第拾話
あのあと、僕は学校でやることを全て終わらせ、授業が終わった香奈恵ちゃんと一緒に、おじいちゃんの家に向かっています。
それは、この陰陽師の女の子を連れて行くからです。
おじいちゃんに連絡して、とりあえず話を聞くから連れて来いと言われました。
最近はあの黒い妖気も問題なんですけど、陰陽師の人達の動きも問題になってきているのです。
僕が白狐さん達と出会った頃は、その存在を聞いていても、特に何もして来なかったし、接触もなかったのです。だから初めてなんです。陰陽師の女の子と会うのは。
それなのに……。
「うぅぅ、私をどうするの? 妖怪! もしかして私の体を弄くって、快楽漬けにして、もう妖怪達の攻めじゃないと満足出来ない体に……!! むぐっ!」
「ちょっと静かにしてて下さい」
「んぐぐ……ん~……はっ!!」
「またですか……」
さっきから卑猥な事ばかり叫んでます。
とりあえず影の妖術で口を抑えるけれど、不思議な力で弾かれるんですよね……。
雲操童さんも困り顔で運んでくれているけれど、何よりその子をヒートアップさせているのは……。
「あ~ら、そうされたいならそうするわよ~」
「ひ、ひぃぃぃ……」
「妲己さんストップ」
「うひっ! ちょっと、尻尾の付け根は止めなさい! 椿!」
妲己さんが舌舐めずりしながら、その女の子に迫っているんです。だから卑猥な事を叫んじゃってるんですよねぇ……。
とりあえず、僕は妲己さんの尻尾を掴んで止めます。もう妲己さんの弱い所も分かって来ました。尻尾の付け根です。
「それじゃあ、その子から離れて下さい」
「うぅ……分かった、分かったから……くっ」
すると、妲己さんはなんとか渋々離れてくれました。本気ではないのは分かってるので、そこは僕も強気でいけます。
「ちぇっ、折角奴隷が手に入ると思ったのに……」
いや、これ割と本気でした。妲己さんったら……とにかく離れて下さい。
「……あなた、あなたのその尻尾……触らせて」
あっ、しまった。妲己さんを離すために、僕妲己さんとその女の子の間に入ったんだけど……その子、僕の尻尾に魅入っちゃってます。
僕のこの尻尾、見た者を魅了する力があるんです。それで過去にどれだけ大変な目にあった事か……。
最近はだいぶコントロール出来るようになりましたけど、人間の中には、たまに効きやすい人がいるみたいで、こうやって忘れた頃に魅了させてしまったりするんです。
「ふわぁ……フワフワモフモフ……最高の手触り~」
「ひぁっ! ちょ、ちょっと待って!」
そして僕の許可なく触って来ました! しかも容赦なく掴んでます!
「ちょっと、白狐さん黒狐さん、助け……!」
「女同士なら問題なしじゃな」
「うむ、眼福眼福」
「こらぁ!! 白狐さん黒狐さん!」
前の僕なら「そんなぁ~」とか言うけれど、もう言わないよ! ちょっと強気でいくよ……と思ったけれど、この子の触り方がヤバいです!
「うっ……くっ、うぅ……」
「フワフワ、モフモフ~」
そんな状態の僕を、白狐さん黒狐さんはホクホク顔で見ています。ついでに「助けて欲しいならどういうんだ?」というような顔までしています。
「うっ、うぅぅ……くぅ~白狐さん、黒狐さん、お願いします、助けて下さい~!」
このままじゃあ、大変な事になっちゃうんです。
白狐さん黒狐さんに開発されてしまったこの体じゃ、この子の尻尾の触り方だけで、もう……!
「助けないといけないのかの?」
「嬉しそうに見えるぞ?」
「そ、そんな事ないです……お願いします……た、助け……」
いや、なに恍惚な表情しているんですか、白狐さん、黒狐さん! なんで僕の泣き顔と困り顔で興奮するんですか?!
は、早くしてくれないともう……いや、多分2人はこれを狙ってる?!
「お願い、助けてぇぇ……白狐さん~黒狐さん~」
もう最終手段、上目遣いもプラスします! 涙目で上目遣い、これなら……!
「ふむ、次はそのような目で懇願して貰おうか」
「それは良いな」
あっ、ダメだ……もう、終わった。もう我慢出来ない……。
「白狐さん黒狐さんのバカァァア!!!!」
―― ―― ――
「なんじゃ? 今度は椿がダウンしとるのか?」
おじいちゃんの家に着き、玄関から中に入って、直ぐに出迎えてくれたおじいちゃんが僕に向かってそう言います。
陰陽師のこの子のせいだけど、一応白狐さん黒狐さんが止めてくれなかったせいにもしておきます。
あの後僕は果ててしまって、白狐さんと黒狐さんに担がれています。まるで御神輿のようにして……。
「うむ、最近こちらにも肉が付いてきたな、椿よ」
「お尻触らないで、白狐さん……」
しかも白狐さんが足を持ってる……だから変な所ばかり触ってきます。これには慣れたけれど、今はまだ明るいから!
「は~良い尻尾でした~あっ、すいません! 私、
なんですか、このレベルの高い合コンの自己紹介みたいな感じは……「一応、モデルやってます」って感じなんですけど。
そしてその子は、茶髪でウェーブをかけたセミロングの髪を整えて、玄関で僕達に挨拶をします。
あれ? 僕達を滅しようとしてるんじゃ……。
「いや~おじいちゃんの言うとおり、良い妖怪さんもいるんですね。ここには悪い気が存在してないです!」
そう言うと、咲妃という子はおじいちゃんの家を見渡しています。何か見えてるの? 悪い気が存在しないって……。
気になった僕は、白狐さん黒狐さんから降りて、その子に近付いていきます。
「あっ、尻尾~!!」
「二度はないよ!」
油断も隙もないよ。僕が近付いた瞬間、目を光らせて僕の尻尾に手を伸ばしてきましたよ。咄嗟に尻尾を動かして回避です。
「ぬぅ……それじゃ、私の事を全部話すから尻尾触らせて!」
「もう十分触ったでしょう!」
ここに連れて来るのに、暴れられると困るからって、妲己さんの提案で僕は尻尾を触らせていたけれど、そもそも妲己さんは、僕が悶えるのを我慢している所を、ただ見たかっただけだと思う。
すると、咲妃ちゃんはペットボトルの水を取り出し、それを地面にばらまきます。何でしょう、何かのおまじない?
「良いもん、ちょっと動き止めて触るもん~五行陰陽術!
「えっ? きゃぁあ!! 木の蔦が地面からぁ!!」
また五行術ですか?! あれだけの水で凄く長い蔦が出て来て、僕の体……って、あれ……ちょっと待って、この蔦どこに入り込んでるの? 服、服の中に入ってるってば!
「ひぁっ! ちょっと止めて! どこ触ってるの!!」
「つ、椿ちゃん……やらしい……雪~!! シャッターチャンス~!!」
「カナちゃ~ん!!」
君また親友モードになってるよ!! いや、それよりも、この蔦誰か取ってぇ!! 更にダメな所まで絡んで来てるんだってば! これ以上は表現出来なくなるからだめぇ!
「ちょっと、白狐さん黒狐さん今度こそ……う~お約束の鼻血ダウンですか……妲己さん……はニコニコ顔。香奈恵ちゃんはカナちゃんモードで、鼻血出してカメラ取りに行った……あ~!! 僕の味方はどこですか~?!」
「ん~? お水多すぎた? おかしいな……ちょっと手足を拘束するはずが……」
ちょっと拘束どころか、体全体拘束してるし、いけない事までされちゃってるんですけど~!!
「ふえっ? えっ、あっ、ちょっとぉ! ひぅっ?! 何で私までぇ!」
あっ、咲妃ちゃんまで自分の術に捕まって……いけない事をされちゃってます。これはもうダメですね。助かりませんね。
おじいちゃん? 呆れて見て見ぬふりですよ……。
でもその後、僕達はギリギリでおじいちゃんに助けて貰いました。もちろん、カナちゃんはシャッターチャンスを逃したことになります。あとで説教です、説教。
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