プロローグA「妹、沙耶香」(1話)

 ……とある日の朝。

「い……ーい……おーい。」

 ……遠くから聞こえる声……それは、愛すべき妹・沙耶香の声だ。

「おーい。お兄ちゃーん。起きてー。」

 というもの、沙耶香は朝になると毎日といっていいほど、こんな風に俺のことを起こしに来るのだ。

「うーん……。あと15 分……。」

 などとはいうものの、決して眠いというわけではない。

 まず、俺は起こされたらすぐに目を覚ますタイプの人間である。

 だがこの時間が極度のシスコンである俺にとっては、一日の中で唯一の至福の時間である。

 俺はその時間を可能な限り、一秒でも伸ばそうとそんな言葉を発して寝ているふりをするのだ。

「ふざけてないで早く起きてよー!」

 沙耶香がすこし怒り気味に叫ぶ。

「うーん、もうすこし……ぐふっ!?」

 体に衝撃が加わり、腹に重いものがのしかかる。

 沙耶香が俺の体の上に、おぼんごと朝ごはんを置いてきたのだ。

「お兄ちゃんいつもそう言うじゃん。もう起きれるの、バレてんだからね。」

 ……まあ、さすがにバレるよな。毎日同じ事ばっかりやってれば。

「くそー。バレてたか。(棒読み)」

「……なんで棒読みなの。あ、そういえば、お兄ちゃんになんか手紙が届いてたよ。」

「手紙……もしかして、お前からのラブレターか?」

「違うよ。」

 少し可愛げに怒りながらさやかは言った。

 どうやらラブレターではないらしい。

「全くお兄ちゃんってばシスコンだよね。」

 ……怒り方もかわいいなあ。

 まあ、とにかく。俺は妹から渡された手紙の封筒を開けた。

 それがこの事件の始まるきっかけだった。









 手紙には、こう書かれていた。


「I kill your sister.」


 たった。たったその一言だけで、俺たち兄妹はとんでもない方向へと進むことになったのだった。


 2




 そしてその手紙には、もうひとつ、数字が書かれていた。

「XXXX/8/5/7:30」

 8月5日(8/5)というのは、今日の事を指している。

 今、時計は7:28を指している。

 これがもし時間なら、7:30に、確実に、沙耶香は……



 殺される。



 7:29


「ねえねえ、お兄ちゃん。どうしたの?」

「沙耶香。とりあえずお前はテーブルの下にいろ。俺が良いって言うまで動くな。」

「……?分かった。」

 妹は完全に状況を飲み込めないまま、テーブルの下へと隠れた。

 秒針の音がする。




 7:30




 ……数秒、静寂の音が響く。

 そして、それは突然起こった。


「バーーンッ!」


「キャアッ!?」

 銃声が、鳴り響いたのだ。


 To be continued

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