第6話
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ラディが教室から去った後皆がそわそわしている中、アリシアは1人必死に全員の情報を見ていた。
「…アリシアさんって結構研究熱心なんだね。各人のプロフィールをそこまで刮目してるなんて。」
「ん?違うわよ。あのゴミ虫を見つけ出して裁くためよ。」
目を輝かせるアリシアの言葉に入学式前のあの出来事が頭をよぎる。成る程、わざわざ調べ上げて叩きにいくのか。余程頭にきたと見える。
「それにしてもどれだけゴミなの。見つからないわ…あ、あった。えーっと…んん?プッ…アッハッハッ‼︎ウッソでしょ⁉︎ナニコレ‼︎」
漸く見つけ出したアリシアだが、彼のプロフィールを見た瞬間腹を抱えて笑い始めた。そんなに面白いのかと彼女の端末を覗き見るとそこには
『
・武力 B
・体力 B
・知力 C
・魔力 測定不能(想定魔力 -2000)
・運 E
総合評価 F--
ランク280位』
学年最下位と書かれたランクと青色で描かれている五角形のグラフの魔力の部分だけ赤色で突出している形になっていた。
「なんなのこの想定魔力‼︎-なんて初めて見たわっ。お腹痛い…フフッ‼︎」
「これは…。」
想定魔力値を指差しお腹を抱えて笑うアリシアに対し環は何故か底知れぬ恐怖を抱いた。その正体が分からず喉に何か異物が引っかかっている感覚でいると横から虎娘がじっと環を見つめながら
「荒魂も中々凄い面白い形してるヨ。これで学年首席はえげつない魔力ネ。」
と、環のプロフィールを指差してにっこりと笑った。
「えーっと何々?
『荒魂環
・武力F
・体力F
・知力A
・魔力測定不能(想定魔力14000)
・運F
総合評価S+++
ランク1位』
…環。貴方の魔力おかしくないかしら。歴代最高位魔術師の7倍はあるんだけど。」
アリシアが今度は引きつった表情で環を見つめる。それもそのはず。最高の魔術師と名高かったエレインですら魔力5000。それでも他の最高位魔術師の2.5倍あり、魔術の天才として騒がれていた。だが、環はそれを約3倍上回る数値を叩き出している。それこそ、武術関連で必要な能力値は低いどころか0となっているがそんなものなど気にもならない圧倒的な魔力特化のステータスをしていた。
「あはは…。それもとある理由があってね。そのうち分かるはずだよ。それより良いの?彼との決闘。帰ってしまったらどうしようもないよ?」
「っ‼︎それもそうね‼︎今すぐ行くわ‼︎」
話を流しつつ教室を飛び出したアリシアを見送り、自分は帰る準備を整え始める。すると、凱世と虎娘が先程話題に上がっていた掛朝燕のプロフィールを凝視しつつ環に近づいてきた。
「荒魂。お前、この名前と魔力値。何か思い当たる節はあるのか?」
「…いや、変な違和感はあるけど思い当たる節は…大道寺君は?」
「俺も違和感を感じてる位だ。それと俺の事は凱世でいい。愚弟と同じ呼び名はあまり好かない。」
「んー。私どこかでこのステータス見た事ある。彼の動き見たら思い出せるかもネ。良かったら見に行かない?」
虎娘の提案に一瞬思案した2人は賛同し、アリシアの後を追いかけることにした。
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無事アリシアを見つけ出した環達は困惑したままの掛朝達と共に第2修練場へと足を運ぶ。選手控え室へと向かう彼を見送り観客席へと向かった3人は2人がよく見える位置に座りながら試合開始を待つ事にした。
「『アリシア・セラフィ
・武力B
・体力A
・知力C+
・魔力A++(想定魔力1200)
・運B
総合評価A+』か。
流石の能力値だ。」
「プロフィール通りならアリシアの圧勝となる。果たしてどうなるものか。」
固唾を飲んで見守る3人が見つめる中いよいよ試合が開始される。
「『セラフィレイ‼︎』」
「⁉︎ッ…詠唱破棄だって…っ‼︎」
開幕速攻を仕掛けたのはアリシア。距離が開いているのをいい事に先程自己紹介で放った一撃よりは小さいが最速の一撃を掛朝に向かい撃ちつける。驚愕した彼は何とか回避するも肩を掠めたのかその場で回転し地面に片膝をついた。
「まだまだこんなものじゃないわッ‼︎
大天使ルシフェルの名をもって命ずる。幾条の光よ。迷わぬ指向性をもって汝を貫け。穿て最速の一撃。『バーストセラフ』‼︎」
アリシアの背から生えた羽から何本もの光の帯が伸び、空中で屈折して掛朝を襲う。光の帯は一度放たれただけでは止まらず、地面を抉るたびに新たな光が生まれ逃げ惑う彼を追尾していく。だが、掛朝は間一髪のところで全て回避しそのままアリシアへと一直線に走りこんだ。
「ほう…だが、甘いな。」
凱世が感心する中真正面から走りこむ掛朝に対し、ニヤリと口元を釣り上げたアリシアは胸元で小さく十字架を切る。
「大天使ルシフェルの名をもって命ずる。懺悔せよ。汝の罪を赦さん。神の威光の下全てを述べるがいい。全てを赦す慈悲の十字架『ジャスティスクロス』‼︎」
瞬間、目を開く事が叶わない程莫大な光が一直線に走り、真正面から向かってくる掛朝を丸ごと包みこんだ。そのまま耳を劈く爆発音を響かせた光の帯は空へと上がり、第2修練場の天井に巨大な十字架を刻んだ。
「あらら。これは決まったか?」
「否。まだネ…ッ⁉︎」
流石に生き延びるだけでも難しい状況に見切りをつけた環だが、空を見上げた虎娘は驚愕しながら指を指す。
「光が…光が食べられてるヨ‼︎」
「なっ…これはッ⁉︎」
指差す方向を見ると掛朝の手が漆黒を帯びており、アリシアの放った『ジャスティスクロス』を吸収しながらその大きさをどんどん肥大させ、遂には彼の身は漆黒のオーラで隠される程となっていた。
「…な、何なのよそれッ⁉︎」
「ぐっ…ッ‼︎これが…掛朝流の対魔式奥義『
汗をかきながら『ジャスティスクロス』の光帯を全て取り込んだ掛朝は、その力を利用して本来なら無いはずの魔力を爆発させる。その姿に環は先日行われたLoMの頂上決戦で見た魔喰牙の武術が脳裏によぎった。だが、それだけではない。再び驚愕した虎娘の言葉で環は度肝を抜かれた。
「なっ…掛朝の魔力が-2000から-800に⁉︎」
「はぁ⁈まだマイナスとは言えそんな急に伸びる訳が…ッ⁉︎」
言いかけて瞬時に環は気付いた。もしや、このステータス上の-値は吸収許容範囲かもしくは本来の力を出すまでに必要な魔力数なのではないか。前者ならそれでも最高位の魔術師の魔術を防げる。もし、後者ならば最高位の魔術を受けてようやくスタートラインになる。どちらにせよ力を出すまでに相当な負荷が必要な超スロースターターではあるもののスタートしてしまえば途轍もない力を出すのではないか。
「これはとんでもない隠し玉だな…。どうなる?この先…俺らはとんでもない化け物と戦うのかもしれない。」
同様の答えを導き出したらしい凱世は冷や汗を拭いながら爆音を立てて地に舞い降りた掛朝を見る。その問いに対し答えを出せず唖然としたままの環は、無傷のアリシアよりも優位に立つ傷だらけの掛朝を凝視し、息を飲むしか出来なかった。
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