第14話 部歌を作るのです。

「ゆけ~ゆけ~第5ダンジョ~ン部~。」

「なにそれタマちゃん。」

 金曜日の放課後、例によって部員全員が部室に集まっていた。タマが突然歌い出し部室は微妙な雰囲気に包まれていた。

「第5ダンジョン部の歌を考えてきたんだ。」

「え~と…。タマ君、暇なの?」

 フェミちゃんが呆れて言う。

「あぁ、暇さ。では聞いて下さい。『行け!!第5ダンジョン部』」


作詞 タマ

作曲 タマ

ゆけ~ゆけ~第5ダンジョ~ン部~

並み居る敵をなぎ倒し~

ヒノキの香りが漂えば~

士気高まりて~奮い立つ~

乙女の槍が~闇を裂く~

あ~あ~う~う~

ヒノキの香りが漂えば~

友の~思いを背に受けて~

精霊操るう○こ野郎~

あ~あ~う~う~

ヒノキの香りが漂えば~

視力が悪くてめだたない~

メガネの剣が空を斬る~

あ~あ~う~う~

ヒノキの香りを武器にして~

突如~覚醒~最強の~

技を~繰り出すナイスガイ~

ゆけ~ゆけ~第5ダンジョ~ン部~

ゆけ~ゆけ~第5ダンジョ~ン部~~~



「ありがとうございました。」

「………。」

「………。」

「………。」

「………。」

 部室に静寂が訪れる。静寂の擬音である「シーン…」すらも聴こえない静寂…。

「どうかな?みんなの意見を聞きたいんだが…。」

「え?意見?そうね………。そもそも、ヒノキの香りをメインに持ってきたところに度肝を抜かれたわ。」

 フェミちゃんがなんとか感想を捻り出した。

「タマちゃん、う○こ野郎はただの悪口だと思うんだけど…。」

 う○こ野郎ことハンクスがもっともな意見を言う。

「僕のも普通に悪口だよね。後、『剣が空を斬る』って攻撃外してるって事だよね?」

 メガネも正しい。メガネだけアダ名普通に出てるし。

「それに自分だけよく言い過ぎじゃないかな?ナイスガイはダサいけど…。久しぶりに聞いたわ。」

「なんだいなんだい!!人が折角一生懸命考えてきたのに!!文句ばっかり言いやがって!!」

 一点の曇りのない逆ギレである。居酒屋の一件の反省はないのかタマ。

「騒がしいわね。どうしたの?」

 いいところに来てくれた丹澤慶子!!

「先生!!第5ダンジョン部の歌を…」

「却下です。」

「………。」

 最近タマに厳しいな丹澤慶子。でもタマはそんな事では挫けない…というか忘れる。

「明日のダンジョンなんだけど、今のあなたたちに丁度良いのが大田原(隣街)の酒屋のダンジョンなんだけど良い?」

「良いですよ。この前と同じで学校に9時半集合ですかね。」

 メガネが確認する。真面目か!!…真面目だよね。

「いや。ちょっと遠いし、ショップで装備やアイテムを買おうと思ってるから学校に9時集合で私の車で行くわ。後、ダンジョンに入るのに500円かかるからよろしくね。」

「了解しました。」

 一同返事をする。

「それと明日はご飯奢らないからね!!」

 丹澤慶子のケチ。

「なんですって?」

 だから、なぜナレーションが聞こえる?

「先生?」

「なんでもないわ。じゃあ、今日はもう帰って明日に備えて休みなさい。夜更かしは厳禁よ。」


 こうして明日のダンジョンの予定が立った。各々家路につく。その帰り道。

「ふふんふふ~ん。ふふんふふふふふんふ~んふ~ん。」

 みんな『行け!!第5ダンジョン部』を口ずさんでいた。


 良かったなタマ。意外と耳に残っているみたいだぞ。ただ、この先歌われる事はまずないであろう。なぜならほとんど悪口だからだ!!つづく!!


 



 

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