名前
チリンチリンと、ベルの音がかすかに聞こえる。うっすらと目を開けると窓から気持ちの良い日が差し、もう朝を迎えていた。
「出てこないのでお荷物ここ置いておきますねー」それを聞いてハッとした。
俺が営んでいるこの店は近所から人気のあるパン屋なのだが、毎朝8時に材料を頼んである。
開店は9時だ…。
ベッドから飛び起き、急いで着替えて玄関に材料をとりに行った。
昨日仕込んでおいたものを冷蔵庫から取り出し焼き始める。俺が一番好きなのはメロンパンだ
小さい頃から親父の焼き方を見ていたため今では親父より上手に焼ける。
焼き上がりを待っている間、昨日のことを思い出した。そういえば、あの女の子のことどうしよう。OKしたはいいけどまだ何も準備してねえな
この店のこともあるしな。
などと考えている間に香ばしい香りがしてきた。
そろそろかな。と中を覗くといい感じに焦げ目が付いている。一つ、くちに放り込んでから残りの商品を棚に並べた。
開店の時間になると、シャッターを開け看板を出した。しばらくは暇だったがお昼少し前だろうか、
「失礼します」とやけに聞き覚えのある声がした。
「いらっしゃいませ」ってあの女の子だ!
「すいません。お店があることはわかっているのですが、準備の買い物に付き合っていただけないでしょうか?何を準備したらいいか分からなくて…閉店まで待ちますので」彼女は少し不安そうにこちらを見つめてくる。
うーん。たしかに俺も何も準備してないんだよな。
俺はしばらく考えると携帯を取り出し、妹にかけた。
カチャ
「もしもし。照だけど」
「もしもしぃ」
「悪い寝起きか?」
「へ?お兄ちゃんか。寝起きではないよ~」
「今日店頼まれてくんないかな?」
「あ、いいよー。今日ちょうど暇だし」
「おう、ありがとな!今度なんか買ってやる。」
「ほんと?やったー!!」
「またな」
「ばいばーい」
プツッ
俺が電話を切ると
「あの、名前照さんっていうんですね」
彼女は少し驚きながら言った。
ああ。そう言えば教えてなかったな、この子はなんていう名前なんだろう。
そんなことを考えているとその子は心を読んだようにしゃべった。
「私はまなっていいます。改めてよろしくお願いしますね!」と眩しいくらいの笑顔を向け手を差し出した。
俺も。「よろしくな」と一言いった後に
彼女の手を握った
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