【バーチャル・バトルフィールド】〜ゼロから始めるVRMMOプロゲーマへの成り上がり〜

taka

バーチャル・バトルフィールドについて

 eスポーツ、という競技がある。


 オリンピック競技のように肉体の極限を競うスポーツとは異なり、選手は腰を下ろしてゲーム画面に映るキャラクターを操作して戦うものだ。

 しかし、それは遠い過去の話――


 わぁっ! と、大歓声が会場に響き渡る。


 それは薄暗い空間に設けられた席に腰掛けたり立ち上がったりしている観客たちのものだった。大興奮を見せる彼らの視線の先には、色彩豊かなライトに照らされるフィールドがあった。

 そこには、


 ガキィインッ!!


 放たれる金属音、飛び交う火花。


 それはフィールドの中央で互いの剣をぶつけ合う、二人のプレイヤーによって発生していた。

 一人は露出度の高いジャケットに身を包んだ筋骨隆々な黒人の男性、もう片方は黒いコートを着込んだ日本人。こちらは十代半ばほどの少女……いや、少年だった。


 傍目から見れば、鋭利な武器を振り回し両者は命の取り合いをしているように見えるが、決して危険はない。彼らの『元の肉体』には。


 理由は、多人数同時参加型仮想現実。

 簡単に言えば、そこはゲームの世界だからだ。


 脳波干渉を行う装置を身につけることで、仮想空間に入り込むことができる(実際には入り込むのではなく、現実の五感を遮断し脳に五感情報を送り込む)。


 ――そう、Eスポーツは進化したのだ。

 それは瞬く間に世界中を震撼させ、二〇三〇年の現在ではオリンピック競技化もされている。


 VR格闘ゲーム

【バーチャル・バトルフィールド】。


 それが日々、激闘が繰り広げられる世界の名だ。

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