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「遥の夢ってなんなの? やっぱり照子と暮らすこと?」夏は昨日の夕食のときの二人の会話を思い出している。
「照子が笑うことかな?」嬉しそうな顔で遥は言う。その言葉を聞いて夏は少しだけどきっとする。
「照子の本当の顔を見ること。それが私の夢」
遥は視線を照子の部屋の方向に向ける。そこには白い壁があるが、遥は壁越しに椅子に座って大人しくしているだろう照子の姿をその目に見ている。そうやっていつも遥は照子を見ている。遥の中にいる照子の姿を観察しているんだ。
「僕の夢は宇宙船を作ることだよ!」澪は言う。なかなかいいタイミングだ。
「自分で設計した宇宙船に乗って、宇宙を旅行するんだ!」
「澪の夢は友達を作ることでしょ?」
澪の友達代表として、ディスプレイを見ながら夏が言う。
「友達はもう見つかったよ。夏が僕の友達になってくれたでしょ?」澪は言う。なかなか嬉しいことを言ってくれる。すぐそばにいたら、澪のことをぎゅっと抱きしめてあげたいと夏は思う。
「それに夢はいっぱいあってもいいんだよって、遥が教えてくれたんだ」
夏はその意見に心の中で賛成する。遥もなかなかいいことを言う。
澪は(ちょっとだけ生意気だけど)とても素直でいい子だった。なぜ最初に澪を私に紹介してくれなかったのだろう? もちろん私を監視するため、というのが理由にはあるのだろうけど、澪を紹介したら私のことを監視できないということはないだろう。
ここは世界でも最先端の技術を集結した研究施設の一つなのだ。十五歳の少女(つまり私のことだ)一人を持て余すとは思えない。
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