第八章 発覚2
会合では、いつもの面々が秘密の館に集まっていた。
「まずは本日、たくさんの悪人がこの王都内で検挙されたことを報告せねばならない」
リーシンの言葉に、そこにいた全員が顔を上げた。
「抜き打ちで調査を行った結果、かなりの役人が、なにかしらの賄賂を受け取ったり、徴収した税金を横領したりしていたことがわかった。そうしたものたちは取り調べを受け、身の潔白が証明されなかったものたちは投獄されている」
わたしはそれを聞いて、溜飲が下がる思いだった。
民を苦しめ、その立場を利用して甘い汁を吸ってきた役人たちが、ようやく罰を受けるときがきたのだ。こんなに喜ばしいことはない。
「そして、その調査によってわかった重大な事実を、ここで公表せねばならない」
どくんと、胸が鳴った。
それはきっと、丞相の隠していたお金が見つかったということなのではないのだろうか。
わたしたちは、丞相を追いつめることに成功したのだろうか。
リーシンは次の瞬間、しかし意外な言葉を発していた。
「わかっているのだろう? もう、言い逃れはできないことを」
その言葉は、この場にいるある一人の人物に注がれていた。
その人物とは――。
リーシンはその人物の目の前で、ばんと円卓に手のひらを叩き付けて見せた。
「おれはとても悲しいぞ。――ユンバイ」
リーシンはゆっくりと、その円卓に叩き付けた手のひらを開いていった。
そこに現れたのは、一枚の銅貨。
「なんですかな? それは」
名を呼ばれたその人物は、眉を上げてそれを見た。
「これは、普通の貨幣ではない。……わかるだろう? なんなら手に取って確かめてみるがいい」
リーシンの言葉に、ユンバイさんは訝しそうな顔をしながら彼の近くへと近づいていき、その銅貨を手に取り見つめた。
「偽の貨幣……?」
「そうだ。貴様の屋敷を捜索したところ、この偽金が出てきた。そして、他にも使途不明なたくさんの金も。この事実、どう説明をする?」
わたしはそれを聞いて、心底驚いた。それは、他の人物も同じのようだった。
「まさか、ユンバイ殿……」
「貴様、裏切っていたのか……!」
リューフォンさんとタオシェン将軍が、口々に言った。
ユンバイさんの屋敷からその偽金が出てきた。それを用意したリューフォンさんはともかくとして、そうではない彼の屋敷からそれが出てきたという事実は、あることを証明していた。
ユンバイさんは丞相と繋がっている。そして、丞相と結託している。
もちろん彼の屋敷から見つかったとされる使途不明金は、丞相の横領したお金に間違いないはずだ。
全員の視線にさらされていたユンバイさんは厳しい表情をしていたが、すぐに笑顔になってこう言った。
「みなさん。これはなにかの誤解です。私の屋敷からそのようなお金が出たのは、なにかの間違いです」
悪あがきともとれるその台詞に、リーシンは怒りの言葉を発した。
「そのような妄言、よもや通用するとでも――」
「陛下。ご冗談が過ぎますぞ。いたずらもほどほどにしておいてもらわなければ」
ユンバイさんがそう言った次の瞬間だった。
彼はきらりと己の腰から短刀を抜き、ぴたりとリーシンの喉元につきつけていた。
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