音吹璃瑠の誕生 ~一流の作家を目指して~

音吹 璃瑠(おとぶき りる)

~プロローグ~

自由の翼を広げ、世界へと飛び出す

 人は、なんのために生まれ、なんのために生きると思いますか?


 私はリル。音吹おとぶき璃瑠りる

 1993年9月10日生まれ。

 酉年とりどし生まれのおとめ座。

 血液型はO型。


 それまでの私は、自分がなんのために生きているかだなんて、考えたこともありませんでした。とてもとても平凡な生き方をしてきました。

 ここで語れるようなことはなにもない極々ごくごく普通で、あたりまえで、平凡な人生。それでいて安全で安定していて特に不満も不安もない生き方。

 いいえ、不安はたくさんありました。ほんのささいな小さなことにビクビクおびえながら生きてきました。だけど、そんなのは誰にだってあると思うんです。

 そういうんじゃなくって、ほんとうに大きな不安。そういう大きな不安はなかったと思います。ただひとつを除いて。

 それは「不安がないことが不安」とでもいうのでしょうか?

「このままでいいのかな?このまま誰にでもあゆめるような人生を歩んで、どこにでもあるような一生を過ごして。人並ひとなみに恋をして、結婚して、子供を産んで育てる。仲のいいお友達が何人かいて。一緒に楽しみながらいていく。日常の些細ささいなことに幸せを感じつつ、映画を見に行ったり、遊園地に遊びに行ったり、動物園や水族館や美術館を訪れ、子供と一緒に公園のブランコに乗ったり、すべり台をすべったり。きっと、そういうのってすごく楽しいし、とても幸せだと思うんです。でも、心のどこかでいつも誰かが叫んでるんです。『こんなのほんとのあなたじゃない!違う!違う!ほんとのあなたはもっと別の生き方をしているはずなのよ!』って」

 わかります?そういう気持ち?


 私はずっとそうでした。

 小さな子供の頃からずっとずっとそうだったんです。

 心の中でずっと誰かが叫んでるんです。

「あなたはやれる。もっと別の何かがやれる。こんなとこでくすぶってるような人じゃない。さあ、その自由の翼を広げて世界に飛び出してごらんなさい!」って。

 でも、私には勇気がなかった。だから、心の中で誰かが叫んでいるその声をずっと無視し続けて生きてきたんです。


 だけど、私にもチャンスが訪れたんです。出会ったんです。運命の人に。

 私を広い広い世界に羽ばたかせてくれる人。そのためにポンッと背中を押してくれる人。最後の1歩を踏み出させてくれる人。そんな人に。


「きっと、君は一流の作家になることができるよ。二流でも三流でもなく一流の作家に。もしかしたら超一流の作家に」

 あの人はそう言ってくれました。なんもない、普通にあたりまえに平凡に生きてきた私に。

 そして、こうも言ってくれました。

「君の才能がどういうものかまだハッキリとはわからない。でも、とりあえず小説を書いてみない?そのために全力で支援するから。持てる限りの全ての力を使って、これまで学んできたこと全てを伝えて、君を一流の作家に育て上げる。そう約束する」って。

 だから、しばらく考えてから私こう答えました。

「どうかよろしくお願いします」って。

 そしたら、あの人はこう言ってくれました。

「OK!これで契約成立。この命に代えても契約は守る」って。

 それから私の戦いが始まったんです。一流の作家になるための挑戦が。

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