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 遥はテーブルの上に置いてある棒付き飴を一つ、手にとってそれを口にくわえる。棒付き飴は透明な瓶の中に逆さまにして、十本くらいが用意されている。それは全部、同じ色と形をした飴玉だった。遥は飴玉を定期的に消費する。でも飴玉はいつまでたってもなくならない。きっとストックがたくさんあるのだろう。

 遥は口元が寂しいのか、よく飴を舐めたり、もしくは指をしゃぶったりする。そういう癖が遥にはある。そっちのほうがよっぽど子供っぽいと夏は思うが、本人にはその自覚がないらしい。


「澪はどう? 夢を見たりするの?」夏が澪に質問する。

「夢をみるってどういうこと? 夢って見たり、聞いたりすることができるの?」澪は言う。

 なるほど。澪は夢という概念を自己実現の表現だと解釈しているのか。人の思い描く空想としての夢を澪ははっきりとは理解していない。つまり認識していないということは存在していない、ということでいいのかな?

「できるよ。それだけじゃなくって、食品のように食べることだってできるし、草花のように大切に育てることもできる」遥が澪の質問に答える。

「すごい! どうやったらそんなことができるの!? 全然わかんないよ!」澪が嬉しそうに、ちょっと興奮気味で言う。

 確かにどうやったらそんなことができるのか、それは夏にもわからなかった。遥は澪を喜ばせるために、冗談で今の言葉を言ったのだろうか? もしそうではなくて本当にその答えを遥が持っているのなら、私もその答えを聞いてみたいと夏は思った。

 

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