24 ルークです。ルークです。ルークです……

 このVRゲームの中にも四季がある。今は初夏になりつつあり、日中は少し暑いくらいなのだが、さすがに夜は肌寒い。


 皆でコリンさんを迎えに行く。


 コリンさんにはマクモンさんがどこからか見つけてきた、背負子にのってもらい移動する予定だ。


 コリンさんの家に着き、寒くない様に毛布にくるまってもらい背負子にのってもらい落ちないように固定する。


 門に到着すると当然だけど衛兵さんが近づいてきた。



「お前! ちゃんと無事に帰って来たんだな。死なれてたら寝覚めが悪いと思っていたぞ!」



 どうやらこの衛兵さんは自分を知ってるらしい。なので、一昨日の夜のこと聞いてみた。泥酔状態の自分が衛兵さん警告を振り切り外に出ていったと話す。皆さんそのジト目やめてちょうだい。


 今日はマクモンさんがいるし、大勢なのですんなり通してくれた。


 門の外は真っ暗。今日は少し曇っているので、月も星も出ていない。


 ちなみに宿からずっと自分が魔法(光)のライトという呪文を使っている。拳大の光る球体が頭上に浮かんでいて、半径五メートルくらいを照らしている。


 非常に目立つので、モンスターに襲われても対処できるように前に自分とダイチ、真ん中にマクモンさんとコリンさん、後ろが女性陣という陣形を取った。


 うさ子はさっきから自分の脚に引っ付いていて非常に歩き難い。


 壁伝いに少し歩いているとダイチが何かの反応に気付いた。



「前から誰かくるぞ! 注意しろ!」



 流石にトッププレイヤー、自分の気配察知より早く気付いた。


 確かに前方から多数の気配がする。が、何かがおかしい。スカスカな様な、ざわっとする様な……敵意は感じ無いが気分は良くないみたいな?


 そして辺りが急に霧で覆われる。壁沿いなので迷うことはないから安心だが急に霧って怪しい。


 その霧の向こうから大勢の兵士らしき人達が近づいて来る。先頭にいた汚れてはいるが他の兵士より立派な鎧を着て、頭と右目に包帯を巻いた人が話しかけてくる。



「また会ったな、力を求める事は悪い事ではないが、こちら側にこないように気を付けろ……進む事も戻る事もままならん……」



 と言い残し去って行く。


 他の兵士達を良く見れば、手足のない人、はらわたがはみ出ちゃってる人、しまいには頭の無い人までいた……ぅれいだね。言わないヨ~。


 誰一人言葉を発しず、ただ過ぎ去るのを待つのみ。コリンさんだけがじっと彼らを見つめていたのが怪訝な感じがした。


 彼らが去り霧が晴れると皆座りこむ。マクモンさん、ちびってない? 顔色悪いよ。他の全員もなんだけどね。



「あれって、なんだったのよー」


「ちょっとちびったかも……」


「うさ子ちゃんモフモフ成分補給させてー」


「……」



 ぶれない奴もいれば、魂が抜けかかった人もいる。



「あれは英霊か?」


「おそらく。話しかけてきた人に見覚えがあります。私が小さい頃の街の騎士団の団長だった方だったと思います」



 マクモンさんとコリンさんは別として、これはゲームの中だぞ、遊園地のお化け屋敷と同じ。そこまで怖がることですか? 特にダイチ、貴方男でしょうに。


 さあ、行きますよ。目的を忘れてませんか?


 何とか皆を引っ張って目的地に到着した。これはマイナス査定だね。報酬に反映させるかな。


 墓地にはそれほど多くはないが、アンデット達が徘徊している。


 うーん? これからどうすれば良いのだ?



「作戦会議をおこないまーす。ドンドン、パフパフ」


「ルークはポジティブだね……」



 ダイチ、なんか疲れてるね。一本、逝っとく? ポーションをあげよう。


 作戦は【優雅高妙】の皆さんがアンデットをけん制してる間に自分とマクモンさんとでヨゼフの墓を探す。コリンさんはうさ子と木の下で待機。


 名付けて


『アンデット倒すのと、たった一つのお墓さがすのどっちが楽? 作戦』


 では作戦開始であります。


 なんですか? マクモンさんその目は貴方のおばあさんの依頼ですよ? 辛抱する木に金が生るってね。孫なんだから粉骨砕身の想いで働きなさい。




 ハァ……一時間経過した。十分の一も終わってない。面倒くさくなってきた。



「ヨゼフさーん! 出てこいや!」


「……どうも」



 後ろに半透明なヨゼフさんらしき人がいましたよ……。って、呼んだら出て来るんかい!



「貴方がヨゼフさん? 初めまして。いやー苦労しましたよ、本当に」


「初めてじゃないんだけどね……」



 聴こえない、聴こえない。昨日の事は何にも覚えてなーい。



「それはさておき、コリンさんご本人を連れてきました」


「本当かい!」


「一つ言っておくことがあります」


「なんだい?」


「貴方が亡くなってから五十年が過ぎています」


「……そうか」



 向こうの木の下にいる事を伝え、後は任せた。



 Jobを祓魔師に、装備を怪しい人装備に変更して、武器だけを堕天の杖というどこで手に入れたか知らないがINT+5、魔法攻撃ダメージ増(微)という杖を装備する。


 マクモンさんに作戦終了を伝えに行く。



「うわっ! てめえー誰だ!」


「ルークです……」



 幻聴でしょうか? もの悲しい音楽が聞こえます……。


 今度は【優雅高妙】の皆さんの手伝いに向かう。



「「「 誰だ! 」」」


「ルークです……ルークです……ルークなんです……」



 誰も気付かないとです。どこからともなく聞こえてくる……ルークです。ルークです。ルークです……って。



 うりゃあー、憂さ晴らしの蹂躙だ。かかってこいやぁ!


 ライトエリア! ライトバレット! ゾンビは浄化!



「ワッハッハ! 貧弱 貧弱ゥ」



 ん? デジャヴュを感じる?



 憂さ晴らしという名の蹂躙を続けていたら〈ガシャドクロ Boss Lv30〉というのが小物を引き連れ出てきた。そのフォルムにどこか哀愁と懐かしさを感じるのは何故? どこかでお会いしました?



「ボスだ! 陣形を組め!」



【優雅高妙】の皆さんはダイチがタンカー、ひなさんがアタッカー、コッコが遊撃、残り二人は後衛に別れた。


 自分は? 連携なんてできないので気にせず攻撃。


 ダイチがヘイト上昇アーツを使っている様だが、俺の攻撃の方がダイチ以上にヘイトを稼いでいるせいか、敵の攻撃が全て自分に集中している。と言うか、なんか狙われてねぇ、俺?


 何とか健脚のお陰で大きなダメージは受けてないが、度々、プルミからヒールが掛けられていないとやばいかも。


 俺が何をしたて言うのだ? そんなに俺が憎いのかよ!


 そんな状況なので、ダイチは防御をやめて攻撃に移っている。雑魚も既に倒され残すはボスのみだが、皆様のおかげで既に瀕死。数分もせず、討伐された。


 いったい、あのヘイトは何だったんだ……。



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