こんなにお金が入ってきて大丈夫?

 あいかわらずチャットツールを使ってのタロット占いは大好評です。

 ただし、30分1000円で1時間に2件の鑑定をするアイデアはやめにしました。その代わり1時間で2000円に鑑定料金を改定しました。

 これならば、ひとりのお客さんにたっぷりと時間をかけて占うことができます。しかも、業界的にはこれでも安い方なのです。


 アレからいろいろと調べた結果、20分とか30分で3000円というのが業界の相場だとわかってきました。雑誌に占いの記事を書いているような人だと1時間で1万円以上取っている人もいます。

 それに比べれば、私の鑑定料なんて安いものです。もっとも、知名度だって全然ない駆け出しの占い師に過ぎませんけど。


 それでも占い師としての私の評判は口コミで徐々に広がっていきました。

 最初はマッチングアプリで出会った男の人相手だけだったのが、そこから男の人たちの恋人だとか友達だとかに伝わっていき、どんどんお客さんは増えていきます。

 さらに紹介された人が新しい人を紹介してくれて、ますますお客さんの数は増えるのでした。

 おかげでWebライターよりも、こっちの方がもうかるくらいです。仕事量もそうですが、1時間あたりに稼げる金額が全然違います。


「こんなにお金が入ってきて大丈夫かしら?」と、私自身心配になるくらいでした。元々お金が欲しくて始めたことではなかったので、なんだか変な気分です。

 でもまあ、お金はあるに越したことはありません。きっと、何かの役に立つことでしょう。


 最初は新規のお客さんを占うことに神経を使っていたのですが、しだいにその内容が変わってきます。リピーターになってくれる人が増えてきたからです。

 そうなると、前回占ったことを覚えていないといけません。たとえば、「この人はどんな性格の人だったかな~?」とか「何歳くらいで、恋人がいて、家族構成はこうで」「占いの結果がどう出たか?」といった感じです。

 そうして、次の鑑定依頼があった時に、前回までの情報と照らし合わせて、なるべく同じことを言わないように気を使います。あるいは、あえて前回までと同じことを言ってみたり。

 だって、前は「あなたは怒りっぽい性格ですね」と言った人に「温和な性格ですね」なんて言ってしまったらおかしなことになっちゃうでしょ?

 だから、基本的な性格の部分は同じことを伝え、現在の状況や未来予測の部分は新しいことを伝えるのです。


 そうして、私は顧客の情報をエクセルで管理するようになりました。

 エクセルというのは、マイクロソフトという会社が開発している表計算ソフトです。表計算といっても、数字だけを扱うわけではなくてちょっとしたメモとか情報なんかを文字で書きこんでおくことができるようになっています。

 昔はエクセルも高いお金を払わないと使えなかったららしいのですが、最近ではオンラインで無料で使うことができるのです。


 こうして、私はちょっとした事業者きどりになってきました。

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