70 クラン【シルバーソード】

「まあ、何と言いますか……強制縛りプレイ? なのかな?」


「なんだそりゃ」


「ま、まあ。人それぞれだし。検索はマナー違反だよな」


「まあな。しかし、丁度いい。昨日あれからこの迷宮に入った奴らいたか?」


「いませんね。自分達が帰った後じゃないですか」


「だろうな。しかし、じゃあ誰がやったんだ。確かに、討伐されたって流れたよなぁ」



 俺達だよ。なんって口が裂けても言えない。面倒事に巻き込まれるのはかんべんだ。



「話も済んだし、もう行っても良いか?」


「君は人の話を聞いていたのか?」


「聞いていが、他に何かあるのか? 心配してくれるのは良いが、指図される所以はないと思うが」


「どうやら理解してくれて無いようだね。行ったら死ぬと言ってるんだ」


「それがどうした? 俺達はあなたのクランのメンバーではないので、お気にせず」



 なんか段々頭にきている。なんなのこいつウザイんですけど。



「おい、お前調子に乗るなよ。俺達が誰なのかわかってんだろうな。舐めた口聞いてるとこのゲームの中には居られなくすんぞ!」


「おいおい、そんなに初心者をいじめるなよ。影清。君も今のでわかったろう、郷に入れば郷に従えってね」


「それ脅しだよな。GMコール」


「はい、はーい。呼びましたぁ?」



 いつか呼んだ妖精さんとは違う姿の妖精さんが現れる。



「今の我々の会話のログの保存と、プレイヤーに対する強迫行為をおこなった事に対するペナルティーの申請をお願いします」


「お、お前、な、なに言ってやがる」


「はーい。ちょっとお待ちくださーい。うーん。確かに強迫行為に該当しますね」


「ちょっと待ってください。PKが良くて今のがなんで駄目なんですか!」


「もしかしてお前ら、利用規約読んでないのか? 見せかけだけのガキかこいつら」


「それではご説明しまーす。PKはプレイヤー同士の問題で、当社は一切関知いたしません。ですが、先程の内容は多数のプレイヤーがある特定のプレイヤーをゲーム内から追い出すと言った内容は、我が社syber elemental Co.,Ltdに対する営業妨害にあたります。故に実際にそのような行為があった場合は、アカウント削除もありえると言う事です。ご理解頂けたでしょうか」


「ですが、まだそんな事はやっていなですよ!」


「ですから、こちらのプレイヤー様からログの保存とペナルティーの申請があったのです。これは全プレイヤーに与えている権利ですので


 」


「そんな事聞いてないぞ!」


「はい。一度も話した事はございません。既に利用規約にサインをされているのですから、必要ないと判断しております」


「そんなの詐欺と同じじゃないか!」



 あらあら、こいつら本当にガキだな。困ったさんでちゅねー。UFOに用無し…もとい、阿呆に法なしだな。


 まだGMとやり合ってるよ。救いようのない馬鹿だ。ゲームの中のGMは神に等しいってのは、常識じゃなくなってるのか? 俺の知識が古いのか?


 騒いでいるせいで、ギャラリーが増えてきた。あっ、更紗さん見っけた!



「どーも、でーす」


「こんにちは、更紗さん」


「ミャー」


「キュッ!」


「クェー」


「なんだ、ルーク達じゃないか。何があったんだ」



 更紗さんに先程の出来事を説明する。



「そうか、しかし嫌な奴にからまれたな」


「あいつ、やっぱり嫌な奴なんですね」


「彼は、ケイン・レグルス。クラン【シルバーソード】のクランマスターで、攻略組のトップスリーの一角だ。勇者に一番近い男と言われていて、光の民と言うレア種族だよ」


「勇者ねぇ。所詮ゲームだから性格は関係ないのかぁ」


「ハハハ……そうだな、実際にあんなのが勇者だなんて言われたら、減滅ものだな」



 いつの間にかGMがふたりになっている。羊の執事の男性のようだ。何とも茶目っ気があるな。ああいう捻りは好きだ。今度、オメガにさせてみよう。



「貴様、覚えてろよ!」


「なんて言ってますけど」


「そうですね。勧告対象に認めましょう。残念ですが」


「うっ!?」


「あなたがこの度、申請されたプレイヤー様ですね。申請は受理されました。本来であれば訓告で済ます所ですが、過去のログを調べました所、度が過ぎる事例が幾つか見つかりました。当面の間は観察処分と言う所でしょうか」


「こうなる前に警告とか出せないのですか? 管理AIあるのでしょう?」


「残念ながら、AIとは言えそこまで万能ではありません」


「そうですか? 失礼ですがお宅のAIどこ製ですか? ディプスプラント社やフロンティアオメガ社のエモーショナルリーディングAIをサブAIにして、管理AIにドミナントさせれば良いのではないですか? 実際幾つかの初等教育機関では取り入れられて、子供の躾などで成果を出していますよ」


「あなたは、そちら関係の方なのでしょうか? 相当、お詳しそうですね。管理部の方には私から話しておきましう。それでは他に何も無ければお暇させて頂きましょうか」


「それでは今後も『infinity world』をお楽しみくださいねぇ」



 そう言って二人のGMは消えていった。



「よう。更紗、何かあったのか?」



 赤髪のイケメン偉丈夫が更紗さんに声を掛けてきた。しかし、イケメン率多くねぇ?



「やあ、セイ。またシルバーソードの連中が問題起してね」



 更紗さんがセイさんと言う方に事情を説明する。



「それで、そっちが当事者と言う事か」


「初めまして、ルークと言います。こっちはレイアです」


「セイだ。しかし、よく知ってたなペナルティーの申請なんて。俺も初めて知ったぜ。知ってたら俺も使ってたのにな。だが、これでシルバーソードの奴らは少しはおとなしくなるだろう。感謝している」


「セイは、クラン【ウィズダムグリント】のクランマスターだ。攻略組のトップスリーのひとつで実質のトップだよ」


「おだてても、何も出さんぞ。カイエンさんのとこは攻略以外、興味無しだからな」



 後で教えてもらったが、カイエンさんとは残りのトップスリーのひとつで、クランを組まずに自分達のパーティーだけで攻略している人達らしい。


 色々知らない事が多い、もっと世情に耳を傾けないといけないかもな。



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