25 クエスト達成と契約の延長

 天の声インフォが聞こえた。



『【英霊の眠る墓所】のボスを討伐しました』



「英霊の眠る墓所?」


「運営からメール来てたよね」


「死者の都か?」


「一昨日、このボス他をしたのルークじゃね?」


「このボスー、ソロで倒したのー」


「本日は晴天なり」



 左右を顧みて他を言う。知らんがな。


 辺りからアンデットの気配が完全に消えている。これなら安心だろう。


 コリンさんの所に行きますか。途中、口を大きく開けたマクモンさんを引っ張って行く。



「お前、強いんだな……」



 いやーそれ程でもないよー。もっと褒めても構わないよ?




 コリンさんのいる木に近づくと、どうやら話は上手く進んだ様だ。コリンさんもヨゼフさんも良い笑顔をしている。



「コリン、そろそろお別れの時間だ」


「ヨゼフ、私は幸せでしたよ。それにもうすぐそちらに行きます」


「コリン、ゆっくり来ると良い。焦る必要ないんだからね」


「ヨゼフ……はい……」



 えぇー話やなぁ。おっちゃん年のせいか涙腺が緩くてなぁ、こういうの敵わんわぁ。


 ヨゼフさんが俺達の前に来る。



「君たちのお陰でコリンと心置きなく話す事ができた。感謝しているよ。これはお礼だ受け取って欲しい」



 ヨゼフさんの体から全員に光の玉が漂ってきて、すぅっと皆の体に吸い込まれていく。



「君には本当に感謝している。正直な所駄目だと思っていたよ。この腕輪を礼として受け取ってくれないかい? この墓場で知り合った高名な司祭さまが生前身につけていた物だけど、ちゃんと了解は取ってるから安心して良いよ」



 そいう事なら遠慮なく頂こう。


 周りに聞こえない様にヨゼフに話しかける。



「貴方を殺した人って誰ですか?」



 ヨゼフさんは驚いた顔をした後、苦笑いを浮かべた。



「もう終わった事だよ」



 と言って天に昇って行った……。



『テッテテー! 進化条件をクリアしましたのでJob【祓魔師】が進化します』



 天の声インフォ邪魔です……良い場面なのに。


 さて皆さん、思い残す事はないですか? 無いなら街に帰りましう。もう夜中の三時を過ぎてますよ。帰って寝ましょう。



 町に戻ってからコリンさんに、お礼がしたいから後で来てほしいと何度も頭を下げられたので行く約束を交わした。


【優雅高妙】のメンバーとは一度、ログアウトした後、会う約束をしてある。




 現実世界で用事を済ませてログインする。


 コリンさんとの約束を果たす為、コリンさんの家に向かった。


 この前と同じように紅茶をいれてくれ、うさ子の為に野菜を練りこんだクッキーまで用意して迎えてくれた。うさ子は野菜入りクッキーを一心不乱に食べてる、よほど気にいった様だ。


 コリンさんはしばしの間お茶と歓談を楽しんだ後、テーブルに指輪を二つ置いた。一つはヨゼフさんから預かった物、もう一つは銀色の指輪、表裏にびっしり幾何学模様が刻み込まれている。


 コリンさんはヨゼフさんの指輪を譲って欲しいと言ってきた。もともとそれはヨゼフさんからコリンさんに渡されたものなので、自分は貰うつもりは無いと言う。


 もう一つの指輪は今回のお礼の品だそうだ。


 コリンさんの祖父がハンターで魔法を使っていたらしく、その時に使っていた物らしい。コリンさんの子供に魔法が使える子供が生まれたら渡す様に言われてたみたいだ。



「そんな大事な物貰えません」


「良いのよ。子供達に魔法の才能は無かったから。孫達もあんな風だしね」



 成程、お孫さんが何人いるか知らないが、脳きn……マクモンさんみたいなクマなのだろう。


 指輪を鑑定してみる。


 魔倉の指輪 指輪にMPを貯めておく事ができ自由に使う事が出来る 最大400まで。


 結構凄いアイテムだ。


 流石に貰えないと言うと、たまにうさ子を連れて遊びに来て欲しい事が追加され、無理やり受け取らされてしまった。


 コリンさん、帰りにはうさ子に大量に野菜入りクッキーを渡していた。余程うさ子を気に入ったらしいな。




【優雅高妙】のメンバーとの約束の時間がきていたので、待ち合わせ場所の目の前の宿に向かった。もちろん、穴熊親父の山小屋だ。


 待ち合わせ場所の食堂に行くと既にメンバーが揃っている。



「昨日はお疲れでした」



 取り敢えず、改めて自己紹介をし、昨日の戦闘でLv36になった事も言っておいた。



「『infinity world』初めて何日だっけ?」


「現実世界で二日ってとこ?」


「……」



 濃い二日だった。今までの人生の中でも五本の指に入る濃さだった。



「取り敢えず依頼の報酬を渡すね」



 ひなさんに初級錬金術の本、俺には使う予定が無い。以前話をした時、錬金術スキルが欲しいと言ってたので丁度良いかなと思った。


 コッコにはPK戦で手に入れた影走りのダガー。相手に投げると、何故か相手の影から飛び出す。影が無いとただのダガー。浪漫武器だな。


 まりゅりゅにスキル【テイム】。みなまで言うな。


 プルミには堕天の杖。俺がボス戦で使っていた杖。後でもっと良い杖がストレージにあるのを見つけたので、必要なくなったから。


 ダイチにはどこで手に入れたかわからない漆黒の盾。性能はピカイチでも重くでかい。本職向きなのでいらない。昨日のボスが持ってた盾に似ているが気にしない。


 皆さんお口が開いたままですよ。



「こんなの貰えないよー」


「まあ、聞いて下さい。契約を延長したいと思います」


「契約の延長?」


「はい。迷宮【死者の都】を攻略しに行きませんか?」




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