59 魚はおみやげとしてどう?

 目が覚める。朝だ。朝と言えば朝風呂。庄助さんは身上潰したが自分は大丈夫……だと思う。


 風呂に行くと誰かが入っている。ラッキースケベかな、フフフ……オメガだった。



「こちらに戻りましたらありましたもので、ご相伴に預からせて頂きました」


「向こうは良いのか」


「向こうの迷宮はランクが低いのでハンターの初心者用でございます。ランクが上がるまではリゾートをメインに管理しますのであちらの二人で問題ございません」


「そうか、向こうはリゾート地こちらは街か」


「街でございますか」


「将来的にはな、この迷宮を含めた街になれば良いなってな」


「大きな夢でございますね」


「夢では終わらない。実際に迷宮都市ツヴァイスがあるんだ。ここだってできるさ」


「非才なる身ではございますが、その覇道手伝わせて頂きとうございます」


「は、覇道確定なの? もっと穏便にいかない?」


「さくらお嬢様が魔王である限り、他の魔王との軋轢が生じるのは避けて通れぬ道でございます」



 そう、遅かれ早かれ今回の様な事が何度も起きるのは、論を俟たない事なのだ。



「現実から目を背けるな、か昔よく言われたよ。オメガ宜しく頼む」


「承りました」



 良くできた執事だ。


 オメガが上がる前に教えてくれたのが、この温泉、HP回復、疲労度回復、状態異常回復の効能があるそうだ。鑑定で見たらその通りで、残念ながら飲用効果無しになっていた。万能薬として売れるかと思ったのだが、残念。



 部屋に戻ると皆起きていて、朝食取っている。うさ子がこちらを見て口をモグモグさせ何か言っている。お口の中の物ちゃんと食べ終わってから喋ろうね。うさ子。



「お嬢様がそろそろ野菜が心許ないと仰っております」


「ルグージュに行くからついでに買いに行こう」


「キュッ」



 ルグージュは今日も良い天気。ログインして一度も雨の日が無いけど、この世界雨って降るのか?


 露店街のいつものおばさんの所に来た。熱烈な歓迎を受けている。うさこがね。ついでにペン太も。何故か知らないおばちゃんが増えている。いつの間に増殖したのだろうか。


 うさ子とペン太がたっぷり可愛がられた後、大量の野菜、乳製品、腸詰など大量に頂いた。勿論、お金払いましたよ。おそらく原価割れしてると思うが感謝だな。



「おう、久しぶりだな」



 穴熊親父の山小屋に来た。



「イーリルの方に行ってまして。はい、お土産です」


「おっ、魚か。わりーな気ー使わせて」


「この街だと魚があんまり手に入らないですからね」


「そうだな。入って来ない訳じゃないんだが、ほとんど貴族様が買い占めるからなぁ」


「今からコリンさんの所に行こうと思っていますが、居ますかね」


「いるんじゃねーか」


「じゃあ行ってみます」



 うさ子は既に歩いて行っている。まぁすぐそこだからな。うさ子がまた勝手に扉を叩いている。なんか妙に慣れてないかい?



「あら。うさ子ちゃんいらっしゃい。今日はルークくんも一緒なのね」



 ん? 今日は一緒? どういう意味?



「すみません、急にお邪魔しちゃって」


「立ち話もなんだから、入って、入って」



 うさ子は勝手知ったるなんとやら、ペン太の入ったリュックを降ろしていつもの席に座っている。座ってるだと!? 良く見ると椅子の下に足台がセットされていて、いつの間にかうさ子専用椅子になっていた。



「レイア。ルークくんが来たわよー」


「えぇーえっ! す、すぐに行きます」



 コリンさんが二階に声を掛けると、レイアリーサさんが慌てて二階から降りてきた。



「こ、こんにちはルークさん」


「こんにちは、レイアリーサさん。もうお加減は宜しいのですか」


「ミャー」


「はい、この通りです。さくらちゃんもありがとう」


「それは良かった。今日はレイアリーサさんに食べてもらおうと思って、お土産を持ってきました」



 そう言って海産物を見せる。



「あらあらまあまあ、一杯有るのね。私達だけじゃ食べ切れないわ。そうだわ、お昼まだでしょう。一緒にどうかしら? ね、レイア」


「ル、ルークさんさえ良ければ一緒にどうですか」


「それなら自分も手伝います。結構料理には自信があるので」


「あらあら、レイア、大変ね」


「うっ!? みゅ……」



 さくらとペン太をうさ子に預けて台所に立つ。作るのは海老と貝のパスタにしようと思う。パスタは簡単だからな。


 海老と貝を下ごしらえしてニンニク、玉ねぎ、トマトを切っておきパスタを茹でる。その間に具材をフライパンで炒め仕上げに白ワインを入れひと煮たち、茹で上がったパスタを入れ軽く混ぜればできあがり。


 コリンさん達は魚を焼いてくれてるようで、この短時間に魚介スープも作ってくれたようだ。流石手際が良い。


 お陰で、皆で楽しく昼食を取ることができた。さくらも焼き魚が食べれてご満悦。ぺん太は生魚丸呑みだけどな。



「ルークくんは料理が本当に上手ね」


「旅の間は自分で作りますから、自然に身に付きますよ」


「ルークくんはいつもひとりなの?」


「そんな事無いですよ。この子達も居ますし、こないだの友人も居ますから」


「パーティーを組む気は無いのかしら(チラッ)」


「お、おばさま……」


「そうですねぇ。組みたいとは思うのですが色々事情があって、なかなか組めない状況です」


「事情を聞いても良いかしら」


「うーん。ひとつは事情があってハンターギルドに入れない事と、この子達の事ですかね」


「ハンターギルドは良いとして、この子達に問題でもあるのかしら」



 問題だらけだな。なんて言ったら良いか……。



「気付いていると思いますが、自分はプレイヤーと呼ばれる存在です」


「そう、やっぱりそうだったのね。以前、国からお触れがあったわ。神託がありプレイヤーと呼ばれる人達がやって来るって。でも、それに問題でもあるの?」


「プレイヤーはこの地に三日間いると一日こちらに来れません。自分はさらに特殊でおよそ六日来れません。その間この子達はある場所で預かってもらっている為、長い間旅に出る事ができないのです」


「そう言う理由があるのね。でもその条件に合えばパーティーを組めるのかしら」


「そんな条件に合う人いないですよ」


「ここにいるのだけれど、貰ってくれないかしら」


「お、おばさま!」



 うーん。良く話が見えないのだが。どういう事?




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