復讐学園
轟 闇風
第1話 復讐の幕開け
私立白峰学園。
それは成績がトップレベルの天才しか入学できない学校。
そこを卒業したものは、皆必ず国を動かすレベルまで成功を収めることができるという。
だがそれはもう昔の話。
今では、その異色の学歴を目的に金の力で入学する者達が増加。
かつて天才を生み出していた学園は、今では約9割が金の力で入学した、知能は凡人以下の人間ばかりのレベルまで成り下がっている。
残りの1割の天才は、他9割の金持ちの玩具、暇潰しやストレス発散のための道具として扱われている。
ここ数年の間に、数々の天才たちが、社会に名を残すこともなく消えていったことか。
ここにまた1人、地獄と化した白峰学園に通う生徒がいた。
彼の名は、黒石和也。彼もまた、天才であった。
小、中学時代、彼は学校トップの成績を収め、スポーツでも所属していた部で何度も全国大会で優勝している。
欠点は、家がかなりの貧乏だということくらい。
生活の苦しい家族を助けるため、必死に努力してここまで登ってきた。
しかし、この学園に通ううえで、家が貧乏というのは最も大きな弱みだった。
入学して早速、虐めの標的として目をつけられる事となった。
暴力や窃盗、器物破損など様々なことで虐められる。
そんな彼の唯一の支えは、同じ学園に通う幼馴染の笹山葵だった。
彼女もまた、和也と同じく天才だった。
保育所から同じクラスだった彼女は和也とは仲が良く、昔から授業の成績を競い合っていた。
家もそこそこ金持ちであったため、虐めの標的とされる事はなかった。
和也が虐められているのを見て、唯一助けの手を差し伸べたのは彼女だった。
もともと仲の良かった2人が付き合い始めるのは、時間の問題だった。
和也と葵が付き合う、その噂が全校生徒に広まった。
それが彼女の運の尽きだった。
これまで目をつけられていなかったのが、付き合いだしたことをきっかけに、標的が変更された。
最初はただの悪口。次に窃盗。窃盗から器物破損。次に暴力。暴力から虐待へ。
日に日に彼女の身体には、痣や切り傷が増えていった。
それでも葵は、和也の前では必ず笑顔でいてくれた。
そんなある日、彼女の死体が学校で発見された。
9月7日の事だった。その日は、俺の誕生日でもあった。
死因は、校舎の屋上から飛び降りた事による転落死。
この事件は自殺として判断された。
葵の葬式には、クラスの全員が呼ばれた。
その最中、
「やっと死んだね」
妙な発言が聞こえた。
やっと死んだ?
何いってるんだこいつら。
やっぱりこいつらが葵を殺したのか?
下を向き、気付かれないように聞き耳をたてる。
「少しモテるからって調子に乗りすぎなのよ」
「だから少し教育してあげたら、簡単に死んでくれちゃって」
「有り難いけど、残念ね。また玩具が壊れちゃった」
「いいわよ別に。まだ1つ残ってるから」
「静かに!聴こえるわよ」
「別にいいわよ。聞かれたって何も出来ないんだし、何かしたら私達の親が黙ってないわ」
話していたのは、いつも和也を虐めていた女子生徒達だった。
彼女らの親はIT企業の社長や、資産家などで、不祥事を起こせば親が必ずもみ消している。
今回の事もきっとそうしたのだろう。
仮にも葬式の最中にも関わらず、楽しげに話し合っている彼女らの姿を見ると、無性に殺意が湧き上がってくる。
初めて抱くどす黒い感情を必死に押さえつけながら、彼女らの話に耳を傾ける。
「そういや葵死ぬ前に鞄に何入れてたの?」
「それがあの貧乏人に渡す誕生日プレゼントみたいなのよ」
「え!何それ?何があったの?」
「腕時計よ。あんな貧乏人に行き渡るくらいなら高貴な私が貰ってあげようかと思ったんだけどね」
「どうしたの」
「あまりにもダサいしどう見たって安物だからね。後で粉々に砕いて捨てる」
「見せてよそれ!」
「いいわよ。でも目が汚れるかもね」
そういって、そいつはポケットから箱を取り出した。赤く飾られた箱の蓋が乱雑に開かれ、中から腕時計が姿をのぞかせた。
「うわぁ、本当にダサいね」
「でしょ?だから葬式終わった後でそこらの道路にでも投げつけて砕きましょ」
「あ!その後はあの貧乏人の家の前にでも捨てておきましょうよ」
「いいわね!」
最低な会話をしている女子生徒達。彼女達の発言はそこから先はほとんど聞き取ることが出来なかった。
葬式が終わり、その日の深夜。
和也は寝ないで、女子生徒達が訪れるのを待っていた。
深夜1時ごろ、家の前で数人の男女の声がする。
その男女達は、家の前でごちゃごちゃと騒いで帰っていった。
玄関の扉を開くと、目の前に何かが転がっている。
潰されて、タバコの吸い殻が詰め込まれた赤い箱に、所々砕かれて、もう二度と動くことのないであろう腕時計。
これは、夏休み中のデートの最中、時計屋の前を通りかかった和也が欲しがっていたものだ。
『その時計が欲しいの?』
『うん。でも今の俺の家にこんな高価な物買う金がないから』
『ふーん。そうなんだ』
あの時はどうでも良さそうにしていた彼女だったが、きっとその時に計画してくれていたのだろう。
箱の横には、燃やされた紙くずがあった。
ほとんどが焦げたり燃え尽きてしまったりして、何が書かれているのかわからない。
「ごめん、葵。俺が弱いばっかりにお前に迷惑かけて、死なせてしまって」
壊れた腕時計を左腕にはめる。
破片が腕に突き刺さり、血が流れるが今は何も感じない。
「ありがとう葵。もう動かないけどこの時計、ありがたく貰っておくよ」
決めた。あいつらを……。
「葵を苦しめて死なせた奴ら、1人残らず殺してやる!」
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