第2ー25話 今年も海の幸を味わえそうなのです。
「いや~昨日は酷い目に会いましたぜ。」
タマは部室に入るなりみんなに話しかけた。
「酷い目って何かあったんですか?」
コンちゃんが乗馬の雑誌から目を離してタマを見る。マー君は馬じゃないぞ。
「登校の時にテレちゃんには話したんだが、母ちゃんとバトルになってな。」
「バトル?」
「ああ、何故かホシリンから500万円の大金が振り込まれていたのだよ。そしたら『オレオレ詐欺か?じゃなければ何何詐欺なのか?』って怒り出してな…。」
そういえばそんな話があったね。
「え!?500万も貰ったの?」
メガネが120円(税別)の菓子パンを食べながら言った。あれだよ…何か半液体の白い砂糖がお好み焼きのマヨネーズみたいにかかってる平べったいヤツ!あれ美味しいよね!
「それでな、『そんな子に育てた覚えはない!』って言いながらローリングソバットを仕掛けてきてな…。」
「ローリングソバット?」
「だから俺は回し蹴りからバックを取ってジャーマンスープレックスを返したワケだよ。」
「ジャーマンスープレックス?」
「そしたら母ちゃんが受け身からの素早い回転で脇固めを返してきてそこで俺のギブアップで終了だ。」
「ごめん…何の話?」
「親子喧嘩の話だぞ。」
少なくとも一般的な親子喧嘩の話じゃないね…。
「それでどうなったの?」
「うむ。ホシリンに電話して詳しく説明してもらったよ。一時間くらい話したら納得してくれた。」
ホシリンもいい迷惑だな。そもそも親が最初から未攻略ダンジョンの話をちゃんと聞いていれば良かったんだからタマの母ちゃんにも責任はあるよね。
「それでな。俺の母ちゃんへの借金返済した残りを日頃迷惑をかけてる第5ダンジョン部に寄付するとか言い出してな…。俺は言ってやったんだよ…迷惑なんてかけてないってな。」
どの口が言うんだ?
その時、部室のドアがひしゃげる勢いで開き丹澤慶子が入ってきた。
「あ、先生お疲れ様です。」
「タマ!!今あなたのお母さんが!!」
「ああ、今みんなに話してた所ですよ。お金寄付しに来たんでしょ?」
「あのね…、知ってたならまずは私に言いなさいよ…。」
丹澤慶子は頭に手を当てて溜め息をついた。言ってなかったのか?
「すんません。…で、母ちゃんはもう帰ったんすか?」
「いえ、寄付にも色々と手続きがあるから書類とかを用意してるの。お母さんは今、校長とオセロをして待ってもらってるわ。」
大変だな校長…。っていうかなぜ学校にオセロが?
「校長に伝えておいて下さい。母ちゃんはオセロ弱いくせに勝つまでやるから程よく負ける事をオススメすると…。」
「自分で伝えなさい。ほら行くわよ!」
「え?何で?」
「元はあなたのお金だからね。あなたも同席するのが筋でしょ?」
「え~…めんどくさい。」
タマは丹澤慶子にボディを一発入れられ連行されて行った。
「いや~酷い目に会いましたぜ。」
「タマ、最速のデジャヴだな。お疲れ。」
帰ってきたタマにテレちゃんが労い(?)の言葉をかける。タマと共に丹澤慶子も部室に入ってきた。
「とてもありがたい事だけど、こういう重大な事はまずは私に話しなさいよね。」
「ふあ~い。」
「あっそうだ。先生、今年は夏休みの合宿やるんですか?」
寄付の件が一段落したところでフェミちゃんが聞いた。
「そうね。やろうと思ってるわよ。」
「やっぱり第1と合同で大洗ですか?」
「そうね…」
丹澤慶子は少し考える。
「いや、第1は顧問代理で鈴木さんと山内さんが引率するみたいだから今年は別行動にしましょうか。」
山内も来るのか…ハンクスは大丈夫だろうか?
「えっ。じゃあ、どこに行くんですか?」
「北海道よ。」
「北海道?ずいぶん遠くまで行くんだな。」
テレちゃんは予想外の場所に驚きの声を上げた。
「おのれ丹澤先生!!俺の寄付した金で大豪遊するつもりですな!!海の幸につぐ海の幸…ジンギスカンを挟んで海の幸をビールと共に楽しむつもりだな!!」
「否定はしないわ。」
しないのか!?
「私北海道行くの初めて!楽しみだな~。」
フェミちゃんはウキウキが止まらない。
「私もです!ウニ食べたいです!ウニウニ!」
コンちゃん、夏はウニのシーズンだから最高だぞ!
「私もだ。先生、観光する時間もあるんですか?」
テレちゃんも冷静を装っているが口元がにやけている。
「もちろんよ。ただ1日だけ私に付き合ってもらうわよ。」
「何かあるんですか?」
「それは秘密。」
「丹澤先生が秘密にする事か…恐怖しか感じませんな…。」
タマはガクブルと震える。
「北海道のダンジョンと言えば札幌に2つと小樽に1つ後、釧路に1つの4つしかないですよね。」
メガネが真面目に北海道のダンジョンを羅列する。
「そうね。今回は釧路は行かないわ。札幌小樽から遠すぎるからね。目標は札幌の上級ダンジョンの攻略よ。」
そうなんです。北海道はデカイ…同じ北海道でも札幌から釧路までは300キロ以上あるのです。300キロっていうと東京から北上したら埼玉、栃木、福島を通り越して宮城県まで行けちゃう距離だからね。
作者が札幌に住んでいた時、栃木の友達が二泊三日で札幌と函館と釧路と網走に行きたいと言ったから「北海道なめんな!!」と激怒した事があるぞ。
「ああ、なるほど。あそこを攻略すれば今後役に立ちそうですもんね。」
「そう言う事。」
「先生もメガネももったいぶらずに教えなさい!」
「はいはい。札幌の豊平川沿いにある上級ダンジョンの報酬は『スキル効果アップ』なんだよ。スキル効果が120%になるんだ。」
「ほ~。それは興味深いな。」
「ただ、そのダンジョンではスキルが使えないんだよね。」
「じゃあ、戦闘向きじゃない俺もテレちゃんもコンちゃんは何も出来ないじゃないか?」
「アイテムサポートしてもらうから大丈夫だよ。」
「まあ、日程その他は追って知らせるわね。」
今年の合宿は北海道か~。いいな~。
さておき、スタンプラリーもまだ終わってないし、夏休みには宿題もある事を忘れるなよ!
次回!!スタンプラリーダンジョンの1つ「黒磯駅前ダンジョン」に行くぞ!!………つづく!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます