61 レイアの決意

 ゲートのある場所からさくら達の部屋に移動した。


「お帰りなさいませ。ルーク様。そちらがレイアリーサ様ですね。お初にお目にかかります。お嬢様のメイドをしております。アルファと申します。以後良しなに」


「こちらこそよろしくお願いします」



 どうやら、さくらが事前に話をしていてくれた様だ。



「ミャー」



 さくらが嬉しそうにレイアリーサさんの胸に飛びついた。一瞬アルファの目がギラリと光った様に見えたのは錯覚だろうか。女性同士仲良くしてくれよ……。


 先ずは、彼女の部屋を用意する為にクリスタルの部屋に行く。


 途中、オールの弟子の一体がドールとイチャついてる場所に遭遇する。俺は無視したが、レイアリーサさんは手を口にあてたまま目を白黒させていたな。



「これはお嬢様、ルーク様、そちらのレディはどちら様でございますか?」


「ミャミャー」


「そうでございますか。それはようございましたね。お嬢様」


「オメガ。彼女の名前はレイアリーサさん。これから一緒にパーティーを組む事になった」


「お世話になります。レイアと呼んでください」


「承知しました。レイア様」


「彼女の部屋を用意して欲しい。希望は彼女に聞いてくれ」


「承りました。それではレイア様、こちらにどうぞ」



 オメガと彼女が話合ってる間、さくらをなでなでチュッチュッしている。



「みゃ~」


「あのう……ほんとに宜しいのでしょうか?」



 部屋の詳細を見ると1LDKの、シャワー、トイレ、クローゼット付きだった。シャワーなのは露天風呂があるからだろう。



「狭いならもっと大きくしてもかまいませんよ。たいして変わらないだろ?」


「はい。一回り大きくしてもほとんど変わりません」


「こ、こちらで充分です!」


「一通りの家具や日用品も用意してくれ。足りない物は追々そろえる」


「承知しております」



 レイアリーサさんはまだ現状についてこれてない様だ。ゆっくりと説明が必要だろう。もはや戻ることの許されない魔王の仲間になった事を……。


 さくら達の部屋に戻ってきてアルファにお茶の用意をお願いする。



「あのう、ルークさん」


「はい、なんでしょう」


「私はなにがなんだかさっぱりです。さっきアンデットが居ましたよね」


「確かに。腐れリッチどもの一体が居ましたね」


「リ、リッチなのですか!? 私は殺されるのでしょうか……」


「もし、何かされたら誰にでも良いので言ってください。この世から消滅させますので」


「ミャー」


「キュー」


「承りました」


「くぇー?」



 ペン太、お前は良いです。



「は、はぁ……」



 お茶の用意ができたので、そろそろ説明を始めよう


 この場所の事、オール達の私怨にさくらとの再会、他の仲間の事に人魚族との出来事。



「……と言った状況ですかね」


「……」



 レイアリーサさんはさくらを抱っこしたまま固まっている。



「ミャ~」


「はっ……さくらちゃんが魔王……」



 そうです。あなたの膝の上にいる子猫が第十三魔王なのです。


 まだ茫然自失状態。少しそっとしておきましょうか。うさ子、そのクッキーってコリンさんのクッキーじゃないの? なんでここにあるのかな。一個ちょうだいな。うさ子は目にも止まらぬ早さで残りのクッキーを口の中に放り込む。うさ子のケチ。


 アルファが入れた茶を何杯飲んだことだろうか。やっとレイアリーサさんが再起動する。



「今までの話は本当なのですよね」


「嘘偽りのない事実ですよ」


「ミャー」


「逃げても良いのですよ」


「ミャ~」


「……いえ。逃げません。さくらちゃんも裏切りません」


「ミャッ! ミャミャー」



 さくらは嬉しそうに彼女に顔ペロし始めた。



「フフ……改めてよろしくね。さくらちゃん。それから、これからはレイアと呼んでください」


「わかりました。それなら俺の事もさん無しで、ルークと呼んでください」


「わ、わかりました。ルーク……」


「ルーク様、そろそろ夕食にするのが宜しいかと」



 ちっ、なかなか良い所だったのに……しょうがない、夕食にしよう。


 レイアにはハンバーグ定食を、自分は辛いのが苦手なので、甘口カレーの大盛りをクリスタルから出す。うさ子は野菜があるし、ペン太も魚を一杯貰ってきているので必要無い。さくらは最最高級ネコ缶。ちょっとだけ貰って食べてみたが、薄味なのだが非常に美味しかった。流石、最最高級ネコ缶。レイアはハンバーグを食べたのが始めてだったらしく、大変気にいってもらえた様だ。


 リアル世界で生きている俺にとって普通の事でも、こちらの世界で生きているレイアとの間には色々なギャップがあるようだ。


 例えば時間の過ごし方だろうか。リアル世界には多くの情報端末に娯楽施設に道具がある。しかし、この世界にはそういった物が少ないので必然的に暗くなれば寝て、明るくなれば起きて働くサイクルになる。


 レイアに今までどうしていたか聞いてみれば、寮には門限があるので夜遅くまで飲んだりする事はできず、部屋で女子トークをするか刺繍などの趣味をするしかなかったそうだ。娯楽といえばこちらの世界にもチェスあった。あったと言うか、プレイヤーと一緒に導入された様だ。因みにリバーシも同じでトランプは最初からある設定の様だ。


 なのでレイアをチェスをに誘ってみた。勿論、始めてだったのでルールと駒の動かし方を教えて今日は終わりになった。明日からは定石を教えながら一局打ってみたい。


 そして、今日最後の締めは露天風呂でしょう。一緒に入りたいのは山々だがオール達に言った手前できない。クーッ!



「アルファ、悪いけどレイアと一緒に入って教えてあげてくれ。ついでにさくらとうさ子もお願いする」


「承りました」



 ちょっと嬉しそうな顔をしてたな、偶にはご褒美をあげないと。



「クェー?」


「お前は俺とだよ」


「くぇ~」


「ほう。俺と風呂に入るのがそんなに嫌かね、ペン太くん」


「クェッ!? (ガクブル……)クェクェー!」


「わかれば良いのだよ。わかれば」



 余り、調子に乗ってると路頭に迷う事になるからな。幼生体とはいえ、毎回毎回お前だけ良い思いするのは同じ男として許せんのだよ。


 うーん。男風呂と女風呂に分けた方が良いのかもしれない。そうすれば気兼ねなく入れるしな。後で追加設定しておこう。これでラッキースケベができなくなるのがちょっと残念だ。



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