第13話 デュラハン退治中なう
「中は結構しっかりした作りなのね」
あの後、なぜか門番の魔族達に案内されるように廃墟の中に入った私達だったが、中に入ってしばらく、通路をドンドンを奥に進んでいた。
ここまで全くと言っていいほど魔物や魔族とも遭遇していない。
噂では総勢千人を超える精鋭がいるって話だったんだけど、どういうことだろか?
ここ本当にデュラハンの根城なの?
「なんか……順調すぎない」
あまりにうまく事が運んでいることに不安を感じた私がそう呟くと、隣にいたオーリが何やら思案するように頷く。
「まあ、確かにあんまり順調すぎるのも問題だよね。ここら辺でちょっと魔物との戦闘もしておきたいところだよね」
とか、そんなことを呟くと次の瞬間、オーリがいきなり大声で通路の向こうへ向かって叫び出す。
「おーい! 魔物達ー! 勇者が攻めてきたぞー! ここらで軽く戦闘の一つでもやっておかないかー!」
「ちょ!? ア、アンタ何言ってんのー!?」
いきなりそんなとんでもない事を叫びだしたオーリの首を振るが、何故だか彼は「いやー、大丈夫大丈夫。僕と七海ちゃんがいれば問題ないよー」とかほざいていた。
何が問題ないものかー! 私はレベル1だって言ってるだろうー!
とか、そんなことを突っ込んでいる間に通路の向こう側からいかに屈強な魔族の戦士らしき人物が数人現れる。
身長はどれも二メートルを超えて、持ってる武器も巨大な大剣だったり、ハンマーだったりで、洒落になってない。
しかし、隣にいるオーリやイブリスは問題ないとばかりに早速武器を構えて、対峙し出す。
「よし、じゃあ周りの雑魚は僕達が引き受けるから七海ちゃんは中央のリーダーを任せるよ!」
はい!? ちょ、何言ってんのこの人!?
「まあ、七海様なら問題ありませんので」
とかイブリスまで無茶苦茶な事を言い出す。っておいこらー! アンタ、私の護衛じゃなかったのー!?
気づくと私の目の前にはいかにも歴戦という風貌の魔族の戦士が巨大な剣を二本構えて私と対峙していた。
「…………」
あ、アカン、これ完全に詰んでる。
いかつい形相で私を睨んでいるその魔族は明らかに私が相手してはいけない相手だ。
例えるならスライムとドラゴンくらいの開きがあるんだけど。
そう思ってあまりの恐ろしさにビビって動けなくなる私であったが、そんな私を見て相手が同情したのか思わぬ提案をしてきた。
「……どうやらぬしと儂では力の差がありすぎるようだ。どれ、まずはぬしの一撃を儂に当ててみせよ。それから勝負を開始しよう」
そう言って目の前の相手は両手の剣を下ろして、無防備な姿を私に晒す。
い、いや、一太刀浴びせろとか、そんなのしても絶対に弾き返されるのがオチなんですが……。
そんなことを思いつつも、なぜか目の前の相手はしきりに「早く打ち込んでこいー!」と急かすものだから、私は仕方なく腰に差していた剣を取り出す。
と、とりあえず無駄な抵抗だけはしておこうと思い、私は精一杯の掛け声と共に持っていた剣を目の前の魔族に放つ。
「や、やあー!!」
ぽてちん。
自分でもわかるくらいに腰の入ってない一撃で、おまけに足をくじいたために剣は魔族の肩に当たると逆に弾き返されてしまった。
予想通りの展開に思わず私はそのまま尻餅をつく。
続く相手からの反撃に対し、思わず恐怖で目を瞑る私であったが――
「……ぐ、ぐああああああああああああ!!!」
はっ?
しかし、次に聞こえたのはそんなどこかぎこちない悲鳴であった。
それに思わず目を開けると、そこには先程の魔族が私の剣が当たったと思しき場所を抑えながら苦しんでる姿があった。
「こ、これほどの一撃を放つ勇者がい、いたとはー!! や、やられたあああああああああ!!!」
そんなすごく棒読みなセリフのまま魔族は後ろに大の字で倒れる。
……え、えーと。なにこれ?
どう見ても今の致命傷どころかかすり傷にもなってないよね?
どころか明らかにわざとらしく倒れた風にしか見えないんだけど。
そんなことを思っていると、周りでは同じく魔族の集団を倒したオーリとイブリスが近づいてくる。
「やったじゃないか! さすが、七海ちゃんだね! センスあるよ!」
「お見事でした。これならデュラハン退治も楽勝ですね」
そう言って私の事を全力で褒める二人だが、
「……へぇー、そうだね」
この時点から私の二人(主にオーリ)を見る目はどこか冷たい、達観した視線へと変化しつつあった。
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