17―4
左右に別れた茶と白の髪を揺らし、この男ビンズは狼狽していた。
会場で起きたスカイフィッシュ騒動。突如現れた強いオーラを纏う荒らし。そして、先ほどまで一緒に居たキラが、クロンを思念派で吹き飛ばす光景…… 一度に広がる仰天に、ビンズはただ立ち尽くす。
だが、身体は無意識に動いた。クロンの救出、それを果たすために。
まずは荒らしの浄化、そう考え、無言実行。一気に宙に躍り出て、一気に荒らしに拳を向ける。
完全なる不意打ち。しかし、そこは自我のある荒らしである。ビンズは逆に、思念波により吹き飛ばされ地に打ち付けられる。
「この程度で立ち向かおうとするとはな。なめられたもの……」
荒らしの嘲笑を、ビンズは遮る。すぐに立ち上がり、お返しだと思念波を放ち、逆に一泡ふかせてみせた。
今、頭の中にあるものは、クロンのみ。
邪魔をするものは全て倒す。
その闘志に呼応する様に、グローブに装飾されたインカローズが輝いた。
思念波と独自の体術を武器に、間合いに詰め寄り獅子奮迅。
打ち付けてくる荒らしの拳を、蹴り上げた足底で受け、眼力から放たれる思念波を、身をくるりと回転させ避ける。
その勢いを利用し、ビンズは右拳で荒らしの顔面を強打した。
以前見た、ザックの動きの模倣である。不器用だが我ながらうまくできた、としたり顔をビンズは見せる。
「ち、本気になるか」
不利に感じたか、不意に荒らしは空中高く浮上した。
ビンズはそれを落とそうと、力強く思念波を繰り出す。
だが、思念波は力及ばずかき消えた。
荒らしを覆う、半透明の四角い障壁。ウォールタグが立ちはだかる。
舌打ち後、ビンズは再度思念波を繰り出すが、やはり通用しない。
ならば直接攻撃と、ウォールタグに果敢に向かう。が……
「なんだと……!」
今度は、ラインタグで作られた光鞭である。ウォールタグの壁から突如それが複数一斉に伸びたのだ。
ビンズはあっと言う間に拘束された。身動きをほぼ封じられてしまう。
「タグの併用…… だと」
力強く絡まるラインに、身がままならない。
自由の聞く耳には、荒らしの、嘲(あざけ)り。目には、歪んだ口角と、翳される手掌。
思念波が来る…… ビンズは口と目を強く閉じ、受ける覚悟を決める。
「なるほど、詰めの甘さも明日駆そっくりだな」
荒らしとは違う声が届く。途端、身体に絡まる光鞭が、快刀乱麻。瞬く間に解かれ消え失せた。
そして、荒らしの方からは轟音が。
見ると、ウォールタグは消え、荒らしは地に伏していた。
「ビンズさん。遅くなってすみません」
地に伏した荒らしに思念波を放ち、ザックが笑顔で立っていた。
「さすが、俺の見込んだ男だ!」
親指を立て、ビンズは感謝と茶化しを同時に告げる。
そして勇んで動き出す。ここは任せてという激励を背に、クロンの下へ、ただ夢中に。
「あ! クロンさんは反対方向にいるはずです。たぶん、その先にあるスカイフィッシュの巣の洞窟かと。ラーソさんの過去透視からの情報ですから間違いないかと」
動いた身体にブレーキを掛け、ビンズはすぐに方向転換。再度、礼をし駆け出した――
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