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「リヌクが石になった今、おじいさんは元に戻るはずだ」パドスは石になったおじいさんをのせた荷車を見た。



荷車はぐらぐらと動いて、大きく傾いて倒れた。



その衝撃で、石のおじいさんは、荷車か飛び出した。



地面の灰色の石は、次第に色が変わっていって、人の姿になった。



「おじいさん!」パドスは、元に戻り始めたおじいさんのところに駆け寄っていって、腰を下ろして抱きついた。



「パドス……」人の姿になったおじいさんは、ふらつきながらなんとか立ち上がった。



そして、自分の身代わりになったリヌクを見たが、すぐ目を背けて、先の森を見た。



「さあいこう」おじいさんは、そう言っておぼつかない足取りで森に向かって歩き始めた。



パドスも、そのおじいさんに寄り添って歩いた。



二人の姿は、森の暗闇の中に消えていった。



猫のリルは、しばらく石になったリヌクの上にいたが、二人の姿が視界から消えると、二人を追って森に消えていってしまった。











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