第59話 やる気が溢れ出すのです。
時は少し前に遡る。
高崎大雅高校と戦ったその日の夜、家に帰ったメガネはフェミちゃんと電話で話していた。他愛のない会話の後、メガネが切り出す。
「…でさ、今日戦ってみてフェミちゃんはどう思った?」
『そうね…。レア度やレベルだけじゃ越えられない壁みたいなモノを感じたかな…。』
「僕もだよ。ウチにはタマ君っていう何て言うか…反則じみた人材がいるから何とかなってきたけど、これからもっと上を目指すなら個々の力を伸ばすしかないと思うんだよね。」
『うん。』
「…で、今日戦った大雅高校の野崎さん、遠距離攻撃型なのに僕達より戦闘能力の高いマー君と弓で対等に渡り合ってたじゃない?あれは体力と技術のなせる技だと思うんだよ。」
『あれには驚いたね。』
「うん。もちろん野崎さんのポテンシャルの高さからなんだろうけど、技術を学ぶ事の重要性を感じたんだ。…それで僕も付け焼き刃になっちゃうだろうけど今から学ぼうと思うんだ。」
『私も考えてる。1つだけ方法は思いついてるんだけど、メガネ君は何か考えがあるのかな?』
「丹澤先生に弟子入りしようと思ってるんだけど…。」
『はは…。やっぱりそれしかないよね。明日一緒にお願いしに行こうか。』
「そうだね。」
『後、2人だけの時はリョウ君って呼んでいい?』
「もちろん。じゃあ、僕もトウコちゃんって呼んでいいかな?」
『もちろんだよ。』
むう…、俺達は何を見せられているんだろうか…。
翌日の昼休み、メガネとフェミちゃんは職員室にいた。丹澤慶子はチーズタラ、サラミ、乾燥ホルモンを食べながらノンアルコールビールを飲んでいた。まさかそれが昼食なのか?ノンアルコールとはいえ、昼間に、しかも学校で飲むとは強者である。
「あら。2人揃ってどうしたの?あ…まさか…交際宣言とか?」
ノンアルコールなのに酔っぱらいみたいな事言うなよ。
「ち…違います!!先生に折り入ってお願いがあるんですけど…。」
「なんだ…。つまんないの。…で、お願いって何かしら?」
本当にノンアルコールだよね?
「先生!俺達を弟子にしてください!」
頭を下げる2人。
「いいわよ。」
またあっさりと…。第5ダンジョン部創った時もこんな感じだったね。
「え?理由とか聞かないんですか?」
フェミちゃんが困惑気味に聞く。
「大体分かるわよ。この前の試合で自分達に足りないモノを痛感した…そんなところかしら?」
「まあ…そんなところです。」
「じゃあ、早速だけど、これから毎日『代謝アップのダンジョン』でやりましょう。」
盆栽園にあるエロい敵の出るダンジョンだね。
「ありがとうございます。でも何であそこなんですか?」
「2人の戦闘タイプが違うからよ。メガネ君は私が…、フェミちゃんは小平ブレイカーが教えるわ。」
「小平ブレイカーさん手伝ってくれるんですか!?」
吉祥寺ダークナイトに勝るとも劣らない伝説のプレイヤーにフェミちゃんは興奮する。
「彼には嫌とは言わせないわよ。あれからたまに一緒に飲んでるんだけど、だいぶ奢ってあげてるからね。」
その弱味につけ込んで脅すわけだな。
「おい…言い方に気をつけなさいよ…。」
謝るけどナレーションとの会話はしないで下さい…。
「それじゃ、今日からよろしくお願いします!!」
「なあ、タマ。」
「何だ?テレちゃん。」
フェミちゃんとメガネが丹澤慶子に弟子入りして3日目、そしてあの取材の翌日部室にはタマとテレちゃんしかいない。ハンクスは…え~と…行方不明だ。
「フェミちゃんとメガネは丹澤先生と特訓しに行ったぞ。」
「知ってるよ。…っいうか、さっきテレちゃんから聞いたんじゃないか?」
「そうだけど…。私達は何もしないのか?」
「何かするって言っても俺は戦わないからな~。何をすればいいのか分からん。」
「じゃあ、私に付き合えよ。」
「ん?テレちゃん何かするのか?」
タマがそう言うとテレちゃんは那須塩原市ダンジョンマップを広げる。
「ここなんだけど…。」
テレちゃんはマップの下の方を指差す。
「なになに…初級『農協ダンジョン』か。通称『オバケダンジョン』って書いてあるな。」
「そう。敵がゾンビとか幽霊とかそういった類のヤツしか出ないダンジョンだよ。
私、いまだにオバケ嫌いだろ?タマが付いていてくれてるから何とかなってるけど…やっぱりいつまでも甘えてられないっていうか…。だから克服したいんだよ。ここなら今の私とタマなら楽勝だろうし…。ダメかな?」
「うむ。よかろう。合宿の時のお礼もハンクスのせいで中途半端になっちゃったしな。」
「助かるよ。ありがとう。」
「おや?マップに『デートに最適』って書いてあるぞ。じゃあ、これはデートなのか?」
「ち…違うぞ!断じて違う!」
そんなにむきになって…可愛いぞテレちゃん。
こうしてタマとテレちゃんは農協ダンジョンでテレちゃんのオバケ嫌い克服特訓をする事となった。「デートじゃない!」と断言したテレちゃんだったがその晩からソワソワする事となる。しかし、テレちゃんも、そしてタマも忘れていた。タマがダンジョンに入るともれなくマー君が付いてくる事を…。2人きりになれなくて残念だったね…テレちゃん。
一方その頃、行方不明…というか単独行動をとっていたハンクスは…木に吊るされていた。何でだ!?
次回!!ハンクスの身に何が!?…………つづく!!
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