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「うん、そっか、うん、うん、よかった。じゃぁ、うん、またね。うん、うん、おやすみ」
スマホを耳から離した蘭子さんが、ほっと息を吐く。彼女が話しかけるまで口を噤む。
「マスター、ありがとう」
「はい」
「浩太郎、彼女いなかった」
「はいっ」
「よかった、安心した、もう、もう、もう」
ふぁぁぁぁ、なんてらしくない声を漏らしてカウンターに突っ伏した。
お節介だったと自分でも知っている。でも、蘭子さんには確かめて欲しかった。あんなに一途に浩太郎さんを思っている蘭子さんには。
もちろん、賭けだったけど。でも、もし本当に彼女が居たら、きっと一番に蘭子さんに紹介していただろうから。浩太郎さんとはそう言う人だ。会ったことないけど。
「ただの後輩だって言ってた。よかった、まだ可能性はあるのね」
へにゃり、と気の抜けた蘭子さんに一杯サービス。
「お疲れ様でした」
「え?」
「アイリッシュ・アフタヌーンです。よく頑張りましたね」
「・・・ふふ、ありがと!」
これでこそ、蘭子さんだ。
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