第8話 進撃するのです。

 最初に戦ったのが強敵だったせいか、その後のザコ敵は撫でるように倒して行けた。

 もちろん丹澤慶子の適切な指示と援護があっての事だ。かわいそうだが、タマが邪魔しなかったのも順調の理由だ。

 でも忘れてはならない。強敵マンティコアにとどめを刺したのは偶然とはいえタマだった事を…。偶然だったとしても…運だったとしてもだ。

「このダンジョンは地下3階構造よ。つまり、ここが最下層ね。みんな体力は大丈夫?」

「まぁ、何とか…大丈夫ですね。」

 ハンクスがかっこつけて答える。腹立つ。

「僕はちょっとヤバいですかね。」

 メガネ!!根性出せや!!

「私はまだ行けますよ。」

 言葉とは裏腹に前衛のフェミちゃんは傷だらけだ。健気な子だ…。

「俺はピンピンしてますぜ!!」

 でしょうね…。タマ、お前何にもしてないじゃん…。

「ちょうどそこにトイレもあるし少し休憩してから行きましょうか。ボス戦もあるしね。10分休憩!!」

 後少しである。頑張れ第5ダンジョン部!!負けるな第5ダンジョン部!!


 休憩もそろそろ切り上げようというのにハンクスがトイレから出てこない。間違いなくウ○コであろう。いるよね。こういう人。休憩始まってすぐトイレ行けばいいのに、もうすぐ休憩終わるって時に「トイレ行ってくる~。」って言ってなかなか帰ってこないヤツ。

 そりゃトイレ行くなとか、途中で出て来いとは言わないけどさ。目くじら立てて怒ったりはしないけど、みんなをイライラさせるよね。

 読み手の皆さんも気を付けよう。作者も気を付ける。

「いや~。ごめん、ごめん。待った?」

 ハンクスが謝りつつも悪びれる様子もなく出てきた。腹立つ。

「ううん。全然。」

 にこやかに答えるフェミちゃんの笑顔にもいささかのイラつきが見受けられる。

「ハンクス君。ダンジョンはチームワークが大事よ。時間は厳守ね。」

 みんなが言いづらかった事をハッキリと言ってくれた丹澤慶子に拍手!!


「先生、ここのボスって何なんですか?」

 タマが戦いもしないのに聞いた。

「近所のダンジョンボスも知らないの?ここは山盛りスライムよ。」

「山盛り?」

「見れば分かるわよ。それと、ボス戦は私は手も指示も出さないわ。あなたたちだけでやりなさい。」

 今まで手取り足取り皆を導いてきた丹澤慶子…愛する教え子たちを遂に千尋の谷に突き落としたのであった。ということは丹澤慶子は獅子?獅子慶子…語呂が悪いな…慶子ライオン……ライオン慶子……ライオン丸慶子……ライオネス慶子……ライオネス慶子である!!意味はあまり考えないで欲しい。なぜなら作者は今ウイスキーを2杯ほど飲んでほろ酔いなのだ!!


 一行は古めかしい大きな扉の前にたどり着いた。丹澤慶子がみんなに語りかける。

「さぁ、この扉の向こうにボスの山盛りスライムがいるわ。マンティコアと戦うっていうイレギュラーがあったおかげであなたたちのレベルは想定以上に上がってる…。簡単には勝てる相手ではないけれど、あなたたちならやれるわよ。それぞれスキルの確認をしてみて。」

「私は『連撃』と『堅固』です。」

 フェミちゃんが答える。

「僕は『ソードスラッシュ』と『兜割り』です。」

 メガネが答える。

「僕は『ヒールエレメンタル』と『ファイアエレメンタル』ですね。」

 ウ○コしたてのハンクスが答える。

「あの……スキルってなんですか?」

 タマが答える…というか聞く。

「……え?」

「いや…スキルってなんですか?初耳なんですけど?」

 一定温度であるはずのダンジョンの気温が少し下がったような気がする。

「いやいやいやいや…。タマ君、本気で言ってる?当たり前過ぎて言わなかったけど、頭の中に流れ込んできたでしょ?マンティコアと戦ってた時のフェミちゃんが『連撃』使ってたし、ハンクス君だって普通に『ヒールエレメンタル』使ってたでしょ?」

「僕も『スラッシュ』使ってたんですけど…。」

 メガネはスキルも目立たない。

「別に何にも…。まぁ、どうせオイラは『うっかりさん』ですから。ほんのり老舗旅館のお風呂の香り(ヒノキのかほり)を発するくらいしか出来ませんからね。」

 またいじけて地面に落書きを始める。見苦しいぞタマ。

「タマちゃん、きっとその内に覚えるよ。だから元気出して…。」

 ハンクスが親友らしく優しく慰める。今まで腹立つって言ってごめんね。お前良いヤツだよ。

「そうだよ。僕もそう思うよ。」

 メガネが乗っかる。慰めも目立たない。

「そうよ。私たちがここに居られるのはタマ君が新しいダンジョン部創ってくれたおかげなんだから…。感謝してるのよ。」

 フェミちゃんいい子だな~。

 慰められたタマの目にはキラリと光る何かがあった。その光りを袖口で拭う。

「みんな…ありがとう…。俺、自分が今、出来る事を一生懸命頑張るよ!!」

「タマ君、その意気よ!!さぁ!!準備はいい?3人とも頑張って!!」

「………。」

 思わず本音が出たな丹澤慶子…タマを抜いた3人を激励したね。3人を肉体的千尋の谷に突き落とし、タマを精神的千尋の谷に突き落とした。教育者としてどうかとも思うが、先生だって人間さ。仕方ない仕方ない。

 …で、次回ついにボス戦!!つづく!!

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