににゃのににゃの?」
「はい。メイドたるもの働いてこそ、なんぼのもんですけん! あらやだ、失礼しました。つい、力が入ってしまいました。オホホホ……」
「ねぇ、アルファ~」
「何でございましょうか。お嬢様」
「メイドちゃん達を使ってあげてにゃの。いつもひとりで大変でしょうにゃの」
「ですが、
「駄目ぇ~? アルファと一緒に居る時間が増えるにゃのににゃの……」
首を傾げて上目遣いてさくらは訴える。
「ぐっ。お、お嬢様がそこまで仰るなら仕方ございません。わかりました。お引き受け致します」
「だって。良かったにゃの。メイドちゃん達」
「あ、ありがとうございます。魔王(笑)様!」
後日、ルークによりメイドちゃん達改めメイド隊に変えられ、一体一体に名前が付けられた。
アン、ドゥ、トロワに始まりディス、オンズ、ドゥーズまで……。
敢えて何も言うまい。本人達は喜んでいるのだから……。
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