プロローグ
五年前の春、父親とともに王都へ
暗い
遠い昔、国王の建国に助力したとされる、四大天使を
三百年前に建ったとされる石造りの聖堂は、修復作業が行われていた。それが終わったという新聞記事を知っていたため、どうしても見ておきたかったのだ。
周囲の景観を
(きれいな聖堂……!)
ベンチの間に立つ柱の頭部には、
「お天気がよかったら、あそこから光が降りそそぐのね。
「雨で残念だが、
「本当ね。ここの修復には、建築家のラングレー
さらにジルを
(もしもいま手を
ステンドグラスを手がけたのは、ロンウィザー
(そうよ、これは──)
──
父親にそう言おうとして
ベンチに座って深くうつむき、片手で顔を
テーブルにはミモザの花束。泣いているのか小刻みに
──不幸が、あったのだ。
きっと
出過ぎた
「あの……
彼の息づかいが一瞬止まり、ゆっくりと顔から手を離していく。と、父親がジルを呼んだ。おせっかいに
身廊を渡り、父親と並んでベンチに
「お前のおかげで素晴らしいものが見られた。なにがあっても家族仲良く支え合って生きていけたら、なんとかなる。あのステンドグラスを見ていたら、そう思えてきた」
「ええ、私もそう思うわ。あれは魔術師が生み出した魔術よ、お父様。私たちに生きていく力を
「善き魔術師の生み出した、慰めの魔術か。母さんやソフィにも見せてやりたかったな」
去り
小さく笑んだジルは、哀しみを
芸術は、現実の世界から夢の世界へと連れ出し、心を優しくしてくれる。どんなに
──こんな芸術のそばにいられたら、どんなに幸せだろう。
そう思ったとき、雨音が
「四大天使様が祝福してくれたな。きっといいことがあるぞ」
父親の言葉に、十三歳のジルは満面の笑みでうなずいた。
ジルがこのとき目にした、聖堂やステンドグラスを生み出した芸術家たちは、のちに二名の芸術家とともに、銀王宮にアトリエをもつことになる。
芸術の
──銀王宮の
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