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「わかった」夏は言う。遥は温め直した料理を二人分用意してテーブルに置くとエプロンをとって椅子に座る。二人の席の前には、丸いお皿と銀色のナイフとフォークのセット(この研究所では珍しく凶器にもなり得るようなきちんとしたものだ)が置かれている。お皿の上にはパンがある。丸いパンだ。(パンには一つの切れ目が入っている)パーティーの主食はご飯ではなくパンのようだ。夏と遥はお互いの顔を見つめあって、沈黙する。澪は二人の様子をディスプレイの中からじっと眺めている。遥はなにも言わない。なにかを期待するような目で夏の顔を見ているだけだ。どうやら夏の言葉を待っているようだ。なぜか遥は夏の言葉でパーティーを始めたいと思っているらしい。(……このタイミングでなぜ私に? ……相変わらず遥の行動はよく理解できない)

 遥はいつまでたってもパーティーの開催を口にしない。夏の言葉を待っている。このままではまたせっかくの料理が冷めてしまう。夏は仕方なく自分の口と言葉を使ってクリスマスパーティーを始めることにする。

「じゃあ、クリスマスおめでとう。照子誕生日おめでとう」夏はココアのたっぷり入った丸いカップを手に取ると、それを掲げてわざとらしい笑顔でそう言った。

「おめでとう」夏と同じようにカップを持って、目の前にいる遥が言った。

「……ありがとう」ドアの向こう側から、とても小さくかすれた声で、……確かに誰かがそう言った。

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