case1-2

三井が言うには、夢見月様は先ほどの不味い料理の元となった夢を食べてしまったため、普段よりだいぶスケール感が小さくなってしまっているそうです。食あたりみたいなものらしい…。


夢見月様は昨夜いつものように人間の悪夢を食べるため、夜の空で少し長い鼻で円を描いたりブンブン振ったり、くるくる回ったりふわふわしたりしながら助けの声を待っていたのです。すると、泣きながら呼ぶ声が聞こえてまいりました。それは小さな女の子で、何度も何度も『バクさん悪い夢を食べてください』と。


「その夢、食べてやろう」


「バクさん!?」


「全て忘れて眠れ」


夢見月様はその白く少し鼻を女の子の額に近づけると、すぅーーっと夢を吸い込みました。女の子のは安心したように眠りに落ち、すーすー寝息をたてました。


「ん???」

夢見月様の長い鼻腔を通っていくその女の子の夢は、恐怖でも、怒りでもなく、『幸せ』そのものでした。

「んんんーーー」

凄まじい違和感が鼻と口、胃までも満たしていきました。


この場で吐き戻すべきか??しかし、この子が泣いて私を呼ぶほどに見たくない夢だったのだぞ?望み通り…食えるのか?一旦、三井の店に行ってから…

「うっぷ!」

耐えろ!俺!


と言うわけで、三井の店まで辿り着いたのですけれども、その『幸せ』な絵を食べ、『幸せ』を吐き出すとあれこれ説明出来る体力がなくなってしまい、厨房横の応接間で眠ってしまったのでした。『幸せ』な夢を食す事は悪夢を食べるバクにとって、相当な負担になる事が証明された瞬間でした。

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