描写の理屈

 描写も、テンプレ系作品とオリジナル系作品で変わってきます。


 テンプレ系のやり方の基本は、一品ずつです。既知の事柄だらけにしておいて、一つずつ新規の事柄を出していくので、読者の負担が軽く、読書にまったく馴染みがない読者にも楽しめる形態にまで発達しています。

 「一つずつ」という基本が大事になります。なので文章も、極端に端折ったものを使用しても読者は問題なく読み取れます。描写が不要になるほどです。


 オリジナル系の方では、一度に出してしまうので読者の負担は極大になります。文章は一つずつしか出せないものと思われがちですが、実際は言及する文章量で一度に出されたと感じたり、一つずつ出てきたと感じたりするのです。


 テンプレ系の文章は、漫画的です。注目すべき一つの事と一緒に、ひとまず受け流してよい情報として全体を背景的にセットにしてあるので、予測変換しながら読み込んでいけます。


 オリジナル系の文章は、絵画的です。絵の中の情報すべて、受け流してよいものはなく、文章で流れてくるパーツひとつひとつを全体構成を考えながら読者が組み立てねばなりません。


 テンプレなら、読者の頭の中になんらかの雛形が漠然と形成され、それをマニュアルにして読書の際の手引きと出来るように誘導してありますが、オリジナルはそういう手引きは一切ないんです。


 なので、オリジナル系の描写はクドイくらいに丁寧に、一つひとつのパーツをその場でしっかり描写して伝えねばならないのです。マニュアルを渡すという事でこの手間を省いたのがテンプレ系です。


 テンプレはプラモデルで、オリジナルはパズルです。マニュアルに従って組み立てるか否か、組み立てた現物を愉しむのがテンプレで、組み立て作業そのものを愉しむのがオリジナル。

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