第12話 異世界にて組む初めてのパーティ。ぼ、冒険してる感じがする…!

「へえー、なるほど。七海ちゃんは勇者で、それでデュラハン退治に行ってるんだね」


「ま、まあ、半ば強制的に請けさせられた依頼なんですけど……」


 あれから私はオーリと名乗る少年と共にデュラハンがいる廃墟に向かっていた。

 そこへ向かう途中、オーリがなぜ私がこの依頼を請けたのか、その経緯を問いかけてきて、隠す理由もなかった私は自分が勇者になった経緯も含めて、これまでのことを話した。


「いや、でも、まさか魔王を素手で殴る女の子がいたなんてね。それは確かに救世主と呼ばれても仕方ないよ」


「で、ですかねー」


 私のこれまでの経緯を爽やかに笑いながら受け止めるオーリ。

 彼は私が勇者だと知っても、その態度が変わることなく、むしろ自然体で接してくれた。

 今まで街の人達が必要以上に私を持ち上げたり、ヨイショしてくるものだから、こんな風に自然体に接してくれる人は初めてであった。


「まあ、なんにしてもオレも七海ちゃんのデュラハン退治に協力するから、いつでも頼ってくれていいよ」


「は、はい! ありがとうございます!」


 そう言って胸を力強く叩くオーリを私は頼もしく思えた。

 不思議と私はこのオーリという人と始めて会った感じがしなかった。そのためか彼とはすぐに打ち解けられた。

 なお、すぐ後ろにはイブリスがつかず離れずついて来ており、彼女も戦闘の際は私をサポートしてくれるとの事なので、そのあたりは信頼している。


「……っと、どうやら着いたみたいだね」


 そんなことを思っている内に、オーリの声に目を向けると、目的の廃墟へとたどり着ついていた。

 そこは外観が朽ちて、一部崩れかかっているものの、元はかなり巨大な神殿だったようで入口の門は強固な守りとして存在していた。

 そんな門の前に数人の魔族らしき人物達がしきりに見張りと警戒を行っていた。

 遠目からはよく分からないが、レベル1の私から見ても、かなり強そうな雰囲気の魔族だった。

 というかまず持ってる武器や防具がすでにやばい。

 うん、あんな巨大な斧を振り回されたら、私は即座にあの世逝きだ。

 やっぱ、これ無理っぽいなー。

 入口だけ見て、警備が厳重すぎたので諦めましたと言って街に戻ろうかと思った瞬間、私の隣にいたオーリがそのままおもむろに廃墟の方へと近づいていった。


「え、ちょ、ちょ!!」


 思わずオーリの背中に慌てて声を掛けるものの、オーリは「大丈夫、任せておいてよ」と爽やかな笑みを浮かべて、そのまま廃墟の入口へと向かった。


「ほ、本当に大丈夫なの、あれ……!?」


 と思わず心配になり、隣にいるイブリスに問いかけるものの、


「まあ、彼なら大丈夫でしょう」


 とイブリスは問題ないとばかりにその成り行きを見守っていた。


 ほ、本当に大丈夫なの……?

 ま、まあ、イブリスが言うなら大丈夫ということで私も同じくオーリの動向を見守る。


 廃墟の門までオーリが近づくと、そこを警護していた魔族がすぐさま武器を構えてオーリを取り囲む。


「! なんだ、貴様! ここに何の用だ!」


「よもやこの場所を攻めに来たなどと抜かさないだろうな!」


 まさに一触即発のやばい状況。

 や、やっぱダメじゃん!? と慌てて立ち上がろうとした私を隣にいたイブリスが抑える。


「大丈夫です、七海様。あの人に任せていれば問題ありません」


 え、それってどういう意味? とイブリスに視線を向けた後、改めて廃墟の入口を見ると、そこには顔を真っ青にした魔族の護衛達が慌てた様子で武器を捨てて投降している姿があった。

 はい!? 今の一瞬に何があったの!?


「やあ、七海ちゃん。終わったよ。この人達、案外いい人達みたいで好きに廃墟の中に入っていいってさ」


 そう言って爽やかな笑顔を浮かべてオーリがこちらに戻ってくる。


「え、えーと、一体何したの……?」


「いや、ただ話し合っただけだよ。戦いなんて野蛮だからね。しないに越したことはないよ」


 爽やかにそう答えるオーリであったが、彼の後ろでは魔族達がまるで恐ろしいものでも見たかのように硬直していた。

 ……なんだか、胡散臭い匂いが漂ってきたぞ。

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