はるさらば
すとらんべりー
出会い
「あ、あのう…」
そう言ってドアを開いたのは天使のような可愛い女の子。少し緊張しながら「いらっしゃいませ」と答えた。
女の子は下を向きながら「今日16歳になったんです!」と言った。
あぁ、そういえばもう四月か。
16歳という言葉を聞くたびに思い出す。この国ノピアテラでは16歳になるとパートナーを見つけ、冒険に出て修行するという不思議な決まりがあるのだ。
それも、最近自動化が科学によって進むせいでテラノという魔法を使う必要がなくなり、テラノの技術でもっとも誇りを持っているノピアテラは肩身がせまいらしく、若者に高等なテラノを習得させるために決まりをつくったそうだ。
パートナーになって下さいというお願いはもう嫌という程聞いたが、承諾してはいない。なぜかって?そんなの決まってるだろ。めんどくさい。今回も断ろう。こっちだって多少は胸が痛いんだ
そう思った矢先、予想通り彼女は聞いてきた。「パートナーになってください!!あの。友人にあなたはとても腕の立つ方だと聞いて…。」
「すいません。俺…僕、パートナーの件についてはお断りさせて頂いてるんです。あなたならもっと良い人がつくと思いますよ。」
うん。こんな可愛い子なら腕の立つ野郎なんてうじゃうじゃよってくるだろう。
「そ、そんなぁ」少し潤った目でこちらを見上げてくる。
俺が困ったなあという顔をしていると
「あ、あの!迷惑はかけません!他のみんなは適当にやっているみたいなんですけど…私は!その…両親がシャルロなんですけど」
俺は戸惑いを隠せなかった。シャルロと言えばノピアテラの四大テスラ使い…。しかも、この子両親が。って言ったよな?!
「シャルロって…」思わず口に出てしまった。
「はい。ですから私も両親を継がなければならないんです。もう亡くなっているんですけどね…。どうしてもお願いできませんか?」
そんな責任重大なのますます承諾できない。多少冷たく低い声で
「それこっち側にメリットありますか?」
申し訳ないがやっぱり俺より適任な奴はもっといっぱいいると思うんだ。
「はい!もし、わたしが目標を達成することができたらあなたのお願いをどんなものでも〝3つ〟叶えることができます」
お、大きくでたな。どんなことでもってそんなこと可能なのかよ。そんな俺の心配とは裏腹にかのじょは純粋なまっすぐな顔で見てくる。
____________________負けた。
「分かった。しかし僕にも準備があるから一週間後、ここに来てください」余計な詮索はめんどくさいので心配ないよとでもいうような営業スマイルをひとつ。
彼女は「ほんとですか?!」と目をキラキラさせながら散々ありがとうございますを言って出て行った。
外に出て看板をしまい。表札をcloseにして。シャッターを閉める。そんな毎日やってることが今日はいっそうけだるく感じた。
「すげえ疲れた。」そうして俺はすぐ着替えベッドにダイブして今年一番深い眠りに入った。
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