藍沢篠

デイズ。

混濁した意識の狭間をたゆたってゆく中で

奇妙に目に焼きついていた色があった

モノクロの中のただひとつだけのその色が

異常な勢いでこころと身体を蝕んでは

噎せ返るような猛暑日の幻を刻みつけて

瞬いては爆ぜて少しずつ溶かされてゆく


頭がぼんやりとしてどうにも働かずに

目の前の嘘のような本当だけを記憶する

夢なんかではないのだと鳴らされる警鐘は

異端で痛んで傷んで悼んで止んでくれない

こころがなにかを叫ぼうとしたはずだが

その声はふらつく視界の中で揺れるばかり


どうしてと繰り返される問いかけさえも

無限に続く身体の疼痛が妨害しわからない

なにもかもが曖昧なこの空間の中において

確かにそこにあるとわかるのは色だけ

他は白と黒しかない世界の端に揺らめく

なにかが潰え逝く時に見せる断末魔の色だ


影法師に映り込んだ君の面影の欠片たちが

僕の世界には確かに残っているけれど

それすら陽炎なのではないかと思わされる

混沌として輪郭を成さない風景に惑わされ

なにも最初からなかったと錯覚しては

そのたびに君と僕の繋がりを再確認する


僕のせいで君は死に続けているというのに

君のせいで僕は死に続ける日々なのに

お互いを手離すことのない歪んだ関係性が

余計にこじれてはあの色を思いださせる

遠いあの日に君と僕が死んだ時に見えた

最期の色であった所の緋色という風景が

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