どすこい異世界生活

稽古場の窓から中世を思わせるような石造りの街並みが見える

『なにが起こったんだ・・・』


いつもより早く朝稽古に来ていた力士3人は

八戸部屋(稽古場)ごと異世界に移動してしまったようだ



外に出ると

耳の長い美しい女性が、中世の鎧を着て歩いている


並ぶ商店

店主の話す言葉は全く分からない



稽古場の周りを一周して

部屋に戻ってきた


力士の一人<月の海>は落ち込んだ

『どうしよう、とんでもない事になってる』


もう一人の力士、<春の富士>がそれを慰めた

『部屋の片隅で落ち込んでいる場合じゃないですよ』


三人目の力士、<豪快道>が言った

『みろよ、昼飯を買ってきたぞ』

変な魚と見た事のない野菜を買ってきた


お金はどうした・・・?

稽古場の神棚一式を質に入ていた

鍋も、コンロもないのに


おっちょこちょいだが、今一番頼りになりそうだ

豪快道はつづけていった

『部屋に閉じ籠ってないで出て来いよ』



三人は八戸部屋をでた

回しに、まげ

彼らのスタイルは、異世界の雰囲気にどこか合っていた



その時

『キャー』

女性の叫び声が聞こえた


どうやらひったくりがあったようだ

どこの世界でも冒頭に起こるようだ



ひったくりに立ちふさがる三人

立ち止まるひったくり



月の海は素早く上手を取って

そのまま地面にたたきつけた

力だけは横綱をも凌ぐと言われる月の海

得意技は上手投げ



ひったくりは、

女性から奪った赤い宝石を置いて逃げ去った


女性は力士にお礼を言った

言葉は分からないものの3人にはよく伝わった


そして、一連の様子に

商店の店主、周りの通行人も彼らに拍手を送った

3人からは満面の笑みがこぼれる



しかし、この出来事がのちのち王国を揺るがす大事件に発展することを

今の彼らには知る由もなかった



ーー終わりーー

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