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遥は自分の両手を見る。小さな手。(まるで照子の手みたいだ)それから自分の服装を確認する。遥は薄紫色の可愛らしいドレスを着ていた。遥はすぐ近くにあった大きなカーテンのしまったぴかぴかの鏡のような大きな窓ガラスに映った懐かしい自分の姿を観賞する。遥の体はとても小さくなっていた。いつの間にかそこには七歳のころの遥がいた。
遥がその場に立ち尽くしていると見慣れた人物が目に留まる。出会ったころの夏だ。遥の前でも、ちゃんと猫をかぶっていたころの夏がいる。オレンジ色のドレスを着た美しい八歳の瀬戸夏がそこにいる。
遥は笑いをこらえるのに必死だった。頑張ってお嬢様を演じている。一生懸命、瀬戸夏を演じている夏。初々しい演技。まるでお遊戯会みたい。でも、それなりに様になっている。じっと様子を観察していると夏が遥の視線に気がついてこちらを見た。(夏と目があって、ちょっとだけ遥はびっくりする。でもその感情は表には出さない)
ここは私の夢の中の世界。私が主役の世界。なら少しくらい大胆になってもいいよね。遥は夏に向かって歩き出す。夏が遥を見ている。二人の距離が近くなる。……どきどきする。初めての経験。私にうまくできるだろうか? 応援してね、夏。
遥は夏の目の前に立つ。そこで遥はにっこりと笑った。
「ごきげんよう」
遥は夏に挨拶をする。
「初めまして。私は木戸遥と言います」
夏はいつものように作り物の笑顔をその顔に浮かべている。
「はるか?」
「遥。よろしく」
遥は夏に自分の小さな右手を差し出した。その手を夏は遠慮がちに握ってくれる。夏の手はとても暖かい。それにとっても柔らかい。
「初めまして」夏が言う。
「お名前を伺ってもよろしいですか?」遥が言う。
「瀬戸夏です」
なつ。それはとても素敵な名前だ。
遥は夏の手を離すことができない。夏から目をそらすことができない。これは全部夢だから、手を離したら、目を離したら、……その瞬間に、目の前の夏が消えてしまうかもしれない。
「瀬戸夏さん」
「はい」
遥は一度深い呼吸をする。
「瀬戸夏さん。私とお友達になってください」
七年前に言えなかった言葉を木戸遥はようやく瀬戸夏に伝えることができた。(夏は少し驚いた表情をする)
遥の告白を受けて、夏はにっこりと笑った。
「喜んで」と夏は言った。
出会いが人を変える。
出会わなければ、人はいつまでたっても変わらない。
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