第2ー31話 食べ物の話ばかりしているのです。
第5ダンジョン部は栃木県那須塩原市から丹澤慶子の車で高速道路を走り、県をまたぎ福島空港へ。そこから飛行機に乗り北海道千歳空港へ着いた。そこで早速お土産を買おうとするタマを全力で止めて電車で札幌駅に向かっていた。
「いや~長旅ですな。後どのくらい掛かるんすか?」
「3時間を長旅とは言わないんじゃない?車なら東京に着くくらいの時間だよ。札幌駅までは後20分かな。」
そうなんです。栃木からも北海道は近くなったのです。残念ながら栃木には空港はないんだけど福島空港があるし、飛行機乗ってる時間は1時間もないしね。昔は新幹線で東京駅か上野駅に着いて山手線で浜松町まで行ってそこから羽田空港までモノレールで行って飛行機乗ってだから大変だったのよ…。
「この後だけど、駅前のホテルを取ってあるからそこに荷物を預けて早めの昼食を食べるわよ。それで札幌の2つのダンジョンの内の1つ…初級ダンジョンの方ね…それをちゃっちゃと攻略して今日は自由行動っていうのはどうかしら?」
「最高ですね!!」
フェミちゃんが嬉しそうに笑う。
「…で、お昼は何が食べたい?」
「北海道初の食事だから北海道らしい物が食べたいな。何がいいかな…。」
テレちゃんはニヤニヤが止まらない。
「ジンギスカンとかお寿司とかはゆっくり食べたいから夜の方が良いかな?あっ、回転寿司とかなら昼でも良いかも…。」
「おいメガネ、せっかく北海道まで来て回転寿司はなかろう。どうせ食べるなら回らない寿司屋で食おうぜ。」
「あら、タマ君。それは間違いよ。北海道の回転寿司を侮ってはいけないわ。レベルが違うのよレベルが。」
もちろん店は選ぶが丹澤慶子の言う通り北海道の回転寿司のレベルは血反吐を吐く程高い。作者が北海道で初めて回転寿司を食べた時、正直東京銀座で食べた時より感動した。そんなに高くないしね。
「ほほ~ん。それは楽しみですな。じゃあ、寿司にする?」
「そんなに美味しいなら食べ過ぎて動けなくなりそう。」
それは個人のさじ加減で何とかしようぜフェミちゃん。
「ラーメンなんてどうでしょうか?やっぱり札幌ラーメンも1回は食べたいですし……あっ、もちろんお寿司も大好きですよ!」
コンちゃんの発言に一同顔を見合せる。
「コンちゃん、それだ!!」
「なら良い店があるわ。連れて行くわね。」
こうしてお昼ご飯が決まった。…ってダンジョンの話をしろ!
ホテルに荷物を預けた第5ダンジョン部はタクシー2台に分乗し丹澤慶子オススメの…って言うか全国的に有名なラーメン店に向かっていた。あっ、それとタマは破れたズボンを履き替えた。
「ん?お?な…何だと!?」
外を見ていたタマが窓に張り付く。
「どうしたタマ?何かあったのか?」
隣に座るテレちゃんがタマの目線の先を見る。
「い…今、カレーの店があったんだが、メニューにギョウザがあったんだ。」
「へ~、珍しいな。」
「それだけじゃない!カレーにギョウザが乗った『ギョウザカレー』なるメニューがあったのだよ!」
「何だと!?」
テレちゃんは珍しくタマの話題に食い付いた。
「ああ、『み○しの』ね。北海道に展開してるカレーとギョウザのチェーン店よ。確かに北海道以外では珍しいメニューかもね。ねぇ運転手さん。」
丹澤慶子に話を振られた運転手さんはハハと笑う。
「観光客の方は驚かれるみたいですね。私達にとっては当たり前過ぎて何が珍しいのかが分からないですよ。」
「うむ。ギョウザ王国栃木にも存在しないメニューが北海道にあったか…。」
タマは眉間に皺を寄せウンウンと頷く。作者も最初は驚いたが食ったらこれが美味いのよ。まあ、予想通りの味なんだけどね。
件のラーメン店に着くと流石の人気店、11時を少し過ぎた程の時間にも関わらず既に幾らかの行列が出来ていた。
「おお!これは期待が高まりますな!さ~て何ラーメンにしようかな~。」
タマはスキップしながら行列に並んだ。その後に恥ずかしそうに皆は並んだ。
「タマ、高校生がスキップしながら行くなよ。恥ずかしいだろ。」
「そうか?楽しい時にはスキップだろ?なんなら手をパンパン叩きながらスキップしても良いくらいだぞ。」
「ぜっっったいにやめろよ…。」
「うお~!ラーメンラーメン!!」
テレちゃんがタマに苦言をていしていると後ろから手を叩きながらスキップしてくる子供が近づいて来た。
「こら!塚地君!もう五年生なんだからスキップは止めなさい!恥ずかしいでしょ!」
さっきスキップしてた高校生がここにいますよ。
「別にいいじゃんか先生。ほら皆も早く並べよ!」
先生と呼ばれた女性と3人の子供が塚地の後ろに並んだ。
「ほらなタマ。小学五年生でもスキップして注意されてただろ?お前もう高校生なんだから…」
「あっれー?先生!俺こいつの事知ってる!」
テレちゃんの言葉を遮る様に塚地はタマを指差して叫んだ。
「失礼でしょ!!申し訳ありません。」
先生は平謝りだ。
「いえいえ良いんですよ。タマ君は小学生に『こいつ』呼ばわりされても仕方ない人間ですから。」
酷い事言うな…丹澤慶子…。
「タマ?先生!やっぱりこいつマーベリックの玉乃井だよ!」
先生もたまらず塚地の口を塞ぐ。
「重ね重ね申し訳ありません。…って本当にマーベリック『うっかりさん』の玉乃井さんなんですか?」
「うむ。いかにも私はマーベリックの玉乃井樹である。少年よ、サインしてやろうか?」
「いらな~い。雑誌で見て冴えない兄ちゃんだと思ってたけど、本物はもっと冴えないな。『うっかりさん』ってのもダセェし。」
「よし!!お前には特別なサインをしてやろう!!」
タマは鞄からマジックを出して塚地のおでこに『クソガキさんへ タマちゃん』とサラリと書いた。
「うわ!何すんだよ!」
「喜べ。油性マジックだぞ。」
「チクショー訴えてやる!!」
2人が取っ組み合いのケンカになるすんでのところでタマには丹澤慶子の鉄拳が、塚地には同級生らしき女の子の前蹴りが炸裂した。
「ウチのバカがごめんね。」
丹澤慶子が頭を下げる。
「いえ、ウチのバカが重ね重ね申し訳ありません。」
女の子も頭を深々と引率の先生と共に下げる。
「申し遅れました。私、札幌市立手稲第3小学校5年の安部光里(あべひかり)と申します。玉乃井さん達は確か…え~と…群馬?いえ…茨城でしたっけ?」
「あ…栃木です…。」
うん…よくある間違いだね…。まあ、栃木県人も近畿地方とか中国地方とかは曖昧だからね。え?俺だけ?
「失礼しました。なぜ栃木から札幌に来られたんですか?」
物凄くしっかりした子だな…。
「合宿で札幌の上級ダンジョン攻略に来たんです。今日は初級ダンジョンに行くんですけどね。」
女の子の丁寧な言葉使いについ丹澤慶子も敬語になる。
「『慶子先生』が『敬語』…。ぷぷぷ…」
久しぶりにコンちゃんがダジャレを言ったが皆聞こえないふりをした。
「奇遇ですね。私達もこれから『大通りのダンジョン』に行くんですよ。栃木はダンジョンがたくさんあるんですよね?羨ましいです。」
光里ちゃんが会話を続ける中、前蹴りで5メートル程吹っ飛んでいた塚地が戻って来た。怪我はないようだね。頑丈で何よりだ。
「ほ~ん…じゃあ玉乃井、どっちが先にダンジョンクリアするか俺達と勝負しようぜ!」
「目上の人には『さん』を付けろ。よかろう…その勝負受けて立ちますぜ!所詮小学生…完膚なきまでに打ち負かしてくれよう!」
その態度が『さん』を付けてもらえない理由なんじゃないのか?
「ちょっとタマ君、小学生と勝負って…」
「まあ、良いじゃありませんか。この子達にも刺激になりますし、お願い出来ませんか?」
先生の言葉にメガネは黙るしかなかった。
「良いんじゃないかな。お手柔らかにお願いね。」
フェミちゃんは子供達にニッコリと笑いかける。
「さて…その前に腹ごしらえだな。ほら順番来たぞ。」
こうして合宿1日目に何故か小学生と勝負する事になったとさ。え?ラーメンはどうだったかって?タマと塚地が早食い勝負をして鼻から麺を出した事以外は大変美味しくいただきました!
次回!!小学生と大人気なく勝負!………つづく!!!
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