47 俺は強くなる!

 さくら達の部屋に戻って来た。


 自分としては港街イーリルに行きたかったのだが、皆さんお腹一杯でお疲れモードに突入しているので諦めた。うさ子とぺん太はベッドにまっしぐら、すぐに丸まって寝てしまった。自分の腕の中で寝ているさくらをアルファに渡し世話を任せる。


 降魔神殿でもやりたい事があったのでま、ぁ良い港街イーリルには明日行こう。



 クリスタルの部屋に来ている。以前クリスタルを拡張した際、新しい機能が増えていたので確認するとモンスター同士の模擬戦闘が可能になっていた。今、実際にスケルトン軍団とアイアンゴーレムを戦わせているが、アイアンゴーレムの無双状態。当たり前か。


 本来の使い道は召喚したモンスターの攻撃スタイルの確認に使う物の様だが、俺の戦闘訓練に使えないかと思いオメガに確認してもらっているところだ。



「調整完了しました。何時でもご利用頂けます」


「了解。で、ほんとに死なないんだよな?」


「はい。間違っても死ぬ様な事はございません。しかし、痛覚を消す事はできませんでした事、ご了承ください」


「マジですか? よ、よし。じゃあ頼む」


「承知しました。相手はアイアンゴーレムで宜しいですね?」


「あぁ」



 一瞬ブラックアウトした後、二十メートル四方の何も無い空間に立っている。さっき見ていた場所だ。


 装備を怪しい人装備に変え武器は鋼の槍を装備する。



「それでは始めます」



 オメガの声と共にアイアンゴーレムが出現する。


 ゴーレムと言えばパワー重視で動きが鈍いのが定番、自分の訓練相手には丁度良いだろう。


 と、思っていた時期は既に遠い記憶。


 取り敢えず、接近して一太刀浴びせようと動いたと同時にアイアンゴーレムもこちらに走ってくる。


 考えてみましょうよ。二メートルもの重巨体が走ってくる姿を。足を一歩前に出すたびにドガッンとプレス機で何かを潰した様な音をたてる。それが自分に向かって走って来る姿を……。貴方、走ってくるダンプカーの真正面に突っ込んで行くバカいますか? 僕は死んでしまいます!


 無理っと判断して進路を修正し避ける。自分の横すれすれを何かが横切った。振り返りアイアンゴーレムを見ればラリアットの様な態勢になっている。そのまま自分を通りすぎたゴーレムは向きを変え再びこちらに向け動きだす。


 俺にどうしろと! がっぷりと四つに組めとでもいうのか? 無理に決まってる。正攻法でいくしかない……と思う。


 サイドに回り込んで槍を一突き。カチーンという音が響いた後ゴーレムの右腕が飛んでくる。誰だ! ゴーレムの動きは鈍いって言った奴。


 ブォーンと目の前ギリギリをゴーレムの拳が通りすぎる。何とか躱した……ほんとにぎっりぎっりで。想像以上に早い動きだ。何とか健脚スキルで躱しているが、このゴーレム段々、フェイントを織り交ぜて攻撃して来る様になった。学習能力まであるのかよ……。せめてもの救いが上半身だけの攻撃で下半身を使ったキック等を使ってこない事ぐらい。


 ゴーレムが左腕を動かす素振りを見せたので右側に回り込もうとした時、ゴーレムは左腕を振り上げた状態から急制動し右腕のフックに変えてきた。人間じゃ絶対にできない動きだぞ!


 ぐっ、不味い! フェイントに見事に引っ掛かり、躱すことができないと悟りシールドに体重を掛けて受ける。


 ドッガーン



「ぐっは……」



 あ~れ~と壁まで吹っ飛んだ。あ~れ~とか言ってますが激痛だ。シールドで受けたにもかかわらずHPの半分が無くなっている。気付けば、腕につけてたシールドが粉々に砕け光になって消えていった。



「オ、オメガ! スットプ!」


「どうかなされましたか」


「シールドが消えたんだが」


「その様でございますね」


「……」


「これって、復活するんだよな」


「さぁ」


「……一度そっちに戻って良いかな」



 無い……ストレージを探したが無い。愛用の試作シールド一号くんはアイアンゴーレムくんにより、息の根を止められ天に召された様だ。ご愁傷さま。


 補てんが効くのは自分のHPだけなのか? オメガもわからないらしい。という事は防具無しで戦えと? アイアンゴーレムの一発喰らったら終わりでしょうが!


 その後アイアンゴーレムと十戦したが全敗だった。東方不敗どころか東方全敗だな。死なないとはいえ痛覚は二十パーセントある。死ぬ一撃の二十パーセント……一瞬、危ない扉が開くかと思った。


 防御しないで躱すのは良い訓練にはなった。でも、それ以外がね……槍での攻撃はカス、魔法攻撃も微々たるもの。そもそも何故、スキルレベルが上がってるのにアーツを覚えない。大体予想はつく、ヒューマンだからだろう。このゲームの製作陣はどんだけヒューマン嫌いなのだろうか。泣けてくる。魔王ラヴィーちゃんのバカヤロウ!


 取り敢えず、訓練は続けるが相手を変えようと思う。


 アイアンゴーレムは鉄だけに頭が硬く融通がきかない。多少なりとも融通がきくオメガに相手を頼んだ。



「わかってると思うけど、本気でやるなよ。こっちに合わせてくれよな」


「承知しました。生殺しにすれば宜しいのですね」


「生殺しって……ただ生殺しにしたら訓練にならないからな!」


「生かさず殺さずでございますね。お任せください」



 それ同じ意味だからね。オメガくん。


 また変な扉が開かないように注意が必要だ。


 相手間違えたかな……物凄く不安。



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