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木戸照子といい、遥は自分の作品に名前をつけることが好きなのだろうか? それとも本物の命だと定義しているのか?
……木戸照子。木戸遥。木戸澪。遥はなぜ自分の実験体に固有名詞をつけるのだろうか? それは所有のため? それとも単にそういう癖が遥にはあるのだろうか? ものに名前をつける癖。命に名前をつける癖。遥の癖は、いろんなものをよく拾う癖だけだと思っていたけど、そういう癖を私に隠して持っていたのかもしれない。
少なくとも木戸という苗字をつけるのは所有のためだろう。遥は照子と澪を所有し、また遥も照子と澪に所有されている。なにかに名前をつけて所有すると、逆に自分がその名前をつけたなにかに所有されてしまう恐れがある。だから名前はなるべくならどんなものにもつけないほうがいい。本当は自分自身の名前だって、ないほうがいいくらいだ。それでも遥は名前を与えた。それはつまり家族という関係を求めた? その考えは思考が飛躍しているかな?
夏は自分が飼っていた子犬型のロボットペットに名前をつけなかった。ただ、わんちゃんといつも呼んでいた。私もわんちゃんに名前をつけてあげればよかった。夏はそのことを後悔した。そうすることで、命は本物になる気がした。
「よろしく夏」澪はパソコンのモニタの中から大きなディスプレイの場面の中に戻ってくる。白いクジラの映像は笑顔だ。
「よろしく澪」それはアバターのようなものだろうか? なぜクジラなんだろう? 人間の姿ではだめなのか? でも照子は人の形をしている。人工生命は動物を作ることだってできる。人を作ることを目的としていたから、照子は人の形をしているんだ。
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