50 ペグミンとマーメイドと魔王
御輿だな。神輿ではない。
誰か乗っているようだが、御輿には御簾が付いていて中が見えない。御輿を担いでいる人達に足があるって事は人魚族じゃないのか? お供は二十人程いて男女半々。何者だ?
御輿は自分達の前で止まり地面に降ろされた。
お供の一人が御簾を上げると美人ではあるが、年増のおば……バシャーン。アルファが目の前に立ち魔法を日傘で弾いた。
「アルファ……やれば出来る子だったのね」
「勘違いなさらないでくださいませ。単にお嬢さまをお守りしただけでございます」
アルファはツンデレだなぁなんて思ったりもしたが、アルファが絶対零度の眼差しを向けてきたので何も言えない……。
「それにしても、どこの誰だか知らないが、ご大層な挨拶の仕方だな。お里が知れるってもんだ」
「これは失礼した。ヒューマン風情に不躾な目で見られ、我慢ならぬ故な」
「それはそれは、なんともお心のお広い事で。大き過ぎてザルになる程耄碌してるとは。さっさと後進にその席を譲る事をお勧めしますよ」
「「……」」
この場の雰囲気が凍り付いたが、腐れババァに遠慮はいらない。
「クェッー」
「ぺん太……。何故、お前がそこに居る」
良く見れば腐れババァの膝の上にぺん太が居る。この場の雰囲気がぺん太のひと声で少し和む。
「ま、まぁ。ヒューマンなど、どうでも良い。
「さくら、帰るか……」
「そこのメイド。魔王様は
「どこの誰とも知れぬ者に、お会いになられるとお思いでございますか」
「「……」」
もっと言ってやれアルファ。女同士、火花を散らし
「お、お待ちください。この度のご無礼、平に平にご容赦ください」
「えぇーい、爺や無礼なのはあちらでおろう!」
「お控えなさいませ姫様、我らは魔王様にご助力を頂く立場なのですぞ!」
そう、姫なのである……ププッ。種族名がマーメイドプリンセスなのである。年増のマーメイドプリンセス……プププッ。
物凄い殺気が籠った目で自分を睨んでいる。心の声が聞こえたか? それとも表情に出たのだろうか? まあ、良いや。
「
腐れババァ聞こえてるぞ。隣のじーさん頭抱えてるじゃねーか。
深いため息をついた後、腐れババァが輿から出てきて跪ついた。
「
「クェッー」
だから何故そこでお前が鳴く。わけがわからん説明よろ。
アルファにぺん太に事情を聞くように言う。えー、みたいな顔をしたが、さくらのミャの一言で今までが嘘のように真面目な顔でぺん太から事情聴取を始めやがった。
ぺん太が言うには人魚も人間も困っている、何とかしたいが自分には力が無い。なら人魚を説得してさくらの姐さんに、人魚族側から助成を頼めば優しい姐さんなら必ず助けてくれるはず。と言った様だ。
さくらの姐さんって、うちはいつから任侠一家になったのかねぇ。それにぺん太がそんな殊勝な事考えるか?
「ぺん太、ちょっとこっちに来い」
「クェ?」
ぺん太を呼びぺん太の両脇に手を入れ、自分の目線と同じ高さまで持ち上げる。
「いいかぺん太。絶対に俺の目から目を逸らすなよ」
「クェ~」
何故かオロオロし始める。
「釣り」
「……」
「さかな」
「……(ゴクリ)」
「貝」
「……(タラリ)」
「この一件が解決しないと海産物が手に入らなくなるなー」
ぺん太の目が完全に泳いでいる。
「別に自分達には関係ないし、帰ろうかなー」
ぺん太が自分の手からぴょんと飛び、足元で必死に土下座を始めた。まさかペンギンがジャンピング土下座をするとは……どこで覚えた?
「ルーク様。お見事な躾でございます」
いや、躾なんてしてないからね。アルファさん。
食い意地の張ったぺん太は置いといて
「それで、そっちはこちらに何をして欲しいわけ?」
「ヒューマンに用など無い! 我らわ魔王様に用があるのだ」
「だってよさくら。さくらがやる?」
「ミャッ! みゃ~ミャン」
さくらは俺の顔をペロペロしてきた。愛い奴よのう。よし、任された。
「と言う訳で、俺が全権を一任された。問題あるか」
「何を言っておる! 小汚い子猫の戯言など、我らは魔王様に用があると言っとるではないか!」
「はぁ……お前ら後悔するなよ」
隣でアルファが怒りのオーラを撒き散らしている。能ある鷹は爪隠すってな、こんなプリチーなさくらを小汚いなど赦せんな。
さくらを両手に抱え頭上に掲げ
「えぇーい。控え居ろう。こちらにお座すお方をどなたと心得る。恐れ多くも第十三魔王様にあらせられるぞ。(さくらアイドルの秘密解いて)」
「「「!?」」」
「そ、そんなあり得ぬ……」
「ま、まさかそんな事が……なんとした事じゃ」
「だ~れ~が、小汚い子猫だ~と~」
「オホホ……。お、お赦しください……み、皆のもの何をしているのですか。魔王様の御前です控えなさい!」
人魚族は皆土下座。ざまぁ、ミソラせー。
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