第14話 こっちが下なんだって↓
赤い髪の、やたら目立つ人は確かに逃げ足だけは早く、日曜の商店街の群衆の間を巧みにすり抜けて、路地のほうへ向かった。コンビニとカレー屋が両脇にある、幅2メートルほどのビルの間の、ほとんど人が通らない路地の先には、しかしわたしたちの仲間のパルマたちが待ち構えていた。息を切らして、ルキノさんに追いついたわたしは、もう逃げられないぞ、と、ダフィー・ダックみたいな顔をして赤い髪の人に迫るライミを見ることができた。
ふふん、とその人は言って上を指差し、壁を登った。正確には手と足を使って登るんじゃなくて、歩いた。つまり壁が地面でもあるかのように、両足の裏を壁につけて数メートルほど歩き、さらに自分の足もとを指差して言った。
「こっちが下」
わたしたちは数十センチの高さから壁に向かって、どしゃどしゃと落ちた。落ちた、というより壁に貼りついた、という感じだろうか。
「 と、 「 こ
ど 、 こ れ
う ラ っ は
な イ ち ど
っ ミ が う
た さ 下 考
ん ん な え
だ た ん て
? ち だ も
」 が っ 異
聞 て 能
い ↓ で
た 」 あ
ん る
で 。
、
わ
た
し
は
答
え
た
。
わたしたちは、恐る恐る壁を歩いた。
「おーっと、あんまり近づくと、また「こっちが下」の能力で重力の向きを変えちゃうよ? 1メートルぐらいのところから落ちてもけっこう痛いよ?」と、その人は言った。
*
ここまで書いて、ミネコは困った。
わたしたちにとっての異世界での、明るく楽しく、困ったり泣いたり迷ったりもするけれど、ごく普通の複数女子による日常系恋愛物語にするつもりが、異能女子を出していいのか。
しかし基本的に縦書きでしか書かれないものを横書きにするのは難しいな、とミネコは思った。
ミネコの中にずいぶん前から住みついている、異世界の魂を持った「アキ」は、にやにやしながらミネコの作る物語の先の展開を楽しみにしていた。
「ソナエはカートゥーン能力、と言ってもこの世界にはそんな言葉ないんだよね。滑稽動漫画能力、ってのがある異能者という設定かな」
まあその設定は、無駄にならない程度にわたしの物語の中でなんとか使うことにしよう、とミネコは漠然と思った。
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