113 さくらの悲しみ……逝く者と行く者達
一瞬なにが起きたか理解できなかった。
今のは確かにアルファだった。何故、ここに居た?
色々あり過ぎて思考がついていかない。
レイアはどうなった? 居た! 降魔神殿の壁際に横たわっている。駆け寄り確認する。大丈夫だ、生きている。HPはだいぶ減ってるが異常状態にはなっていない。
すぐさまヒールを掛ける。
「ルーク……」
レイアが目を覚ました。
「ここで休んでると良い。レイアは十分にやってくれた」
レイアを壁際に背をつけ座らせる。
「どうなったのでしょう……」
「まだ終わってない。大丈夫、さくらならやってくれる」
「そうですね……さくらちゃんなら」
ここに残りたいと言う気持ちを押し込み、レイアにポーションを渡して戦場に戻る。
さくらがドラゴンの頭の上で何度もドラゴンの頭に肉球パンチを喰らわせているのが見える。その度にドラゴンの苦しそうな咆哮が響いてくる。
他のメンバーは攻撃せずに傍観しているようだ。うさ子を除いて……。
アルファがブレスの直撃を受けた場所に来ている。塵の山ができていた。本当にアルファだったのか? そう言えば、死に戻りした時アルファが居なかったような気がする。蘇生薬を使をおうとしたが使用不可と出た。人族以外使えないのだろうか……。
急にドラゴンの咆哮が止んだ。大人しくなり、地上に降りて来る。どうやら上手くいったようだ。魔王(笑)のペットと言う称号がついている。なんて物騒なペットなんだ……。
さくらがドラゴンの頭から飛び降り、こちらに走って来た。さくらの全力疾走は初めて見たな。ピョンピョン飛び跳ねるように走る姿は可愛らしい。
だが、さくらの目は必死だった。自分の足元に来て塵を一生懸命掘っている。目から涙をポロポロを落としながら必死に掘り続けている。塵の中からゴルフボール大の水晶のようなものが出てきた。
「ミャーミャーーーー!」
さくらが悲しみの声を上げた……何度も何度も……泣き叫ぶさくらと水晶を拾い上げ抱きしめる。さくらはポロポロ涙を落としながら、自分を見つめ鳴いている。さくらが抱いている水晶はアルファの心となっていた。
さくらにとってアルファは姉のような存在。彼女に抱かれるのが好きで、いつ如何なる時でも味方であり、甘えさせてくれる存在。さくらの忠実なメイドであり、時には母であり優しい姉。
何とかしてやりたいがどうにもできない。魔法(聖)にあるリサシテイションなら復活できるのかもしれないが、プレイヤーでさえ覚えているのは数人と聞いている。
さくらを抱きしめてやる以外できる事がない。さくらを抱きしめながらもう一人のお嬢様を見る。うさ子も何が起きたかわからない様子で茫然と立ち尽くしている。
さくらを抱きしめたまま、うさ子の元に行く。うさ子は自分を見つめて嘘だよなと言った目で見てくる。自分は頭を横に振り屈んでうさ子を抱きしめた。うさ子は腕の中で暴れている。真実を受け止められないのであろう。しかし、さくらの泣き声を聞き、その事実を理解するとわんわん泣き出した。
「終わったようじゃのう」
「そうみたいですね」
「酷い有り様じゃな」
「……」
「アルファ殿が身を挺してくれなんだら、馬鹿弟子は先代様の元に行く所であった……。あれ程己を過信するなと言っておったろうに」
アルファは何故ここに居たんだろう?
思い当たるのがアルファの持っていた魔眼だ。もしかしたら未来視だったのかもしれない。そう考えれば色々な事が辻褄が合う。あの反応の良さは未来視だからの反応だったのではないだろうか。今回もうさ子に危機が迫る未来視を見てしまい、防ぐ方法が自分の身を犠牲にする事でしか回避できない状況だったのかもしれない。
突然で唐突な仲間の死。なのに何も言葉が出てこない。アゥは言葉の始め……もとい、会うは別れの始めと言うが、辛くない訳じゃないがどこか冷めている自分。俺はこんな人間だっただろうか。
さくらとうさ子を連れレイアの所に行く。顔色も良く大丈夫そうだ。
「何があったのですか……」
レイアはさくらとうさ子を見て、ただならぬ雰囲気を感じているようだ。
「アルファが逝った」
「!?」
理解できて無い顔だな。
「アルファが身を挺してうさ子を救った」
「そ、そんな……」
「すまないが、さくらとうさ子を頼む。誰か傍に居てやらないと悲しみで潰れてし
まいかねない」
「さくらちゃん……うさ子ちゃん……」
「ここに居てくれ。メイド隊を呼んでくる」
降魔神殿に戻りメイド隊に救護活動の指示を出し、オメガの元に向かった。
「一応、終わった。被害状況の確認を頼む。それからアルファが死んだ……」
「……そうですか。どのような最後だったのでしょうか?」
「うさ子を身を挺して守って逝った」
「お嬢様をお守りできた事は重畳。アルファも悔いはないでしょう」
「……そうだな。そう思いたい。まだ、やる事がある。こちらは任せた」
「承知しました」
また、降魔神殿の外に出た。ドラゴンは大人しくうずくまっている。
「オール。弟子達はどこに居る?」
「ハァ……。仕方ない呼び出しますかのう」
オールの目の前の地面に魔法陣が浮かび人影が浮かんでくる。リッチ共だ。
「なぁっ!!」
「不味い。忘れてた!」
「し、師匠はお変わりなく重畳でございます」
「逃げようとしていた訳ではありませんぞ!」
「ば、馬鹿。余計な事を言うな……」
言いたい事は山程ある。もちろん許す気はない。それでも一時間位は言葉で折檻し、最後にこの馬鹿共に言い渡す。
「お前達は許されざる事をした。お前達を消滅させたいと心の底から思っている。しかし、それは一時的に怒りが収まるだけで生産的ではない。お前達にチャンスをやろうと思う」
「「「「「ゴクッ……」」」」」
「アルファを復活させる術を探してこい。蘇生薬を使おうとしたが駄目だった。ドールはゴーレムに近い。特別な復活方法があるのだろう。それを探せ」
「メイド達を連れて行っても良いか」
「良い。と言うとでも思ったか? 身の程をわきまえろ」
「「「「「……」」」」」
「嫌なら別に構わない。オールに免じて今は見逃してやる。どこかの魔王の配下になるも良し。自分で事を起しても良し。だが、覚えておけ! 次に俺の前に現われた時は、死ねない体という事を後悔させてやる。この世が終わるまで苦痛の渦に叩きこんでやる」
「
それ、どう言う意味かな? オールくん。抽象的な表現ではなくはっきり言って欲しんだけど。
「「「「「
ん? 何か釈然としない。
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