第51話 新しい銃
「小僧、なぜ貴様がここにいる!?」
「な、なぜって……!」
「どこからか紛れこんだのかッ! ここは津島の顔役、大橋清兵衛さまのお屋敷であるぞ! うぬのような小童が遊ぶところではないぞッ!!」
なまず屋は、ギラギラした目つきで睨んできた。
だが。
「……あー、なまず屋さん、なまず屋さん」
そんな、咆えまくるなまず屋の肩を。
ぽんぽんと、大橋さんが叩いた。
「よいのですよ、彼は。わたくしの客人でございますので」
「な、なんですと!?」
なまず屋は、目を剥いた。
「ば、馬鹿な。あ、あの大樹村のガキが、大橋さまの、客人……!?」
「そうです。彼の名前は山田弥五郎」
「山田、弥五郎……名前まで覚えられて……。わ、儂でさえ、大橋さまに名前を覚えてもらうのに何年もかかったのに……」
なまず屋は、ショックを受けている。
そんななまず屋の衝撃顔などどこ吹く風で、大橋さんは続ける。
「というわけでなまず屋さん。わたくしの客人をガキ呼ばわりは感心しませんな」
「……ぐう」
なまず屋は、大橋さんにたしなめられて口をつぐんだ。
ぐうの音は出たようだが。
大橋さんは笑顔を俺へと向ける。
と、そこで、藤吉郎さんがいることに気付いたらしい。
「おお、藤吉。我が屋敷になにか用かね」
「あ、ああ、そうそう。実は弥五郎に、また武器を作ってもらおうと思いましてなあ。連装銃よりも、もっと使いやすい銃を。……そうですなあ、 例えるなら、おなごや童でも使えるような銃がいいと思うております」
「ふうむ。しかしそんな銃では、威力も低いのではないか?」
「そこは弥五郎。……のう? 使いやすくて、かつ強力な銃など、ないかの?」
「ず、ずいぶんと要求が高いですね」
「しかしそんな銃を織田家と津島衆が持てば、戦力はきっと増強されるぞ!」
「それはそうだろうが……藤吉、相変わらず大言が好きじゃのう」
大橋さんと藤吉郎さんが言葉を交わす。
と、そのときふいに、なまず屋が大笑いした。
「わっはっは、織田家の方はご冗談がうまい。そんな強力な銃を、そんな子供に作れるはずがない!」
なまず屋はニタニタ笑った。……嫌な笑い方だ。
だからではないが、俺は――藤吉郎さんに目を向けて宣言した。
「藤吉郎さん。新しい銃を作るお仕事、お引き受けします。……作ってみせますよ、軽くて、強くて、使いやすい銃を」
「馬鹿な、できるはずがなかろう! 法螺もほどほどにせよ!」
なまず屋は、鼻息を出しながら叫んできたが――
俺はまったく動じない。
「できるかどうか、まあ見ていてください」
「……できなかったときは、どうするつもりだ?」
「どうとでも、落とし前をつけてください」
「こ、小僧……!」
なまず屋は、憤慨した。
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