誰にでも思いつくようなゲームの設定を
ちびまるフォイ
ぼうけんのしょ1はつづけたくなくなりました
久しぶりに掃除をしていると押入れの奥からゲームカセットが出てきた。
「おお、懐かしいな。昔やった……っけ?」
『オレコンクエスト』
出てきたのはパチモン臭がすさまじいゲームだった。
パッケージデザインも寄せているあたり、ゲーム乱立していたときはこういうのもあったんだろう。
懐かしさに負けてゲームをつけてみると、
すでに「ぼうけんのしょ1」が自分の名前で作られていた。
「わぁ、懐かしい。昔は主人公の名前よく自分の名前にして
好きな子の名前を仲間にしてたっけ」
ステータスはレベル34と中途半端な数字。
ゲームクリアするには足りない、やり始めたにしては高すぎる。
「途中で諦めちゃったのかな」
やることもないのでテキトーにレベルアップを目指してザコ狩りをすることに。
あっさりレベルアップすることができた。
―――――――――――――――
さとし は レベル35 に なった!
ちから+2
せいよく-10
うん+1000
ないぞう-50 ▼
―――――――――――――――
「なんだこのゲーム!?」
ステータスが上がって強くなったのか弱くなったのかわからない。
なんだかよくわからないのでやめてしまった。
翌日、人間ドックにいくと死刑宣告を受けた。
「お気の毒ですが、内臓がめっちゃ悪いです」
「めっちゃ!?」
「こんなことはじめてです。急激に内臓が劣化しているんですよ。
原因もわからないから医学用語も使えないし……とにかくやばいんです」
「そんな馬鹿な……」
「心当たりないんですか? こんな劇的な変化そう起きませんよ」
「ゲーム……そう! ゲームですよ!」
病院から戻るとオレコンクエストのステータスを開いた。
予想は的中した。
じょうたい:がん
「やっぱり! このゲームは現実とリンクしているんだ!!」
宿屋に行ってもまるで治らないので教会に行って治してもらうことに。
その後、現実の病院で診察を受けると医者がショック死した。
「こんな一瞬で治るわけ……ない……」
これが最後の言葉となった。
オレコンクエストにすっかりハマった俺は年甲斐もなくゲームしまくった。
「あなた! ゲームばかりしてないで少しは働いてよ!」
「は、働いているじゃないか」
「休日家にいられるとストレスたまるのよ。休日も働いてくれない?」
「ええええ」
ゲームで息抜きすることも許されない我が家。
なんだか居心地の悪さを感じながらゲームをしていると変化が起きた。
―――――――――――――――――
*
「おまえ の いえ てんじょう ひくいな」
*
「まおう の てさき なんじゃないか」
*
「おまえ とは あそんじゃ だめって」
―――――――――――――――――
今まで一緒にいた仲間たちが急によそよそしくなり、
パーティで行動するのがだんだん気まずくなってきた。
「おいおいおい……まさか、現実の世界のこともゲームに影響するのか?」
ゲームでの出来事は現実世界に影響する。
そして、その逆も……。
そのことを確信したのは階段でこけて足を折ったら、
ゲーム内の主人公も同じ状態になってからだった。
じょうたい:こっせつ
「やっぱりだ! このゲームは現実のとリンクしてる!」
入院することにはなったがそれはそれで幸運で、
家にいると白い目で見られるが病院なら思いきりゲームができる。
「ふふふ、この入院生活をゲームに費やして
退院するころにはスーパー真人間になってやるぜ!!」
と、有意義な入院生活が始まったかに思えた。
でもそんなことはなかった。
『田中君、入院したんだって? 困るよこの時期に』
『じゃあもう君来なくていいから』
「え……そんな……!!」
会社の忙しい時期に休んだことが裏目に出てしまい体調は悪化。
入院しているのに胃に穴をあける珍事を巻き起こした。
「ああ……なんてことだ……こんなにも急に地獄になるなんて……」
思えば、結婚を決めてからいい思い出が何もない。
体調はみるみる悪くなるし、家では居場所なくなるし、お金ないし。
あげくのはてに会社にまで見放されて現実世界に居場所がない。
「はぁ……ゲームの世界でも挽回しようがない……」
じょうたい:うつ
呪いのステータス異常になったため教会ですら治せない。
この状態になるとレベルが上がるのが遅くなり、ステータスが低くなる。
つまり、どうあがいても絶望。
「もういいや……自殺してこよう……」
現実世界でもゲームの世界でも挽回できないと悟った俺は魔王の城へと向かった。
魔王はオレコンクエストの世界を闇に変えた悪の化身。
勇者の幸せを根こそぎうばった悪しき存在。
それだけに強敵。めっちゃ強い。
今の俺じゃ明らかに勝てないのはわかっているが
さっさと戦って死んで現実世界からもぼうけんのしょを消したくなった。
「いい人生だった……」
魔王との戦いが始まると脳内に走馬灯が流れ始めた。
さとし の こうげき! かいしんのいちげき!
さとし の こうげき! かいしんのいちげき!
さとし の こうげき! かいしんのいちげき!
さとし の こうげき! かいしんのいちげき!
「……あ、あれ?」
さとし の こうげき! かいしんのいちげき!
さとし の こうげき! かいしんのいちげき!
さとし の こうげき! かいしんのいちげき!
さとし の こうげき! かいしんのいちげき!
さとし の こうげき! かいしんのいちげき!
「おいおいおい!?」
さとし の こうげき! かいしんのいちげき!
さとし の こうげき! かいしんのいちげき!
さとし の こうげき! かいしんのいちげき!
まおう を たおした!
「勝っちゃったよ!? なんでどうして!?」
最初に運のステータスが爆上がりしていたのを思い出した。
装備は貧弱、レベルも弱っちい状態で魔王をやっつけた。下剋上大成功。
いつまでも終わらないレベルアップのファンファーレと、
ぐんぐん上がっていくステータスに、魔王を倒したことで報酬もたくさんもらった。
「やった!! やったーー!! 人生大逆転だ!!」
ゲームの世界で魔王を倒してこれだけの報酬が得られたということは
現実世界でいったいどんなことが待っているのだろう。
楽しみすぎて鬱なんて跡形もなく根治した。
「たっだいまーー! 生まれ変わった俺が戻って来たよーー!!」
テンション高めに自宅に戻ると、自宅には黒い服を着た親戚が取り囲んでいた。
「あんたの奥さん……急に死んじゃったんだよ。
あんなに健康だったのにいったい何が原因だったのか……」
死んでしまった妻の顔はどこか魔王の顔に似ていた。
妻の生命保険で大量の金が手に入った。
まるで倒して報酬を受け取ったかのように。
誰にでも思いつくようなゲームの設定を ちびまるフォイ @firestorage
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